母さん、僕のあの未来、どうしたんでしょうねえ?
ええ、一年前、ちょうど二十一世紀へ入ったところで
谷底へ突き落とされたあの未来ですよ
母さん、あれは悪くない未来でしたよ
僕はあのときずいぶんくやしかった
だけど、逆風が吹いていたもんだから
母さん、あのとき、向こうから年老いた炭鉱堀が来ましたっけね
顔にひょっとこの面をした
そして拾おうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね
けれど、とうとう駄目だった
なにしろ深い谷で、それに鳩合の群れが
谷を覆うぐらい増長していたんですもの
母さん、ほんとにあの未来どうなったでしょう?
そのとき傍らに咲いていた希望と再生の花は
もうとうに枯れちゃったでしょうね、そして
今頃は、バラ色の未来を明日に夢見て
あの空の下で毎晩人々が希望に満ち溢れてたかも知れませんよ
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは
あの谷間に、静かに雪がつもっているでしょう
昔、つやつや光った、あの日本国の未来と
その裏に僕が書いたJAPANという文字を
埋めるように、静かに、寂しく