「純文学を読め」と僕は彼女に言われた。
僕が人生で初めて読んだラノベのヒロインだった。
優しくて、賢くって。とても綺麗で。
20歳超えてオタクなんて信じられない。二次元に幻想を抱かれても困る。
汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。
ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。
そうか。幻想は求めてはいけないんだ。愛情なんて求めてはいけないんだ。
(中略)
彼女が楽しみをくれなくなった。
ベタな展開にも飽きてきたので、僕はラノベとさようならをすることにした。
捨てないで下さい、嫌いにならないで下さい、愛して下さい、読んで下さい、続刊が出ないんです。
どうか、どうか。
彼女はそう言った。うーん、そうなのか。
僕は言った。
あのね、僕に幻想や愛情を抱かれても困るんだよね。
続刊が出ない?簡単なことだよね。
「純文学を書け」
のちの桜庭一樹である。