■元MP3サイト運営者の思い出話

僕はかつて、アングラ全盛期の1990年代の後半、MP3サイトを運営していた。

長くてオチもない思い出話につきあって欲しい。

当時を知っている人間がこれを読んで懐かしんでくれたらなと思う。

なぜそのようなことをしていたかといえば、神扱いされたかった、それだけである。

理解力のよかった僕は、それが違法行為だということをはっきりと認識していた。

しかし、当時高校生だった僕にしてみれば、神の称号は法に触れるというリスクにも代え難いものだったのである。

今にして思えば、みんなよくもまあ「24時間以内に削除するか購入すれば適法」だとか無茶苦茶な論理を展開していたなあと思う。

そんなバカな話はあるか、と思った僕はそのようなエクスキューズなぞ入れず、ひたすらアップロードしまくっていた。

まじめにアップロードを続けていたせいか、あるランキングサイトに登録してすぐに一位になってしまった。

それまで一位を堅持していたサイトは、名の知れたサイトで、自分も参考にしていたサイトだった。

そのサイトの掲示板で僕のことが叩かれていて、複雑な心境だった。

未だになにがよかったのかわからない。

ダウンロード用のツールをわかりやすく説明していた点が初心者を引きつけたのか、ちょうど売れてきていたアーティストに特化したことがよかったのか。

しかし公式サイトのスタイルを丸パクリした上、画像に直リンしていたのだから、無知とは恐ろしかった。

MP3サイト初めての逮捕者は僕でも可笑しくなかったはずだ。

再アップ作業は結構骨が折れた。

当時はISDNが最先端の技術だったから、数メガのMP3ファイルを落とすのに数時間はザラだった。

そのアップロード容量を確保するのだって必死だった。日本国内のフリーHPスペースでは飽きたらず、外国のサービスにも手を出した。

そして懐かしい分割ファイル。3だけ消されたりすると補完が無茶苦茶大変だった。

そしてそんなサイトでICQのUINを公開していると、いろいろな人からメッセージが来た。

感謝の意を表明してくれる人。日本大好きな中国人、韓国人、台湾人、香港の人。

英検3級レベルの英語で日本語を教えていたのも懐かしい思い出。

「タッキーは次のキムタクになれますか？」などという質問に辟易したりした。

もちろん、他のMP3サイトの管理人なんかもちょっとしたつきあいがあった。

見せしめに、逮捕された人が出てくると、僕の周りでは、ほとんどのサイトが閉鎖に追い込まれた。というか閉鎖した。

そういうリスクがあるのを承知でやっていたのではないのかよ、と強がってはいたが、僕もそれ以降、再アップすることは避けた。

そしてすべてのファイルが削除されると、僕はサイトの方針を転換した。しかし長くは続かなかった。

受験勉強に追われた。大学に入ってしまうともっと楽しいことがあった。

今でも当時のサイトは、あのときのまま放置されている。

当時使っていたIDとpassではFTPがつながらないので、消すことも直すことも出来ない。

あのレンタルサーバシステムが破綻しない限り、僕の青春の１ページは残り続けるだろう。

僕が稼いだアクセスは約15万アクセスだった。

今ではなんということもない数字だが、当時にしてみれば、それは金字塔だった。

「HP（ブログ）とか作らないの？」とよく言われるが、もう作る気はしないよ。

先日調べたところ、もう時効が完成しているらしい。

民事では20年の除斥期間があるので、まだ損害賠償を求められる余地もあるが、立証は難しいのではないかと思う。

※追記

＞お世話になったことがあるというブクマコメの方

ひらがなだけのタイトルのサイトでしたら、ビンゴです。お久しぶりです。

Permalink | 記事への反応(2) | 19:46

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