「生きる」を含む日記 RSS

はてなキーワード: 生きるとは

2008-03-10

僕らが未来のためにできること

年金問題所得格差高齢出産、地方格差

うんちゃらかんちゃら

もう、うんざりだ。

こんな暗い日本の問題をなんで解決できないのか


これらは、資産の流動性の問題が原因なんだ

必要な人に金がなくて、本来はそれほど

必要じゃない人に金が溜まっていたり、

使って欲しい用途で使えなくて、

使って欲しくない用途にばかり使って

しまっているんだ、金を

それらを解決する

そんな方法があるのだろうか?

あるんだ

簡単な事なんだよ。それはね

平均寿命を60歳にすることだ


それで、すべてがうまく行く

方法だってあきれるくらい単純だ

僕たちが50くらいになったら、

60歳以上を対象にした診療報酬をなくしてしまえばいい

つまり、老人保健も、健康保険でも、

保険が利かないということだ

病院に言っても自費治療か、独自で加入した医療保険でないと

病気が治せなくしてしまうということだ

もちろん問題もあるだろうが、それが一番効率的な方法だ

そもそも、長生きすることがなぜ幸せと言えるの?

テレビでやっていることが真実なんだって思う

天気で鈍感な日本人だって

そろそろ気がついていいころだ

もうこのシステムでは高齢化社会こそが

日本がもう浮び上がれない最大の原因になってしまっている事を

早とちりしないで欲しい

今を生きる老人たちに死ねといいたいわけじゃない

老人は大事にすべきだし、尊敬をすべき存在

でもね、今まだ老人ではない世代は、気づくべきなんだ

老人になる前に死んだほうが、自分も、周りもずっと

幸せになれるって事を

リタイア人生を謳歌したいなら、45か50くらいまでに

資産を貯めて、そこから十分に楽しめばいいんだよ



だから、60歳を超えて長生きしたければ、

若いときから国民年金基金や個人年金に加入したり、

思いっきり稼いで資産を蓄えたりして

自分で長生きできる準備をした人ものだけが長生きすればいい。

生きれるのに見殺しにするのか?

馬鹿を言え

現在だって、体中パイプまみれになっても、

寿命だけは100歳まで生きれるような

システムだって可能だろうさ

本当にそれが幸せか?

際限なんかないんだ

人間はいつか死ぬんだよ

今日元気でも、とても幸せ笑顔

バイバイって手を振った相手が

死んじゃうかもしれないんだよ

でも、それが人生だろう?

諸行無常 是性滅法

僕らが死ななきゃならないのは、

新しい命にバトンを渡すためだ



長生きする権利なんてないんだ

幸せになろうとする権利はあるけど

幸せになる権利なんてないんだ

だからね、酒もタバコもやめないし、

メタボリックだと言われても

ダイエットなんかしない

もちろん、60までに死ぬためだ

29年後に、僕は死ぬわけだが、

横で寝ている君と

嫁と

そして、自分が

幸せであるように、努力をしていきたい

その時まで



君の1歳誕生日で浮かれて酔っ払い過ぎた父より

娘へ 

2008-03-09

待ちたまえ

わっかんねぇので、俺はこれから微生物生きることにするよ。

そこんとこ、もうちょっと詳しく。

http://anond.hatelabo.jp/20080309212421

その、なんだ、プログラマとかIT関連を基準にされても、困る。

はてなの人気記事にあがるライフハックとか議論とかまぁ、ネタ記事とかさ、

大抵、IT業が基準になってんじゃン。

ちょっと前のマッチョ論争でもさ、結局はそういう界隈での話でしかないじゃん。

まーね、いいんだよ。別に。

その道でサバイブする方法説こうが、

IT企業経営を語ろうが、

Cだかジャワだかよくわからん抗争しようが。

はてなってのは何でかしらんがそういう場所だから。仕方ない。

でもさ、それをなんで、こうジェネラルな事柄、

経済とか政治とかと結びつけたがるかな。

二百歩譲って結びつけるのはよしとしても、

なんでIT業界から見た世界が、他の業種から見える世界と一緒だと思うかな。

あまつさえ、問題の解決方法が同じ思うかな。口出すかな。

わっかんねぇ。

わっかんねぇので、俺はこれから微生物生きることにするよ。

http://anond.hatelabo.jp/20080309175947

別に生きるモチベーションなんて持つ必要ないんじゃない?

あなたが生きようが死のうがどうでもいいよ。

あなたに生きていて欲しいと思ってくれる人に聞いてみたら?

別に惰性で生きることは悪くないよ。むしろ幸せだよ。なんせ惰性で生活できるだもん。生きようとして生きていけない人間も多いのに惰性で生きていけるなんて最高じゃないか。

ってか、大抵の事は面倒臭いもの。目の色変えて必死になる必要があるものなんて特に無いのがフツー。世の中の人のほとんどがそうやって生きてるんだよ。

惰性で生きていけるなんて人間の最高の幸せだよ。権力が欲しい、大金が欲しい、というようものも惰性で生きていけるからそうなりたいんだよ。あなたがすでに惰性で生きているのならそれはとてもうらやましい事だよ。

ひとりでは生きていけないのに・・・

生きていることが面倒くさい

とはいえ、死ぬことも面倒くさい

惰性で生きている。

夢・・・ってない

やりたいことも、やれることもない。

以前は、人とのコミュニケーション、つながりを

"幸せ"と感じていたが、今は感じない。

では、生きるモチベーションをどう持てばいいのか。

生きることが人生の第一義である。しかし、

人は生きるため、危険を避けるために恐怖する。

次に、恐怖することを恐怖する。

そしていつのまにか、生きることを忘れて、「死」に心の平安を求めるようになる。

しかし、理性が捉える「死」は、本能が避けようとしている「死」とは異なる概念であるのかもしれない。

理性が求める死とは、恐怖にまみれた自己との決別を指している。

肉体からの離脱を指す必要が無いのではないか。

だとすれば、どのような不安の中で生きていようとも、自らの肉体を殺すことなく、心に救いを与えることができるはずなのである。

ということで、お布施ください。

いちおくまんえんくらいあったら、なおいいです。

2008-03-08

http://anond.hatelabo.jp/20080308160127

"死ぬのが怖い"という話と"生きてるのが嫌だけど、死ねないって人はこの辺を越えられないのだろうか?"という話は別物。

死ぬのが怖い理由は anond:20080308034520 ということにしておこう。(未遂も怖いよね、死に損なって植物人間、再トライすらできない。)

生きてるのが嫌だけど死ねないのは"怖い"からだけじゃない。

迷惑かけたくないとか悲しむ人が(一応)居る(かもしれない)とか。

このテのパターンは更に要因が上乗せされるので動きづらそう。

楽に死ぬ薬があったら、の話。俺は多分すぐ使わなくて、思いつく限り人生でやりたかったことをできる限りやってから使う。と思う。

回らない寿司を食べるとか、サグラダファミリア見に行く、橋の上から電車に飛び乗る自動車の上をぽんぽん飛び回る、とか。

死ぬ、というのが一回しかできない上に不可逆だとしたら、生きる、を強く感じるようになるので執着沸くんだろうね。「完全自殺マニュアル」とかはそういうのを目的とした本だったかね。

余談ね。生死について考えがいくらかまとまると、多分死ぬのはそんな怖くなくなる。

死ぬのが怖いまま死ななくちゃいけないのはちょっと悲しい。

自殺したい、という人が居ても俺は止めなさそう。その人の人生かかってるんだから、自分の人生かけられるくらいじゃないと止められない。

生きてれば良いことがある、なんて無責任さしか感じない。

2008-03-07

ある倦怠期の話

20代後半OL結婚4年目。

いつしか夫は「キミの事は家族として見ているから」と私の事をセックスの対象として見なくなってしまった。その代わりにAVで抜いた後のティッシュが居間に捨てられて、夫の携帯には女友達との楽しいやりとりメールで埋まるようになった。

