去年の秋、沖縄にひとりで行った。
死ぬか、と思って、車を飛ばして北の断崖に向かった。
はるか下に砕け散っている波の白い花をじっと眺めていたら、
なんだか気が済んだので宿に戻った。
誰も引き止めなかったことに満足したのだ。
吉松に流れる、あたたかい河にかかる橋の上でひとり踊った。
息を止めて、ほれ、いち・にい・さん、
滝川の凍れる路面の上でも踊った。
しい・ご・ろく、白銀のステージが輝いている。
稚内空港では同僚を見送るシスターが、なぜか私にも声をかけてくれた。
「行ってらっしゃい」
恋人ができた。
ひとを好きになる気持ちとは、
果てしない欠乏の具体化だと思い知らされる。
夢ですらそれを誤摩化すことはかなわず、
私はいやいやと現実を受け入れる準備を始める。