2010-08-30

引きこもりの星

次の星には、引きこもりがいました。この星には、少ししかいなかったのですが、王子さまの気分はとても沈んでしまいました。

「ね、何してるの?」

王子さまは話しかけました。引きこもりは、パソコンの前に黙って座っていました。暗く、しんみりと口を開きました。

「ひきこもっているのさ」

「なんでひきこもってるの?」

王子さまはたずねました。

「忘れるためさ」

「何を忘れたいの?」

王子さまは、探りを入れました。さっきから、引きこもりがかわいそうな気がしていたのです。

「恥ずかしいことを、忘れたいのさ」

引きこもりは、頭をたれながら、悲しそうに打ち明けました。

「恥ずかしいことって、何なの?」

王子さまは、問いただしました。この人を助けてあげたいと思ったからです。

「引きこもっているのが恥ずかしいのさ」

それだけ言うと、引きこもりの話は終わりました。結局、もとのだんまりに戻ってしまいました。王子さまは、とまどったまま立ち去りました。《大人たちって、やっぱり、とてもとてもヘンだなあ》と、胸のうちで言いながら、旅を続けるのでした。

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