2009-08-21

高速道路無料化についての覚え書き

高速道路無料化についての覚え書き

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090816

http://www11.ocn.ne.jp/~ques/diary/diary.html [2009.8.20](修正後)

一時期民間で流行った職能給という制度は、職能が上がらなければ賃金も上がらないという制度で、利益を上げない仕事は、幾らやっても賃金の上昇には繋がらないという結果を招いた。現場の技能での昇給は頭打ちになり、経営職だけが青天井の職能給を手に入れられるという制度となり、現場軽視を招いた。職能を持つ現場の人々は、自分達の能力が正当に評価され、宣伝やマーケティングといった利益に貢献しない後方部門との格差が更正されると期待したが、その期待は、真っ先に裏切られたのである。

現在では、職能給という制度は成果給という制度に変わっているが、本質は変わっていない。職能給では職能を認定する人が、一番高い職能を持つとされ、管理職の高給だけが正当化された。それに対し、成果給は、成果が評価の対象であり、成果を認定する人の能力とは関係ないとされたが、実際には、管理職が成果に対する報奨の大部分を取っていき、現場には雀の涙という結果にしかならなかった。現場で働く人々には、都市近郊の工場を潰して土地を売って利益を上げる時に、リストラの対象となるか、地方の工業団地や海外工場の管理職になるかという選択肢が与えられたが、地方の工業団地でも海外の工場でも、派遣や請け負いの労働者だけが部下となり、工場の現場で伝わってきた徒弟制度に近い技能の継承は断ち切られている。

都市近郊の工場を廃止し、地方に産業を殖産するという狙いは理解できるが、工場は単独で存在しているわけではなく、労働力や原料や燃料や部品といった周辺との関係の中に存在しているという現実を弁えずに、強行してしまった。物流に対する配慮があればよかったのだが、高速道路は有料のままであった。おかげで、工場は独立的な存在にならなければならず、大企業だけが工場を存続できるという状況に向かい、中小零細工場は取引先の遠隔地への移動に伴う取り引きの消滅という結果だけが残った。

さらに、地方自治体は、工場の誘致はしても、労働者の誘致はしなかった。都市近郊の工場は地上げ屋が裏で糸を引く住民運動で操業の維持が難しいし、地方の工業団地に行っても人手不足になるだけという状況ゆえに、企業は、人件費の安い海外への工場移転を模索するようになったのである。企業が海外に流出するという現状に危機感を抱くのは正しいが、それを、法人税の税率が高い事や、労働力の確保が出来ない事にあるとし、法人税の引き下げや派遣労働の単純労働者への適用という手段を取ったのが更なる間違いであった。

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