お母さんの作るご飯はもっとこういうものだった、お母さんの家事はもっとこうだった、そんな夫のリクエストに答えて良い妻になるため努力してきたつもりだった。

しかし、その過程で家で女性らしい風貌を維持する努力を怠ってしまった私の過失もあると思う。

私は仕事が好きなので、家の外で会社人として評価される事をとても大切に思っている。でも、夫にとってはきっと、会社から帰って来て会社愚痴を言う妻よりも、家でいつもニコニコ話を聞いてくれる妻の方が嬉しいんだなとも感じている。

夫の求めるお母さん的な愛を提供する女

飽きさせないセクシーな性的刺激を提供する女

会社人として独身にひけをとらない女

更に、夫の親類が期待する未来の孫の母親としての女

その全ての期待に対応できるだけのキャパシティが無かったのかもしれない。

私はセックスが好きで男性に興奮してもらえる自分に喜びを感じるタイプなので、何の興味も持ってもらえていない今の環境はとても悲しい。

世の女性は同じような状況にどうやって対応しているのだろう。夫の母親クローンとして生きる道を選ぶのだろうか。そして必死に、彼が性的に自分に飽きない努力をし続けるのだろうか。

女として自分の事が情けない…。

私はたぶん遠く無いうちに離婚を選ぶだろう。

疲れた。夫も疲れているだろうけど。

2008-03-04

http://anond.hatelabo.jp/20080304220218

別にもてなくても、仕事できたり、友達と楽しくすごせたりすれば生きる価値はある。

そういう生き方を非難しているのがマッチョモテ思想だろ。

非モテ責任転嫁するな。

http://anond.hatelabo.jp/20080304215445

そう思う自分こそが、モテないと生きている価値がないという世界観にどっぷりはまっていると理解すべき。

別にもてなくても、仕事できたり、友達と楽しくすごせたりすれば生きる価値はある。

http://anond.hatelabo.jp/20080304163733

人は其処にいると言うだけで生きるに足るよ。

希望がないと言っているが、希望って何だ。おそらく快楽と間違えているだろう。「貧乏=希望が無いこと」じゃないんだよ。「経済的成長がない=希望がない事」じゃないんだよ。

昔は本ばかり読んで頭でっかちになった若者に対して「書を捨て、町に出ろ」と呼びかけがあったものだ。今はネットばかりで頭でっかちになっているよな。LANケーブルを引っこ抜いて、読書に浸ってみるのもいいぞ。

http://anond.hatelabo.jp/20080304155626

俺は一応働いているのだが、あんまり未来があると思えなくて、やっぱり死にたい

何で死なないのかというと(表面上は)死ぬな、というような知人だったり親だったりが居るという程度の理由だ。

どうであれば生きるに足る理由だと思う?

金持ちだったら?趣味が充実していたら?交友関係が広かったら?

いずれもいまいちピンとこない。

■「最終弁当氏のブログに思う 」にちょっと一言

http://anond.hatelabo.jp/20080304045514

少し共感する。通奏低音は、人生の敗残者、人はみなそうなる、もう人生は終わった、とかってしょっちゅう言っててさ、一般に好まれる明るい希望、みたいなのからは、かけ離れてる。読んで爽快、なんてことは絶対ない。こんなの若いもんが好きとか言ってたら、そっちの方がおかしい。なんでそこでネガティブ入るかな、みたいなことを感じることは僕はよくある。

でもね、このブログですごいな、と思うのは、ダルフールの悲劇について、ずっと前からattention pleaseし続けていること。これは、偉いよ。

日本報道がとても薄いダルフールのことを啓蒙していたのは、ブロガーでは彼だけでしょ。今でこそ、北京オリンピックが近づいてて、徐々に日本語の記事も多くなっているのかもしれんけど、英語圏新聞雑誌では、かなり前から記事になってたし、国際社会アジェンダの中で、突き刺さった棘のように、それなりの存在感があった(と記憶している)。

この時代に生きるものとしての、人類としての責任というか、humanityというか、世界平和を若干なりとも真剣に願う者のみが持ちうるであろう態度を、僕は少し感じる。dankogai池田信夫氏からは、そーゆーのは感じられない。こういうのを「熱い」とは言わないのかな?

あと、この人はたぶん子供が好きだと思う。過去はどうだったか知らんけど、少なくとも今は。

「世の中を皮肉的に捉えるという。そういうとこあると思うんだよね。」ってのも、ちょっと理解が違う気がする。僕は、皮肉も冷笑も、このブログからは感じない。そんなの価値低い、つまらない、ってよくわかってるよ、この人。もっと謙虚だよ。

執筆子??をよく知らない様子。まだ若いのだろうか」みたいなのが結構あるけど、別にその執筆者を攻撃したいわけでも、批判したいわけでもないよ。自分の知識をひけらかしたいわけでもない。そういう自己満足の仕方はしてない。ただ理解を正してるだけでしょ。

「叩かれないようにしながら一定の位置を確保するという目的」というのも持ってないと思う。だって、彼は基本的に、自己主張しないし、記事の取り上げ方の戦略性みたいなのは、あんまりないよ。fareast blogはちょっと別かもだけど。

2008-03-02

http://anond.hatelabo.jp/20080302144938

法律破らなければ何やってもいいと思うよ

そこまで熟知してるんなら問題ないよ

いつ破るか分からないから平凡に生きるんだ

思考メモ

後輩たちと遊ぶべきか遊ばぬべきか。個人的にはちょいと後輩と遊ぶのは苦手。誰かと遊ぶという時点でけっこう拒絶しちゃうタイプなのに、ましてや後輩と遊ぶなんて心理的に辛いものがある。まず後輩と何を喋ればいいのだろうか。どんな話題を振ればいいのだろうか。目線はどこに合わせていればいいのだろうか。何をして遊ぶのだろうか。不安要素が盛りだくさんだ。できれば参加は自粛しておきたい。しかしせっかく後輩が遊ぼうと誘ってくれているのだから行くべきなのではないかとも思うし、なにしろもう会う機会もほとんどない。M(友人)が○○部OBの会みたいなのを作ろうといっているのだが、それが実現するかも分からないし、どちらかといえば計画倒れしそうだし、実際にそういうものができたとしても一つの同窓会として機能するかも分からない。後輩と接点を持てる部分がほぼない。今遊んでおかなければもう会うことすらもないかもしれない。いま後輩達と俺含む3年のつながりは切れ掛かっているのである。遊んでおくべきなのではないか。だがやはり不安は残る。××(遊ぶ予定の場所)で何をするかも分からないし、誰が来るのかも分からない。S(友人)は行くだろう。一人では行かないかもしれない。だが誰かもう一人参加するとなればほぼ行くことにするだろう。Mはどうだろう。どちらかといえば友人との戯れは好きそうだ。後輩達とのお遊びとなればどうだろう。行くだろうか。まあ行くだろう。同級生も後輩もあまり関係なく遊ぶだろう。上下のしがらみに関して言えばたいした束縛感を感じてはいないだろう。ゼロではないろうが。A(友人)はどうだろう。行くだろうか。微妙なところではある。基本的には行くだろう。彼もなかなか社交的な部類である。地元で培ったであろう社交性はおそらく後輩達との交流においても生きるだろう。おそらく参加だ。では俺は?正直、面倒ではある。後輩達とめちゃめちゃ仲がよかったわけではないし、話をするのもどちらかといわずとも苦手だ。遊びに関しても大勢より一人遊びのほうが得意な部類だ。それに××というのは巨大なゲーセンみたいなものではないのか?もちろん4,5人で遊べる施設や環境も整ってはいるだろう。だが主に筐体型の1、2人用ゲームメインではないか?となれば必然的に1対1のコミュニケーションをとらざるを得なくなるだろう。そのとき俺は円滑なコミュニケーションを行えるだろうか?非常に不安である。まとめるとこうである。後輩達と交流できる機会は今回を逃せばもうないだろう。だが俺は後輩と遊ぶのが非常に不安であり気が進まない。さて、行くべきか、行かざるべきか?いまの俺自身の心持ちでは「まあ行ってもいいけど、ちょっとなあ」である。世間体を気にしているいつもの自分であればおそらくしぶしぶではあるが行くだろう。実際楽しめるかどうかでいえば、・・・まぁ楽しかったな、くらいの感想にとどまりそうではある。俺の中での一番の問題点は「後輩の背が高く、俺の身長が低いゆえにコンプレックスを覚えてしまい遊びに集中できなくなる点」なのである。これがキモだ。もし俺が高身長青年の高ランクイケメンであったなら二つ返事で行くだろう。ようは俺の気持ちしだいなのである。

2008-03-01

死のうとしたけど無理だったぜ!!!!!!!!!

