暗い夜道を、駐車場の入口にある外灯を頼りに歩いていく。
この辺りは夜になると、本当に人気がなくなる。たぶん、私の車がポツンと一台あるだけだろう。
そう思いつつ外灯を過ぎ、駐車場に入る。
案の定、今日止めた、一番奥の角に私を待つ車の姿があった。
かろうじて背後の外灯に照らされて、うっすらと浮かび上がっている。
と、その頭上がぼーっとかすかに白い。
そうか、もうそんな季節か。
駐車場の角に止まっている私の車の、さらに向うに立つ1本の木。そして、そこから車の真上まで伸びる枝。
車の横に立ち、しばしそれを見上げる私。
見上げたその枝は、すっかり大きくなったツボミが、いち早く開き始めている。
ちょうど真上で開いているその桜色の花は、まるで私の帰りを待つ車を労うかのようだった。