2009-12-20

かつてその声を聞くだけで満足し、手を握れば安心し、心を満たしていた人にすれ違った。彼の故郷はここだからそういうこともあるのかもしれない。懐かしさは感じなかった。いや、何も思わなかった。ただあのひとがいたなと思っただけだった。髪の毛が伸び、体型は相変わらずで、去年と同じマフラーをして。あまり変わっていなかった。不健康そうではなかった。疲れている風でもなかった。元気一杯というわけでも幸せがあふれ出しているというわけでもなかったけれども。声をかける暇がなかったからそのまま通り過ぎてしまった。別れる直前はあんなに泣いて憎んで死んでしまうのではないかというほどの虚無感に襲われたのに今となってはもう。

そういう自分が悲しい。当たり前のように忘れていくのが悲しい。悲しみは確かにまだあるのだけれども、もうそれは記憶を懐かしんでいるだけであって、実態とは結びついていないのだな、と思った。さようなら。

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