長く空き家だった隣の家に人が入るということを知ったのは、その前日に祖母から聞かされたからだ。 子供だった私は近所付き合いに興味などなかったが、引越してくるのがクリスチャンだということに興奮してその日は眠れなかった。
で、次の日。 隣でガタゴトという作業の音で目覚めた私は早速その様子を見に行った。
引越し作業を指揮していたのは若い外国人の男性で、数人ばかりの引越し業者がテキパキと作業をこなしていた。 田舎町のことであったから、白人が流暢な日本語で話しているのを見るのは初めてのことで、少し驚いたのを覚えている。
父に尋ねると、その外国人男性が隣に入居することになったジョンという名のアメリカ人だと答えが返ってきた。 そこで疑問の思った私は更に尋ねた。
「クリスちゃんはいつ来るの?」
祖母が言っていたクリスちゃん。 可愛い女の子が来ると思っていたのに、なかなか姿を見せないクリスちゃんのことを尋ねたのは子供としては当然のとだろう。
すると、父は豪快に笑った。 何か言おうとするのだが、笑いが抑えきれずに再び吹き出してしまうということを何度も繰替えし、「大人になればわかるよ」とだけ言った。
だが、大人になった今でも、わからない。 クリスちゃんとは何者だったのか?
わかる人がいたら教えて欲しい。
ちなみに、それを探ろうと隣に近づく内にジョンとは仲良くなり、今では親友である。
今ではクリスちゃんは総理大臣をやっているそうですよ。 キリシタンと言っていたらどうなっていたんだろう。キリシたん? キシリたん? キシリア?