とりあえずしばらくは生きることにした。死ぬの怖ぇ。

何が怖いって生きることと対比できねーんだよ。

「死んだ方がマシ」とかああいう言葉ウソとは言わないけど軽々しく言えるもんじゃないね。

なんたって死んだら死ぬわけで死ぬんだぜ。

生きることと比べようがないんだよなんたって主体である俺そのものが存在しなくなるんだから。

マイナスプラスを比べることは出来てもマイナスと を比べることって出来ないんだよ。比べようがない。

人生そのものがなくなるわけで0ですらない。死ぬの怖ぇええ!!!

死んだAさんと生きるBさんとお墓の前でした話

http://anond.hatelabo.jp/20080226210253

Bさんと久しぶりに2人で出かけることにした。

1度目は学生時代、2度目はお葬式、3度目はある町の寺社仏閣めぐり、

今回はお墓参りである。

集合場所である駅から電車に乗った。

各停しか停まらない小さな駅から歩いて15分ほどの所にお寺がある。

いつも饒舌に喋っている僕はほとんど喋れない。

ときどきBさんが話を振ってくれるのだが、まともな会話が続かない。

自分でも緊張しているのが分かる。

入って左手に20基ほどの墓標が並ぶところにAさんのお墓がある。

彼女が死ぬまで嫌っていた父親の家の墓だ。

春になるとここは桜で埋め尽くされる。

ただ、お彼岸から2週間ほど。

周りの墓には陽気でやや疲れ気味のお花が飾られていたが、

彼女の眠る場所には何もなかった。あの家族。ここに来ていないのか。

バケツをとってくる」とBさんが離れた。

僕はAさんと1人で対面した。一年半ぶりのことだ。

目を閉じて無心で彼女の顔を思い出した。

そしてようやく言えた。「ゴメンね。一緒にいられなくて」

あの子は、いつも自分が他者にどう見られるのか。そればかり悩んでいた。

なぜ受け入れられないのか。なぜ他者とあわせられないのか。そのことに苦しんでいた。

僕は「他の人の気持ちも考えなくちゃ」を様々な表現で何度も説明した。

そこで彼女が最後に切り札として出したのが僕との結婚

ロリオタである僕に小学生並みの体を提供すること。それが交換条件だった。

もう他者との関係を"モノ"で釣るしかできななくなっていた。

ずーっと彼女を助けられなかった自分を責め、後悔し続けた。

でも、彼女を想っての悩みだったはずが、途中で変わってしまった。

この子と2人でいることを想像するのが怖かった。

他者への尊敬も思いもなく、ただ自分のことしか考えられなくなった。

誰かに依存しようとした。誰かに自分を救って欲しかった。

死を選択せねばならなかった彼女と全く同じことをしていた。

Bさんがバケツに水を入れて帰ってきた。

簡単にお墓を掃除をして、僕が線香を付けた。

そしてひたすら手を合わせ続けた。

いつか彼女と会話ができることを祈り続けた。

終わって立ち上がると、そこにはBさんがいた。

「どうです?」

「うん、なんとか」

「もう一年半も経つんですね」

今日は付き合ってくれてありがとう

「いえいえ、自分も来たいなあと思ってたんです」

「ずーっと、ここに来るのが怖かったんだ。

今日、そしてあのとき、Bさんがいなければ

僕はどうかなっていたかもしれない。本当にありがとう

初めて僕は他者に打ち明けることができた。

この間の心の変動を正直に告白した。

「私もそうですよ」とBさんも続けた。

彼女が抱える闇の一部分を僕に教えてくれた。

それから僕とBさんは、お墓の前で、電車の中で、

そして昼食に入った店で、とりとめもなく喋り続けた。

やっぱ、Bさん。いい子だ。

非モテ百合系オタで文学少女である自分への戸惑いはある。

でも、躊躇いを振り切って、なんとか前へ歩こうとしている。

傍目から見たらヨタヨタはしているけど、でもやりたいことを持ち続けている

とにかく彼女幸せになってくれたらいいな。

僕はそう願い続け、心の中で彼女を抱きしめた

2人の奇妙デートの最後は駅のホームだった。

「じゃあ」

「また」

僕らはあっさり別れた。

やがて電車の扉が閉まる。

僕が手を挙げると、彼女は微笑んだ。

僕は肝心のことを忘れている。

Bさんが好きなことを伝えていないのだ。

でも、もう少し経って、

彼女依存しなくても大丈夫になったと

自分で確認できたとき、電話をしてみよう。

それから半年経った。

さて、このような私的なポエムを書き連ねてきた、

その理由についても説明せねばならない。

僕の後輩で、Aさん・Bさんの先輩であるCという男の存在だ。

YES,YOU ARE YOUNG.

 飛ぶ鳥を見ていた。大口を空けて、体を仰け反り阿呆のように空を舞う鳥を見ていた。鳥が自由の象徴だなんてステレオタイプに過ぎて笑い種かも分からないけれど、それじゃ、自由って何さ。何処へでも行けることだし、踏む二の足がないということだし、生まれ変わりを信じないということだ。必要がないということだ。

 仕事は至極簡単で、かつつまらないものだった。アルバイトのほとんどがつまらないのだろうけど、僕の仕事はその中でも群を抜いてつまらないものだと自負している。自信がある、雇用主には悪いが。

 客がひとりも来ないので、頬杖を突いて馬鹿みたいなエプロンを首からぶら提げて、馬鹿みたいなカウンター椅子を出して座っていた。店長が来ないのをいいことに、半分寝てもいた。実際見つかったらとんでもないことだ、僕はまだ辞めるわけにはいかないのだから。それがどんなに馬鹿みたいな仕事だとしても僕に金銭を齎すことには変わりがない。それに少々の借金もある。前のアルバイト先でのような失敗を繰り返すわけにもいかない。前の失敗というのは要は遅刻したのを咎められて店長を殴ったんだけれど。どん馬鹿みたいなエプロンだって、僕の馬鹿さ加減には適いやしない。

 僕の就業時間が終わる。深夜、空気が冷たくてシャッターを閉めるときに流れ込んだ外気が異様に硬かったのが印象的だった。吉田さんが僕に声を掛ける。

 「裏のダンボールも入れないと」

 とても澄んだ高い声が眠った脳に響く。

 「ああ、オレやるよ」

 「ありがとう」

 礼を言うようなことでもないのに、彼女は礼を言う。だって僕はここの従業員なのだから。僕は店の裏手に回り、高く積み上げられたダンボールのひとつを両手で抱えた。屈めた腰を上げると重量が膝まで音をたてるかの錯覚で、響く。腰にくる。以前、ヘルニア入院したことがあったので少し危惧した。視界の隅に、影。

