あー、なんでだろう。
なんでこんなに辛いんだろう。
好きな人がいて、たぶん心から好きな人がいて、ぼくはその人といつも一緒にいたいと思っている。
そうすることで、自分の人生がうまくいくと思ってる。たぶん実際うまくいく。ぼくに欠けたものを彼女は持ってる。
ぼくが欲して止まないものを、ぼくが世界一美しいと思うものを、彼女は持っているからだ。
でも彼女にとってのぼくはそうではない。
ぼくはそれほど必要とされていない。
ぼくに求めるものは、きっと別の人でもまにあうものだ。
ぼくじゃなくてもいい。
そんな自分を見ているのがつらいから、ぼくはここからダッシュで逃げ出す。そう決めた。
暑苦しくったって重くったって、そう思えないような関係に価値を見いだせない。
ぼくにその価値はなかった。だからもういい。
そう決めてしまった以上、もう彼女のことなんて考えるのをやめればいいんだ。彼女には彼女の人生があって、ぼくには関係がない。
まあ、もともと関係なかったんだし。
でもなんでこんなにつらいのか。
いまも彼女がどこにいて誰といるのかとかを考えると、ほんとうにつらい。
なんでそこにいるのはぼくじゃないんだろう。
もう関係ない人にしたいのに、連絡がきたらほいほいあいにいってしまう。
情けない気持ちになるだけなのに。
実力といってしまえばそれまでだ。
彼女が求めるような人間に、なれるだけのことをして来なかった。ただそれだけ。もう手遅れ。
でも、やるだけのことはやった。やったとおもう。
手持ちのカードは使い切ったよ。
その中に彼女が求めるものがほとんどなかったってだけだ。
そのなかには、彼女以外の人を幸福にして上げられたかもしれないものだってあったんだ。
ほんとうはその人に使ってあげるべきだったんだ。ぼくはその人をも裏切ってしまった。
最低だ。
離れて忘れることはもう決めたことだ。
それは間違ったことではないのか?逃げてることにならないか?
逃げる?なにから?
彼女から?
むしろぼくから逃げているのが彼女なんじゃないの?
多少ぼくを必要としているかもしれないけど、なにを?彼女は悪者になりたくないだけだ。
違うな。
彼女はもともとぼくを友達としてあつかってくれてたんだ。
勝手に踏み込んだのはぼくの方か。
それがうまくいかないからって、全部無しにするのは都合のいいことか。
逃げずに留まる?友達として?
ああそうか。だから嫌なんだ。ぼく自身が彼女のことを友達として見るのが嫌なんだ。
そうおもいつづけるのが、ぼくに残された数少ない望みなんだ。
忘れたいけど、忘れたくない。
彼女のことを好きなんだって、想っただけであんなに幸せな気持ちになれたことを忘れたくない。
彼女と会っただけで、満たされて地に足がつかないくらいうれしかったことを忘れたりしたくないんだよ。
だってほんとうに好きだったんだもん。