2008-04-11

「火」とは戦うな。ただ遠ざかればよい。

無知な愚か者は無視しなさい」

ジャイナにはこのような教えがあります。これは教えというより、智恵を含んだ教訓と言ってもいいかもしれません。

このような考えは、無益な争いを避けるために、ときとして必要です。

平和と友好を旨とするジャイナ教徒にとっては、暴力や怒り、憎しみなどの感情を抱かないためにも重要な教えと言えます。

熱い火から身を守るには、火と戦うことでなく、火から遠ざかればよいのです。

ですから、憎しみに満ちた者、過激な者、状況を間違って把握している者、邪悪な者たちから、身を守るには距離を置くことです。

愚か者にも「事の道理」をわからせてやろうと思う人もいるかもしれません。しかし、思慮分別のある人なら、愚か者にそのようなことをするよりは、無視してしまったほうがよい場面があることをおわかりになっていただけるでしょう。

人間というものは、お互いが自分を主張しはじめると、どうしても理性より感情が勝ってしまうものです。

ですから、そのようなときは決して反撃してはいけません。

過激な興奮者には、冷たく背を向けて黙殺すればよいのです。

堕落した考え方の者でも彼なりの言い分があります。

悪人には悪人の主張があるのです。

彼らの犠牲にならないためには、相手にしないことが最良の方法なのです。

カースト制度を否定しながらも、ジャイナ教徒が今日まで2500年以上の長きにわたって、インドで生き残ることができたのは、この「距離を置く」という智恵があったことも大きな理由の一つです。

                  上林龍永「ジャイナの教え」より

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