暑すぎず、寒すぎず。
春の帳はやさしくて、薄手の毛布一枚からだにくるませて。
暗い中、キャンプで使うようなライトを手元に置いて、眠たくなるまでいっぱい読書をしたものだった。
あれも読みたい、これも読みたい。
物語の世界は永遠のように広くて、広大で。
眠れなくても不安はなくて、眠たくらないことが幸福で。
活字の海に漂って、活字の世界と現実の世界の境界線があいまいになるような。
そんな浮遊感をたくさんたくさん感じて生きてきた。
でも大人になって、仕事をするようになって、眠ることが必要になった。
眠らなければちゃんと働けない。眠らなければ仕事でミスをしてしまう。
そんな観念に囚われてから、わたしは眠れないことがこわくなった。
あれほど仲が良かった夜は、今ではずっと疎遠になってしまった。
長い長い夜は、今はただの他人に過ぎないのだ。
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