保健所では薬殺処分予定の元野良犬を希望する人に分け与える制度がある。もっとも、この制度で命が助かる幸運な犬は100匹に1匹くらいだ。
野良犬達にもいろいろな事情がある。たとえば飼い主の虐待から逃げ出した犬…
保健所で初めてメリーに出会った時、メリーは酷く衰弱していた。元飼い主の虐待はそれは凄まじかったらしい。オレと暮らすようになってメリーは見違えるように元気になった。メリーという名は「メリーさんの羊」から取った。そう、メリーは羊のように白かった。
メリーの元飼い主は近所では有名だった。この街の有力者の息子で、一度キレ出すともう誰にも止められない。父親がもみ消さなかったら確実に塀の中だ。まるでマンガの設定だが、田舎ではまだまだあるんだよ、こういう話。
事件は起こった。こともあろうにメリーと散歩中に奴と出会ってしまった。
奴がメリーの頭を乱暴に撫でる。オレのことなどアウトオブ眼中。怯えて奴の手を振りほどこうと頭を激しく振るメリー。
突然奴がキレる。メリーの頭を鷲掴みにして狂ったように振り回す。何とか奴の手を振りほどいたメリーはオレの後ろに逃げる。
奴の蹴りをくらって吹っ飛ばされるオレ。自慢じゃないがオレは平和主義者だ。リアルなケンカなんかしたことがない。情けないが、この狂った男からメリーを守る力はオレにはない。オレはなす術もなく奴の蛮行を見守るだけだった。
やがてメリーは動かなくなった。道路に頭を叩きつけられ、脳ミソが飛び出ている。赤い血の海に横たわる、かわいそうな白いメリー。
奴も正気に返り、オレを一瞥すると一目散に逃げて行った。さすがに今回のメリーの件は親父殿でももみ消せないだろう。
オレも後ろ脚を引きずりながらその場から逃げ出す。薄情な犬だと思わないでくれ。薬殺処分に怯える日々はもう懲り懲りだ。
ミスリードする余地もないのに最後に犬主観って。 長く虐待受けてた犬が、飼い主変わったからといって人間を怖がらないはずもないし。 PTSDに対して認識が甘過ぎないか。 anond:2007022421...