 「んしょっ」

 少し喘ぐような、うめくような可愛らしい声を出して彼女ダンボールを持ち上げた。吉田さんだった。

 「いいよ、オレがやるから」

 僕は主張したのだけれど、彼女は持つのをやめない。

 「だって、前にヘルニアやったじゃない。ふたりで片付けた方が早いし」

 彼女はそう言う。それで、僕はそれ以上は何も言わなかった。ただ、感慨に耽っていた。

 「あたしの方が多分力あるよ」

 そう付け加えた彼女は月明かりに照らされて、美しかった。

 「まだ、腰かばう感じある?」

 吉田さんはそう尋ねた。

 「うん、まぁ、少しね。でも大丈夫だけど」

 隣を歩く彼女が覗きこむように僕の目を見る。実際、膝の皿の下あたりに水が溜まるという事態になり、注射でそれを取り除いたりもしていた。腰を庇う故の膝への負担である。自己紹介的に話した僕の入院歴を彼女はきちんと記憶し、また気遣ってもくれた。長女故の優しさか、あるいは他のもっと何か別の、よそう。

 彼女と初めて顔を合わせてから暫くが経つ。随分もう同じこのシフトで働いていた。僕としてはありがたかった、何しろ僕は人見知りが激しく、またぶっきらぼうな物腰のおかげでとても接し難い人物であるのだ。

 「今日は家寄る?」

 彼女は尋ねる。

 「コーヒー飲ませて」

 僕は言う。僕は初めて彼女の部屋でコーヒーをご馳走になってから、いつもこの言葉を期待している。いつもだ。

 吉田さんの部屋は可愛らしい。余計な物がなくて簡素だけれど、可愛らしい。

 「まだ両親とうまくいってないの?」

 彼女は言う。

 「…うん、まぁね」

 言葉に詰る。僕が彼女の部屋に寄るのも深夜のアルバイトをしてそれ以外の時間は寝てだけいるのも、単に僕と両親の不仲によるものなのだ。彼女はひとり暮しだが、両親とも妹とも仲が良い。それはそうだろう、彼女を疎ましく思う人間などこの世にいる筈もない。忌々しい僕に限った話だ、そんな幼稚な事は。

 淹れたてのコーヒーが産声ならぬ湯気を上げる。どちらも湯のイメージ、下らない連想、下らないレトリック。僕の下らない悪癖、嫌気がさす。

 「暖房利いてきたね」

 紺色のニットカーディガンを脱ぎ、七部丈のカットソー姿になった彼女は暖房を切らずに言った。決して「暑い」と言ったり、「消す」と尋ねたりしない。だから僕は彼女が気に入っている。クソ忌々しい母親みたいなことも言わないし、親父のように小言も言わない。「親友」と呼びかけたりもしないし、「ちゃんとしなよ」と余計な心配もしない。彼女は全ておいて良い塩梅で、僕と付き合ってくれる。

 「ミルクある?」

 「あるよ」

 吉田さんは立ち上がり、台所からミルクを5つ持って来た。暗にもう二杯ばかし飲んでも良いということなのかも知れない。そういう暗喩なのかも知れない。

 僕は以前は部屋に貼ってなかった壁の数枚の写真を見咎めて言う。

 「あれ、これ何?」

 「ああ、それね。合宿館山行ったんだ」

 「合宿吹奏楽合宿?」

 「そうよ、どん部活だって合宿ぐらいあるわよ」

 「へぇ

 意外だった。彼女合宿なんて行かないと思っていたからだ。例え存在したとしても彼女は断るものだと思っていたのだ。はなから考えに入ってはいなかった、当たり前だと思っていた。

 「戻る気ないの?」

 「いや、まだなぁ」

 休学したばかりですぐさま復学するのはないにしても、いずれ、だとしても、まだそういう気にはなれないのだ。僕は「まだ」と言ったが、本当は戻るつもりはなかった。例えば彼女に会うためだけには学校に戻れない、こうして会えているからだけではなくとも。

 時計は4時を回った。

 「面倒なら泊まれば」

 僕は面食らった。予想外の言葉であったからだ。僕の家はここから歩いてだって15分くらいだし、帰れないということはありはしないのだから。電車だって使わない距離なのだから。彼女は恐らく僕の心情と事情を理解して、そういう彼女一流の許しと癒しを持って僕に接してくれたのだろう。

 「あ、もうそろそろ寝るの?」

 彼女は僕と違い、朝が早い。僕は1日ぶらぶらしているだけだから良いが、吉田さんはそうもいかない。

 「寝るけど、まだ平気だよ」

 「じゃぁ、寝るまではいる」

 僕はそう言った。

 「ちょっとトイレ入ってて」

 吉田さんはそう言った。僕は言葉に従い、取りあえずユニットバスの扉を開け中に入る。ガサゴソという何かをしている音が聞こえるし、胸が高鳴る。僕も馬鹿じゃないから。

 「いいよ」

 扉を再び開け外へ出る。彼女はゆったりとしたパンツに履き替えて、長袖の薄いTシャツに着替えていた。薄いTシャツの下は下着をつけていない。欠伸を隠す仕草で口を覆ったとき、薄いシャツに乳首の形が浮き出る。僕は心臓が破裂する。

 「何か貸そうか?」

 「いや、いいよ」

 「じゃ、寝るか」

 彼女はそう告げて、部屋の電気を落とした。

 凄い早さで胸が打つ。彼女が目を閉じ、それで僕は彼女が何かを待っているのだと確信して彼女を抱きしめた。更にドンドンと胸が打つ。僕は吉田さんの唇を塞ぎ、薄いシャツを捲り上げた。薄明かりの中、伏せたお椀型の暖かい空気な中では蕩けそうな胸の先に口をつける。ボタンのないゴムパンツに手を差し入れて、弄る。僕は荒い息遣いで全身を弄った。彼女は声を上げなかったが、気付かなかった。

 「あのさ…」

 吉田さんの声は「ああん」ではなく「あのさ」だった。聞き間違いではなく、「ああん」ではなかった。僕は突然我に返る。隆起したものも急速に恥ずかしさで萎える。似ているけれど「ああん」と「あのさ」ではすごく違う。

 「ごめん、嫌だった?」

 僕はわけが分からずに尋ねる。焦る。

 「いや、嫌じゃないけど、するの?」

 彼女はそう言った。僕は何て答えて良いものか分からない。「する」の反対は「しない」で、「するの」と尋ねるということは「しない」という選択肢もあるということで、果たしてそれは僕が選択することなのかどうか、もしくは「するの?」は「マジで?」ということかも知れない。彼女は僕を罵りはしないだろうが、そういう気持ちは存在するかも知れない。僕の唾液が付着した部分が光っていた。

 僕の借金の話をしようか。

 僕が少々の借金をこさえた事は話したけれど、一体どんな理由かは話していない。理由はいらないかも分らないが、簡単に言うと罰金刑だ。

 僕が学校を休学してはいないが事実的には進級が不可能になった頃、毎日繁華街で何をするでもなく、ぶらぶらしていた。その頃属していた劇団での立場が急激にまずい事になっていた時期で、役も貰えなかった。演出の奴を殴ったせいでもある。わざわざオーディション合格してまで属した劇団だし、それなりに楽しかったのだけれど、どうもうまくいかなくなっていた。その折、街で喧嘩になった。

 全く僕が悪い。何故なら僕が売った。3人組の若者がいたので、そいつらに聞こえるように酷い言葉を呟いた。彼らは一目見て良い恰好しいだと分ったけれど、人並み以上にプライドが高かったらしく応じてきた。3対1の殴り合いになり、勝てそうもなかったのと異常にムシャクシャしていたのとで、刃物を出した。刺してはいないし、少々斬りつけた程度だったけれど、そこで御用になる。実刑にならず、親に肩代わりして貰い今に至るということだ。それでも釈放されるまでは地獄のようだったが。

