「あっ。見ろよあいつ、みかん持ってるぜ」
「本当だ。みかん持ってる」
「あの人みかん持ってるわ」
ワーッ
みかん持ってる人「えっ?えっ?!何?何なんだ!?」
「みかんよこせよ」
「よこしなさいよ」
みかん持ってる人「は!?なんで?!やだよ」
「うるさい。さっさとよこせ」
「よこせ」
「よこせ」
みかん持ってる人「意味わからない!なんで!?俺のだもん!みかん俺のだよ!?」
「そうだ」
「そうだよ」
「そんなの、とって食べてくれっていってるようなもんだ」
「そうだ」
「そうよ」
みかん持ってる人「はぁああああ?!意味わかんねーし!!しらねーしそんなん!!とにかく俺のだから!!人のみかん勝手にとったら窃盗犯だぞ!!」
「しるか。よこせ!」
「みかんよこせ!」
「そんなにみかんが大事なら、家の金庫にいれて保管して、家でこっそり食べればいいんだ!事実みんなそうしてる。そうしてないお前は、みかんをそうやって持ち歩いてるお前は、みんなからみかんを奪い取られても仕方ないんだ」
「そうだ」
「そうよね」
「そうよそうよ」
「普通は家で食べるよね」
「そうだよね」
みかん持ってる人「はぁ!?何それ!俺がどこでみかんを食べようが、自由だろ!?俺は公園で食べるつもりだっただけだ!」
「バカだね」
「そんなことしたらみんなにみかんを奪い取られるに決まってるのに」
「バカだ」
「バカだ」
「自業自得よ」
みかん持ってる人「この町にはみかんを外で食べる自由はないっていうのか」
「別に食べてもいいわよ。ただ、そうしたらみかんを人にとられても仕方が無いってだけよ」
「そうだ」
「そうさ」
みかん持ってる人「それは自由って言わないだろ!みかんを外で食べるだけでみかんをとられても仕方が無いって、それじゃみかんを外で食べる自由は無いに等しいよ!」
「しらないよそんなこと」
「しらないよ」
「俺たちはみかんが外にあるなら奪い取る。それだけだ」
「それだけよ」
「そしてそれが普通のことであって、そうされるのが嫌なら家でこっそり食べるしかない。それだけだ」
「それだけさ」
みかん持ってる人「おまえら、おまえら、おかしいよ。自分でみかん買って食えばいいだろ……どうして人のみかんを奪うんだ。犯罪だ。これは犯罪だ」
「みかんが目の前にあって我慢できるわけないじゃない」
「そうだ」
「その通りだ」
「そんなみかんを持って外を歩く、お前が悪いんだ」
「そうさ」
「お前が悪いんだ」
みかん持ってる人「違う!俺は悪くない。俺は悪くない。俺はみかんを外で食べる。みかんを外で取られずに食べるんだ。その権利が俺にはあるはずだ」
「うるさいわね。さっさとみかんとっちゃいましょ」
「そうだな」
「そうしよう」
みかん持ってる人「あっ、警察官だ!助けて!俺のみかん、この人たちが取ろうとするんです」
警察官「君達、ちょっと落ち着きなさい」
「ちぇっ」
「警察か」
「ふん」
みかん持ってる人「あー助かった。ありがとうございます。全くキチガイどもに囲まれていい迷惑ですよ」
警察官「何言ってるんだ。君も悪いんだよ。そんな美味しそうなみかんを外で大手振って持ち歩くから。だからああやってみんなにみかんを取られそうになるんだ。今回は助けてあげたけど、次も同じようなことをしてたら知らないからな」
みかん持ってる人「そ、そんな……嘘だろ?」
警察官「やれやれ。みかんを外で食べるなんて。なんて常識外れな人間だろう、全く」
みかん持ってる人「おかしいよ……おかしいよこの町。怖いよ。うわーっ」