第一印象の悪さが尾を引いた。「おとうさん」が家族内で一癖ある人に見えて、それ以降感情移入しづらかった。ダメな亭主にみえた。後書きでは著者がフォローを入れてイメージが修正されるわけだが、作品中での彼の真面目さ・不器用さの描写では最初の印象が払拭されなかった。
それから、「おとうさん」が僕と似たような性格におもえて、感情移入するのが躊躇われた。これは自分が歩む道なのかと恐れた。
肝心のハッピーのことは相対的に印象が薄くなってしまったが、ハッピーは愛らしかった。でも僕自身、犬をちゃんと世話して愛してはやれなかった過去の罪悪感があり、複雑だった。飼い主失格か。
1人と1匹は幸せだったかもしれない。でも、「おとうさん」は家族と心中した形なんじゃないかな。愛犬という家族と。犬だけでも生かす道があったかも。いや本人も、もっと違うしかたで生きのびたり、あるいは死んだりもできただろう。「おとうさん」はきっと覚悟決めていたんだろうけれど。