 そして僕は借金だけが残った。劇団は辞めた、留年した。

 「するの?」

 彼女が悲しそうな顔でそう尋ねた後、僕はまた急速に隆起していた。

 再び下着の上から当てた指を動かすと、彼女はとても大きい声を上げた。僕は勢いづいて下着の中へ指を入れて動かす。隣の部屋まで響くような声を、彼女は出す。それから僕は吉田さんの着ているものを脱がした。

 「あれ?」

 僕は自分のものを彼女入り口押し当てた瞬間、不思議感覚に襲われる。

 「あれ?」

 もう1度呟く。

 「あれ、あれ?おっかしいな、クソ、何でだよ」

 最早泣きそうだった。

 「気にしないほうが良いよ」

 そして彼女はこう言った。

 すごい、何もかもが嫌だった。生まれたことすら呪った。僕は学校も両親も兄弟も学友も教授店長災害も事件も平和も金も芸術も僕も、何もかもが嫌だった。一番は僕だった。クソ忌々しいアルバイトでこつこつ日銭を稼いで、こつこつ自身の一部分を削って量り売りするのだ。テレビをつければ、クソ忌々しいワイドショータレントセックスを追いかけて、クソ忌々しい番組馬鹿みたいな笑いを押し付ける。僕は可笑しいときには笑えないし、笑いたいときには笑えない。そういう風につくられているのだ、この国は。いやこの世界は。クソ忌々しい。

 爆発しそうだった。最早爆発しか許されていなかった。殺しは許されていなかった、だから爆発しかなかった。僕は何かを巻き込むことが許されていなかった。誰かを巻き込むことを望まなかった、だから、ひとりで、誰とも関係なく、たったひとりで、誰も知らないところで、生まれ変わることを決心した。

  弟に車を借りた。僕は免許を持つが車は持っていなかった。

 「明日、車貸してよ」

 僕は深夜にそう告げた。彼は良い返事で快諾してくれた。二階の自分の部屋で、服を数枚と現金をリュック仕舞い、地図を用意した。明け方、まだ誰も起き出さない時間帯に自動車のキーを握り締めて荷物を背負い、エンジンをかけて出発する。さらば、僕の生まれた町よ。

 国道を快調に飛ばす。明け方は車の数も少なく、頗る順調に進路を北へ向け走った。途中、お腹が空いてコンビニエンス・ストアでおにぎりを買い駐車した車の中で食べた。もう大分町からは離れた。僕は嬉しく思う。遣り直せる、僕のクソ忌々しかった人生はし切り直せる。ただ少しだけ違った、掛け違えたボタンを掛け直せるのだ。誰も知る人がいない町で、何も知らない町で、僕がどういう人間かを知る人間のいない町で。煩わしい些事や柵、絡め取られた手足の自由を、フルに、全開に、僕という人間の素を元を、僕を形作る構成する根の部分で、僕は生きることが出来る。下らないアルバイトともさよならだ。

 また休憩のためにコンビニエンス・ストアに立ち寄った。

 街灯が点る。

 僕は携帯電話を取りだし、吉田さんに電話を掛ける。出ない。もう1度掛ける。

 「はい、もしもし」

 彼女が出た。

 「あのさ、今何処にいると思う?」

 「何?何処?分らない」

 「なんと、××県にいます。さよなら言おうと思って」

 「え?何?何言ってんの?」

 彼女は本当に事情が飲み込めないようだ。当然と言える、何故なら僕は去るのだから。そういうものだ、別れとは。

 「オレねぇ、遣り直すよ。誰も知らないところに行って、何もかも全部遣り直すんだ。弟から車を借りてさ、ここまで来たんだよ。アルバイトは後で電話して辞めるって言うんだ。お金は心配ないんだよ、実はさ、オレ結構貯金あるんだよね。50万くらいはあるんじゃないかな。朝、銀行が開いたら一番に金おろして、それで、部屋借りるんだ。多分、足りるし、当座暮すには困らないと思う。親に払う借金を返済滞らせてさ、密かに貯めていたんだよ。それで、部屋決まったら仕事探すんだ。オレひとりが暮す分ぐらいは稼げるよ、オレ若いし。そしたら、遊びにおいでよ」

 僕は言いたいことを早口で、興奮しつつ一気に喋った。

 「車貰っちゃうの?」

 彼女は訊く。

 「いや、返すよ。だって維持出来ないし、可哀相じゃない。落ちついたら弟だけには連絡して、取りに来て貰うんだ。そしたらオレが生きてることも親には知らせて貰って、捜索とかも止めて貰う」

 「心配してるよ」

 「あいつらの心配なんか関係ないよ。オレの気持ちは分からないんだもの。育てたのはあくまで「息子」であってオレじゃないんだから」

 「そんなに働けないよ、大変だよ」

 「大丈夫だよ」

 「腰は?痛くならない?」

 「それも大丈夫だよ」

 少しの沈黙があった。

 「何で何処かに行かなきゃならないの?」

 「同じ場所にいたら何も変われないからだよ」

 「違う場所に行ったら変われるの?」

 「多分」

 「あたしを嫌になっちゃった?」

 「そういうことじゃないよ。だから、生まれ変わるためには全部捨てなきゃならないんだって」

 僕は少々イラついていた。水を差された気になっていたのだ。 

 「この前のこと、気にしてるの?」

 「違うって!」

 つい怒鳴ってしまう。

 「オレの人生だ、オレの人生だ、オレの人生だ。好きなことをして暮すんだ、何も煩わしいことに関わらず、オレは本来のオレのままで、オレの人生なんだ!」

 僕は興奮していた。

 「今まで、本当じゃなかった?」

 また少し沈黙彼女は続ける。

 「あたしと会っていたのは違かった?それも本当じゃなかった?辛かった?」

 僕は答えられなくて沈黙した。そして重い口を開いた。

 「だって、付き合えないもん。彼氏いるもん、何も思い通りにならないもん、バイトして、家に帰って、寝るだけだもん」

 独りでに涙が流れた。意思とは関係なく、自動的に流れた。

 「あたしと付き合えれば帰るの?だったら、いいよ。付き合おう。だから帰ろう?」

 「彼氏は?」

 「別れる」

 「違うよ、違うもん。それじゃ、意味ないもん」

 涙が何故か止まらなかった。さえずる小鳥のように止まない。

 「ねぇ、好きなことって何?」

 彼女は尋ねる。

 「分らない」

 「見つからなかった?」

 「うん」

 「見つけようか」

 「うん」

 だけど涙は止まらなかった、ただ眩いコンビニエンス・ストアの明かりが滲むのを見ていた。彼女は静かに言う。

 「帰ってきて」

 「うん」

 僕は車の中に常備したティッシュペーパーの箱から数枚を抜き取り、思いきり鼻をかんだ。キーを回し、サイドブレーキを下ろす。ぼんやりと浮かんだ月から漏れた光りが白い車体を照らして、僕は誰も知らない土地で生まれ変わり損なった。

 吉田さんの部屋の前で車を止める。彼女は僕が車を着けるずっと前から部屋の扉の前で、二階の柵ごしに階下を見下ろしていた。車のドアを開けて体を半分出して見上げると彼女は真っ青な顔色で今にも倒れそうなぐらい儚げにその華奢でか細い体をやっとの思いで支えているように見えた。彼女の吐く息は白く、そしてまた僕の吐く息も白い。

 「おかえり」

 頬を紅く染めて、安堵した顔つきで吉田さんは言う。

 「ただいま」

 僕は言う。

 コインパーキングに車を停めて、彼女に連れられ部屋の中へ入る。力なく吹いた風の力ですら吹き消えそうな程彼女の体は軽い。よろける彼女を後ろから支えた僕は思う。そして驚く程冷たかった。暖かな暖房の利いた部屋で、紅潮した顔のまま彼女は熱いコーヒーを淹れてくれた。ぽつぽつと話し出す。

