まだ「モンスターxx」なんて呼称がなかった頃、精神病院のお偉いさんと仕事をする機会があった。
前任と客先へ行く道すがら
「気を抜くなよ。俺は通院患者から暴力を振るわれた事もあるし、俺の先輩のxxさんは患者のxxの始末までやらされた。
客の客は客以上に大切にしなきゃいけないんだからな」
ぇぇぇぇ!となる俺に、本当の話だと続ける前任者。
「まあ、気を抜かなけりゃ大丈夫だろうが…。
人のいい顔なんてしてたら、シャレにならない目に合うからな。
それから施設長のA。あれにも気をつけろ。
正論でもなんでも、口応えするな。全部はい、って言え」
俺が「偉い方だからyesしか受け付けないんですかねー」と言うと
「違う。あれは頭がイカレてる。
まともな話が通用しない。
周りが病気だと、ああなるんだ。
はいはい言っときゃ仕事取れるから、安心しろ。分かっちゃいないから」
その後、Aさんと引継ぎのために顔を合わせた。
「俺のいう事は何でも聞いておけばいいんだ。こっちは客なんだからな」
「金はビタ一文出さんぞ。分かってるな。
誰のおかげで顔を出せていると思うんだ」
とはじめるAさん。
脅すだけ脅しておけ、という態度。
言ったとおり「はい!はい!」とひたすら腰の低い前任者。
異様な雰囲気で顔合わせは終った。
帰りの車の中、先輩はAさんを罵り続けた。
「おかしいだろ?
おかしな奴だから仕方がないんだよ。
ああいうXXX(今だと差別用語)は…」
引継ぎをして半年後。
俺はAさんと衝突した。
100%相手の要望でシステム改修をするのにまた「金はビタ一文」が発動したからだ。
無論代替策は出した。
だが、システム改修以外嫌だ。でも金は出さん、という状況。
再度見積もりと、詳細な費用の裏づけを持っていったが、門前払い同然だった。
頭を抱えていると、前任が「だから言ったじゃないか。はいはいって言ってやっとけよ」と後押し。
もう知ラネ、と思いながら、タダ働き覚悟で改修に入った。
納品直前になって、いきなり注文書が届いた。
金額は俺が言った通りの値段だった。
ぽかーんとしながら納品して、Aさんに「ありがとうございました」と言ったら、
見たこともない不気味な笑顔を浮かべられた。
「アンタん所のB(前任)、俺の事馬鹿にしてるだろ
なんで俺が何時もこういう言い方するか分かるか。
Bが何でもはいはいって調子良い事言って、まともな話をしないからだよ。
俺は、アンタやBが何言っても関係ない。
俺がやりたいって言ったらやるだけだ。
ここがどういう場所か分かってるだろ。
俺はここじゃ、何でもできるんだからな。」
数年後、突然Aさんは解雇された。