小学生の頃の話だ。
当時、何人目かの日本人宇宙飛行士が宇宙に飛び立つと言うことで、放課後のクラスでもその話題があがった。
なんとなく、ワクワクとした雰囲気の中で、「いつか宇宙に行ってやる」などと言うクラスメートもいた。僕も、口には出さなかったが密かにそのような事を心の中に思っていた。
そんな中Dは、教室の黒板にグルリと大きな丸を描いた。
(Dはフリーハンドで円を書くのがクラスで一番うまかった。手首を使わず肩で書くのがコツらしい)
そして、指2本分ほどの隙間を空けて点を打つと
「宇宙飛行士なんていうけど、スペースシャトルなんて大体こんなもんの高さしか飛ばないよ」
と言い放った。
Dが言ったんだったら多分それは正しいのだろう。僕はちょっとツマンナイ気持ちになった。
僕が今、宇宙飛行士を目指していない最大の理由はDにあると思う。
その後で、地球の周囲が40000キロだということや、月までの距離が地球の直径の30倍ということや、高度100kmから宇宙というようなことを聞いた。
その日の夜、100kmという距離が実感できない僕は夕食を食べながら両親に聞いてみた。
僕 「100キロってどれくらい?」
父 「距離のこと?だったら、今度引っ越す家までが大体それくらいだ」
母 「あら?もっとあるでしょう?」
父 「いや、直線距離なら大体そんなもんだよ」
僕にとって宇宙までの距離というのはちょっとツマンナくて、ちょっと寂しい距離だ。
日本最高峰富士山。東京から100km。標高3.8km。 世界最高峰エベレスト、最近はチョモランマか。東京から5千km。その高さは8.8km。 重力は恐ろしい。