 「いいところだった?」

 「景色さえ変わらなかった」

 「そう」

 異変に気が付き、瞳の潤んでいた吉田さんの額に僕は手のひらを当てた。良い匂いがふわりと漂う。

 「熱あるじゃん

 「平気よ」

 彼女は笑って言った。

 「ただちょっと暑いだけ」

 「布団敷くから、横になりなよ」僕は慌てて布団を敷く準備をする。

 「ありがとう」

 彼女はにこりと朝露の弾ける様のような笑みを零した。苦しさは微塵も見せずに。

 薄明かりの中、彼女は僕の手を握る。

 「もし迷惑じゃなかったら、手を握らせていて」

 咳き込みながら言う。僕は首を左右に旋回させて、掛け布団を捲り体を滑り込ませる。彼女は「うつる」ことを危惧したが、僕はそんな些事を物ともしなかった。取り合わなかった。

 「不安だったの」

 弱弱しい声で彼女は言った。彼女の常は気丈で、ついぞ聞いたことのないような微弱な周波であった。彼女は僕のズボンの股間に手を這わせた。地形のアップダウンをなぞりひた走るラリーカーのように、布に浮き出た隆起を指で擦った。僕は何も言わなかった。ゆるりと伝わる快感に身を任せていた。布団の中の暗闇で、見えぬところで、僕のズボンボタンが外されジッパーが下ろされた。下着の上から力任せに擦る。

 彼女の手の平は汗がじっとりと滲み、湿気の多い指で、心得た動きで、僕を誘導した。短く空気を切るような吐息が僕の口から漏れる。奮い、僕は彼女の手の甲に自らの片方の手を添えて、静止した。

 「大丈夫だから、しようよ」

 彼女はまた咳き込み、言う。

 僕はゆっくり首を振った。

 「違うよ、あたしがしたいの」

 手の平を彼女の両目を覆うように翳して、僕は言った。

 「今は体が大事だよ」

 「大丈夫だよ、ねぇ、触って」

 彼女は明らかに何かを焦った。そして僕は告げる。

 「吉田さんが大好きです。何よりも好きです。眩しくて、頭の芯が痺れて、でも自分を省みたときに、だから嫌になる。だから変わろうと思った。でも実際は逃げただけだった」

 しばしの静寂が息を呑む。

 「オレ童貞なんだよ」

 彼女は目を丸くしていた。僕は笑わなかった。

 「分った、大人しく寝る」

 切迫感のない表情で静かに言った。閉じた目で何か考えた後、瞼を勢い良く開けて彼女は言う。

 「口か手でしてあげようか?」

 「え」驚き、躊躇する。

 「ご褒美」

 そう言って彼女は布団の暗闇の海、奥深くに身を沈めた。

 僕は演じていた。長い間、ずっと演じ続けていた。

 初めて物言えぬ恐怖を覚えてからというもの、中断なく設定した役でい続けた。その僕は、臆することなく人並み以上の胆力を持つ。髪の毛の色を奇抜にすることでピアスを沢山開けることで人々の好奇な視線に晒されることで、周囲の恐い視線に怯える僕を畏怖の対象へと格上げさせた。ケンカを振っかけることで、襲う側へ回ろうと思った。全ては遠ざけることで僕という個を見つけ易くする目的であった。本当の自分は分らなかった。奇しくもそんな僕が劇団に属し、役者という付加価値を欲した。僕は役者ではなかった。演じていたが、役者ではなかった。ラインが曖昧になり、殊更僕が分らなくなった。

 幕が降りた後も僕はステージに上がり続けていた。観客は帰り、拍手のないところで、僕は演じ続けた。

 ファッション、薀蓄、趣味嗜好、どれも僕は救ってはくれなかった。もがき、救いの船を待った。

 そして天啓、変わらなければ。

 この宇宙の下、僕はもがき続けた。

 下らない世界、下らない日常、思いは変わらない。無限の可能性を持たされて生まれた筈なのに、僕に出来ることはあまりに少ない。

 希望があった。

 それは小さくだが、微かに光を発した。

 この宇宙の下、僕は生きていた。

 下らない世界、下らない日常。固定された首も癒え、あたりを見回すと僕は生きていた。死んだ方がましだと思っていたことはそうでもなかった。死ぬ程ではなかった。何故なら僕は生きていたのだから、それを手放す程ではなかった。気持ちが良かった、気持ちが良かった。

 僕は自由に向けて旅立つ。野放図な精神が蔓延る地へではなく、自らの由に向かい、僕の僕の、僕へ。自由はアメリカにはなかった、自由はほかの素晴らしいくににもなかった。他の何処でもない僕の心の平原にあったのだ。生きるのならば、ここで生きる。理由が必要なら彼女のいるここで。

http://anond.hatelabo.jp/20080229204649

↑あれ?今表示されてないけど元記事の増田本人を名乗った方からのトラバ


増田さんからせっかくお返事頂いたのに、ますますわけわからんくなってきた。

本当申し訳ない。

とは素直に思ってるけど。

東証一部に上場

ごめん、やっぱり意味がわからない。

楽しい同窓会が開けるぐらいに、同世代のみんなが...

東証一部に上場企業の方の30-34歳の同窓会は、そんなに心の傷を負ったニートだか無職だかが多いわけ?

そんで成功した自分と無職の心に傷を負ってるんだかなんだかわかんない人に配慮しないと楽しくないくらい明暗がはっきりしてるということを言いたいわけ?

もしそうだとしたら、30-34歳でもトップレベル(あえて東証一部上場トップレベルと言うけど)の悩みなんてみんな知らんよ。

ちょっと嫌らしい繰り返し方するけど

ずっと低い生活を覚悟すれば、仕事は無いわけではありません。

生活水準を大きく落とすというのは、精神的に苦痛を伴う難しい事です。


楽しい同窓会が開けるぐらいに、同世代のみんなが...

たぶんこの人の周りには、18や22やそこらで土方に身を置きながらも必死に這い上がってきた同級生っちゅうもんがいないんだと思う。

生活水準を大きく落とすというのは、精神的に苦痛を伴う難しい事です。

だからみんな働くんだろーが。それこそ文字通り必死に。

聞いてると生活水準を落とすのが厳しいから働かないだとか、

天下の東証と(聞かれてもいないのに)わざわざ名乗る人間からみても働かずに親を脅すのが逞しいだとか、

一部の人間に擁護しすぎてて同じ世代として全く共感できない。

これが本当だとすればもう全く話にならない。

働かなけりゃー将来もっと生活水準を落とすことくらい、働く歳になったいい大人がわかってて自分で決めたことだろうに

何を持ってして「心の傷」だとか同窓会で配慮したいが云々とか言ってるのか。

何故本人(と名乗る増田)が補足したのか、

その真意すらわからないんだけど、

東証一部だかなんだか知らんが、そんな人が同窓会でバカニートに配慮しないと楽しくないほど30-34は傷ついてる、ってそう言いたいわけ?

だとしたら本当迷惑。

生活水準を大きく落とすというのは、精神的に苦痛を伴う難しい事です。

そんな人たちにとって生きる方法の一つが引きこもりで、親を脅してでも養ってもらうことでした。

あなたも本当にあの氷河期を乗り切って10年働いた人ならわかるでしょうが。

生活水準を落としながらも10何年働き続けて愚痴一ついわず乗り越えていった大多数の同世代に失礼なこと言ってるのが。

生活水準を大きく落とす

のが嫌で

親を脅してでも養ってもら

って

結果的にわかってる

生活水準を大きく落と

すのを自ら選んで

心に傷を負ってる

一部の人同窓会だかなんだかで配慮してるのか知らないけど、

30-34歳でひとくくりにされるのと、

なんか「俺は東証一部だけど弱者代表してもの申してる」

ってのやめてくれないかな。むかつくから。

繰り返すけど

生活水準を落としながらも10何年働き続けて愚痴一ついわず乗り越えていった大多数の同世代に失礼なこと言ってるのがわかってない事が迷惑だから。

親を脅してでも養ってもらうことでした。ある意味でたくましく生きていると言えると思います。

脅される親もバカだけど、バカさ=弱者と言う意味では親が弱者代表だよなwwwwこの場合wwwwww

初めて合コン行った

無論人数合わせ要員で

一言で言うと凄かった

本当にドラマみたいなことみんなやってんすね

ビビったわマジで

凄いノリに全然ついてけなかった

男性から話しかけられてもなんか丁寧語になっちゃうわ、いかにも愛想笑いだわで全然もりあがんねー

ていうか、まだ皆酒飲んでないのに酒飲んだようなテンションになってるのは何故?

