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2024-05-07

ブコメ読んでて心情が入ってない短歌を探してたら楽しすぎた件

https://anond.hatelabo.jp/20240506061423

ブコメを読みながら「心情が〜」「我を表現するものが〜」みたいなコメントが気になって

「そんなに心情入れたがるものか?」と思って

心情が無い(?)短歌を探していた






四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら

/俵万智




まず心情で思い浮かんだ一首がこれだった

歌集「風のてのひら」の中に収めらたタイトルにもなっている歌。確かにブコメにあった通り、我を表現してはいるが、心情はどこにあるのだろう

この歌に「私はこう思いました」とか「こうだなぁ」とかは一切無いわけで作者にとって四万十を見た光景を切り取ったそれだけの歌である

だがらずっと私はこの歌には心情は無い!

と信じていたのだが俵万智本人は後書きでこう

語る

川面をなでてゆく風の手のひらは、目には見えないものですが、心には見えるものです。そして心に見えたものが、その時はじめて、歌になってゆくのではないでしょうか」

なんてこった「川面をなでる風の手のひら」自体が心情そのものだったのである

これでまずは一敗




バスタブに座って九九を覚えてる遠くにデルタブルースきこえる

/永井

日本の中でたのしく暮らすより

これは流石に心情は無いでしょう。多分

だけれども現代短歌、というかライトヴァースを

知らない人からしたら「こんなの短歌じゃない!」となるかもしれないかレギュレーション違反






ペーパーフィルター世界の始まりを目守る神々の春のゆうぐれ

/穂村弘

もはや「??」としかならない一首

シンジゲートより抜粋したが、穂村弘ワールドに置いては日常的によくあること。

私はあんまり頭が良くないので心情がどこにあるかとかこの歌は分からないけれど、頭がいい人なら分かるのかな



風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしシーツをかける

/笹井宏之

もう心情とか探してる内にどうでも良くなって

ただ好きだなと思った一首。

この人の歌は本当に変わった歌が多くて

例えば

「みんなさかな、みんな責任感、みんな再結成されたバンドドラム

この歌には「みんな」がいて「私」がいない

穂村弘

だが、《私》のエネルギーで照らし出せる世界がある一方で、逆に隠されてしま世界があるのではないか。笹井作品の優しさと透明感に触れて、そんなことをふと思う。とある

そうなって来るとますます短歌俳句ってどう

違うの?となってくるわけで



そんな時、歌人井辻朱美」がパン屋パンセにてこんな事を語っていたのを思い出した

休日のしずかな浮き雲のピザがいちまい配達される

詩歌とはこんなふうにひとつの窓、フレームを作るところから始まる。雑多な混沌を片寄せて、まず何もない空間をこしらえる。きれいになった場所にモノを置く。そうして初めて、そのモノはちゃんとモノとして見え、意味クリアに発信する。」と

まり私がひとつ俳句短歌の違いとして言いたいのはフレームの大きさの違いであ

俳句17音のフレームにどこか季節があって

短歌31音のフレーム自分が反射してる事もあるし季節が見える事もある。そのフレームの中をどうにか素敵にしたいと奮闘する

それが俳句 短歌なのではと

必死フレームに収めようとすればするほど、フレームは歪んでしまうし、収めなければフレームある意味が無くなる。だからむずかしい

でも楽しいのだ、よく分かってないけれど



最後ちょっとだけ不思議な歌を上げておく

死刑囚はこぼれてゆくトラックタイヤにつきてゐ花粉見ゆ

/寺山修司





おわり

 
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