「○○ちゃんだっけ?可愛いね!どこらへんに住んでるの?」

ってえっいきなり個人情報取得?みたいな

「北の方です」

とか言っちゃうし自分

「えっ北?北ってどっちだっけ?右?

右!?

そしたら他の男がやってきて

「バカだなお前ーw南の反対だよ

そりゃそうだけど!!しかもその男それで分かったのか「あーなるほどね!」とか言ってる。こいつカルピスサワー2分の1杯でもう酔っ払ったというのか…?

これはもう増田に書くためにネタを提供してくれてるんだなとしか思えなかった。

休みの日とか何してるの?」

はてな注目エントリーとか見て、盛り上がってそうな話題を見つけたらそこからたどって言ってブログ同士の応酬を見てます。

とも言えず、

「犬と遊んでます」

と言った。これは自分の行動の中で、最もリア充的行為だと思って堂々と言ったんだけども、なぜか相手の反応は

「えっ!?犬と?一人で?」

「え…はい…」

「さみしいよー!!!w」

何故か爆笑。そのまま他の人たちにも「ねぇ○○ちゃん休日犬と遊んでるんだって!」と公表される始末。おいおいおい。

「えー!さみしいよ○○!」「それはさみしいなあ!!」の大合唱となる。なんじゃこりゃ。

女子の一人が「もー誰か誘ってあげてー」と冗談交じりに言う。えぇー別に誘ってほしくなかよ。ていうかお前ら、犬の可愛さちょっとナメとんのとちゃうか?ネット上じゃ何故か猫の鍋だとかなんだとかいって猫ばっかもてはやされてるけども、犬の可愛さってもんをここらでいっちょ見直してみた方がいいんと違うか?特に子犬破壊力といったら物凄いものがあるのだぞ。これはイヌという生物の罠なのか?ヒトに一切の世話をやかせ、自身の種を苦労なく保存するというイヌの罠なのか?私はそれに今ずぶずぶとハマってしまっているのか?この可愛さはそのための進化だというのか?生きるため、種の繁栄のために作られた究極の可愛さだというのか?だとしても……だとしても私はこの罠から抜け出せない……

と考えてる最中に、男子の一人が「じゃあ休日遊びに行こうよ☆」(本当に☆マークが飛んでる感じだった)と言ってきた。

「いや、ここんとこ忙しいから…」

と断る自分。本当に忙しいのだ。今週の休日には一人で映画を見に行き、一人でショッピングをし、本屋へ行かなければならない。それは前から決めてあった予定なのだ。

「えー。彼氏いるの?」

脳内ならいますよ。もう婚約までいきました。

とは言えなかった。

「いませんよ?」

「え、じゃあなんで忙しいの?

質問の意味が分からず一瞬フリーズした。

「じゃあ」って何が「じゃあ」なんだよ!?

「いやー色々…」

「いいじゃん。遊びに行こうよ」

なんでいいんだよ…なんなんだよこのダメポジティブぶり…

結局断った。もう私は烏龍茶についてきたコースターの裏に何か落書きでもして過ごしたくなってきた。なんかノリについていけないのだ…

テレビ何見てる?」

と聞かれ、これはリア充的回答が出来るぜ!!とまた気張って

「あ…相棒見てるよ!」

と言ったら

「え?相棒?何それ」

ドラマ?」

という薄い反応…マジかよ…またもやリア充的回答が散っていった…

要望されたなら、合コンの場で右京さんのモノマネでも余興でやる準備は出来ていたというのに…

実は本当にやる気でちょっと緊張していたのに…

とてもこの空気でやりだす勇気は無かった…

しかし代わりに女子の一人が急に

「そういえば○○って手品できるんだよー!」と私に話を振ってきた。

マジでー!みたいー!と騒がれ、急遽やることになった。といっても所詮素人マジックなんでそう期待されても困るんだけども…

「えーでは誰かコインを貸してくれますか」

とかなんだかんだノっている私。正直一番楽しかったのはここだった。

無事成功した後、またノリノリの会話に「へへ…さいですか…へへ」と媚びを売る商人みたいにヘコヘコしながらついていき、ようやっと終わった。

誰からも番号聞かれなかったのは、幸いだったのか、不幸だったのか……

まあ全然問題ないんだけど、他の女子全員聞かれて私一人聞かれないと流石に帰りの風が寒く感じたよ。まああんな態度じゃそりゃそうだわな…。

あー、でも、同じくらいの年の男子とこれだけ喋ったのって初めてかもしれない。

貴重な体験でした。

2008-02-29

氷河期が心の傷とか、気持ち悪いなあ

30歳から34歳が受けた心の傷

30歳から34歳くらいの人は

当時就職がうまく行かなかった人は、自分に自信を無くした。自分が劣っているのだと思った。

ので心の傷を負ってるよね、って話し。

概要はわかるんだけど、具体的に何を主張したいのか全くわかんない。

同程度の努力をした人でも就職できたのに、今この年齢の人たちは当時就職できなかった。

え?

ずっと低い生活を覚悟すれば、仕事は無いわけではありません。

そうそう、わかってるじゃない。あーびっくりした。

生活水準を大きく落とすというのは、精神的に苦痛を伴う難しい事です。

え?

だから心に傷を負ったとか、そういう流れ?

もちろん、そうしてしっかり生きている人もたくさん居ます。そうできなかった人もたくさん居ます。

そうそう、わかってるじゃない。ほんとびっくりする。

程度の低い暮らしをしていると、他の世代からは、その程度の人間だったのだなと見られます。年齢を確認して、有効求人倍率の数値を把握して、しかたの無かった世代なのだなと考えてくれる人は少ないと思います。

そりゃそうなんだけど、

年齢を確認して、有効求人倍率の数値を把握して、しかたの無かった世代なのだなと考えてくれる人は少ないと思います。

他人様にそこまで確認してから俺を評価してって事なのカナ?

世間は厳しい。特に今30歳から34歳という年齢の人に対して厳しかった。今も厳しい。世間は容赦なく駄目人間を見下す。この世代もひっくるめて駄目人間を見下す。

世間にお母さんのような包容力を求めてるってことカナ?

あのときの就職難は本当に辛かったけど、だからといって心の傷とやらの理由に就職氷河期を持ってきて、30ー34歳の引きこもり統計と暗に結びつけるの気持ち悪いからやめてくれないかなあ。

この人は断言していないんで、こちらで憶測でまとめると

  • 働き口はあったけど、やりたくない仕事しかなかったよね
  • だから働かなかったんだよね
  • そしたら世間は厳しいよね
  • 心に傷を負うよね

って事がいいたいのかもしれない。

結局働いたか働いてないか、たったそれだけのことをいい大人が自分で決めたのに、あとあとになって世間のせいにして勝手に傷ついてるだけだよね。

みんな土木作業員からでも10年と働いてきたのに、こんなのと同じ30何歳に思われたくねーなー。

どうしたらいいの?

自分がどうしたらいいのか、って事?それとも周りがどうにかして欲しいの?

その答えはどちらも、そういう過去を自分が辿ってきただけだから、結果として今があるだけで、その結果をどう受け止めるか以外どうしようもねーんじゃねえの?

就職できない。周りからは「努力不足」と切り捨てられる。そんな人たちにとって生きる方法の一つが引きこもりで、親を脅してでも養ってもらうことでした。ある意味でたくましく生きていると言えると思います。

あ、バカなんだw

誕生日

暦の上ではひとつの節目。ほら、と指折り数えるように季節は過ぎ行く。夏と秋の間には確かにのっぺりと横たわるものがあり、それが僕らの気づかない進度で歩を進めた。徐々に徐々に森羅万象、そこかしこにその歩みの影を落としていった。僕らは気づかなかった。何故なら海はまだ青く、膝までつかった水温が迫りくるものが到来する時が遥か遠く先であることを語った。

 際限なく無限増殖する細胞のような入道雲は今にも落ちてきそうな程低く、僕らの町と空との間には気持ちの優しい屈強な巨人がその四肢でもって落ちてくるものを支えていたに違いない。それほど空の不透明度は低く、ときおり聞こえる巨人の唸り声や大地を擦って踵からつま先へと重心を移動するときの運びまで僕には雑音なくクリアに染みた。巨人が身を呈して守るこの町には軍事基地があり、そのお膝元では軍人の天下となっている。昔からの住人である人々には笑顔を顔に張りつける以外には生きぬく術がなかった。長い長い歴史の中で培われた護身術のひとつである。

  今しがた西の方から飛行機が飛び立った。

 「あ、また飛行機

 僕は銛を片手に堤防の岩肌が突き出した場所に腰掛けた少女の方を見て、呟くように言った。強い日差しの下でもなお黒い印象的に短い髪を風が撫でた。分け目なく乱れた前髪を手で払うようにしてから、彼女はその褐色に焼けた肌を惜しげもなく露出させたキャミソールに点々とついた水飛沫のあとを人差し指で追った。波礁のかけらが今また振りかかる。

 「珍しいね。何かあったのかな?ここんとこ見なかったのにね」

 有無は膝丈のジーンズをロールアップしたパンツから出した足をぶらぶらとさせ、パンツのポケットからメンソールの煙草の箱を出して包みのセロファンを開けて言った。

 「有無。タバコやめろって」と僕は即座に咎める。

 「またぁ。ほんと親みたいなこと言うね、コムは。いいじゃない別に。何がどうなるものでもなし」

 フリップトップの箱を開けて、銀紙を取り去る。ぎゅうぎゅうに詰った20本のうち1本を抜き取り、首から提げたヘンプライター入れから百円ライターを出して火をつけて有無は笑った。

 「コムじゃねぇよ。虚無。間違えんな

 僕は口を尖らせて言った。

 「知ってる?籠みたいなの被った人が時代劇とかに出てくるじゃない、アレ虚無僧』って言うんだよ。あんたと一緒。おかたいのよ、あんた僧侶だから」

 有無はけらけらと笑っていた。僕は口がたたないのでいつもこうやって最後には有無にオチをつけられてしまう。僕は僧侶ではないのだけど、有無の言うように「おかたい」のかも知れない。確かにうまいことを言うかも知れないがそれでも駄目なものは駄目だと思う。僕はそれ以上は取り合わず、水の中を覗くレンズで水中の魚の動きを追った。前かがみになり静かに刺激しないように獲物の動きを観察した。ふくらはぎの半分ほどの深さしかないこんな浅瀬でも魚はいるのだ。僕は彼らに悟られぬよう体を空気中の成分と同化させねばならない、水上で構えた銛の影だって彼らには察知出来るからだ。自分を狙う者の殺気を読めぬようではとてもじゃないけど自然界では生きてゆけない。僕はそういったことを父から習った。僕の銛が水中に落とされる。

 「オオッシャ!」

 僕は思わず拳を天に突き出し、歓声をあげた。銛の先には体をよじる反復運動を繰り返す魚がまだ息を絶えずにいた。その大きさは「大物」とは言いがたいが、とりあえずは僕がしとめた。僕は有無の顔を見る。

 「すごいじゃない。上達したのね」

 彼女は少し感心したような表情で、フィルターの近くまで吸った煙草を指に挟んだまま言った。短く切った髪を耳にかけて露出した耳には銀色ピアス太陽の陽光を眩しく反射させた。

 「その煙草、ポイ捨てすんなよ」

 僕は目を細めて、ぴしゃりと言った。

 家の玄関の引き戸を音を立てて開け、僕は「ただいま」と言っていつものように帰宅した。玄関先に婆ちゃんが駆けてきて、

 「あらあら、おかえり」と迎えてくれた。

 僕は獲れた魚が入ったびくを見せ、反応を伺う。婆ちゃんはやはり父には適わない、と言う。だけれど、僕だってそのうち父のように立派に成れるに違いあるまいと思うのだ。晩御飯の食卓にあがった自分の魚を想像して僕はにまりとした。

 「虚無、町に行って叔父さんのところに見せてくれば」

 婆ちゃんの提案に僕は「そりゃ名案だ」と同意して僕は自転車の籠に魚の入ったびくを載せて跨った。ゆっくりとこぎ出し、加速して町へ向かう坂道を駆け下りてゆく。頬にあたる風が普段の熱風とはうって変わって心地良いものになっていた。僕は心を躍らせて、叔父の賞賛の言葉と大きな手のひらが頭の上にのせられるのを想像してまたもにやりとした顔つきで自転車をこいだ。僕の着ていた白いTシャツはもう脇のあたりが大きな染みになる程汗を吸収し、ショートパンツは海の匂いが香った。汗でも海水でもいずれにせよ塩くさいのだが、僕の着るものがどれも余所行きではなくとも僕はそんなことは気にとめない。僕は頓着しない。

 町の中心部にある叔父さんの経営する釣具店へ向けて、僕はひたすら自転車をこいだ。

 栄えた大きな通りは夕ともなれば軍人で溢れる。彼らはそこで日々鬱憤を晴らすように酒を飲み、ときには暴力を振るう。そんな空気の中を僕は進んだ。

 規模は小さいが売春買春が行われる繁華街一角で見慣れぬ光景発見した。大概、一目でそれと分かる言ってみれば時代錯誤な「売春婦」風の女の人の立ち姿が見うけられるのだが、そのとき僕が見たのは僕と同世代か少し年上ぐらいのあきらかに条例違反であろう年代の女の子の姿である。僕は目を疑ったが真相など確かめる気もなかった。

 叔父の釣具店の扉を押すと、「波浪」と客に声を掛ける調子で叔父が言い、

 「おう、虚無か。どうした?」

 と僕と気づいた叔父は言い直した。

 「魚獲れるようになったよ」と僕は答える。やはり期待に違わず叔父は誉めてくれた。

 「すごいじゃねぇか。たいしたもんだよ、誰にも教わらずなぁ。銛じゃぁオレも教えられないし。どうだ?この際、針と糸に宗旨変えしねぇか?そしたらオレがみっちり鍛えてやるぞ」

 叔父はいつもそう言う。どうにも僕を釣り中間にしたいらしい。

 「それじゃぁ、食べられないじゃないの」

 と言って共に笑った。

 叔母さんの出してくれたオレンジジュースお菓子を食べながら、叔父さんと話した。

 「そういえば、諭くんどうしてるの?オレ昔良く遊んで貰ったよね、銛も上手かった」

 「あいつぁ、ダメだ」

 急に叔父の顔が険しくなり、僕は余計なことを尋ねた気分になった。叔父は続ける。

 「もう、虚無も大人だ。話してもいいだろう。いいか、虚無。おまえはしっかりしてるしそれに頭も良い。おまえだから話すんだぞ」

 「うん」と僕は異様な雰囲気に半ば飲まれながら頷いた。

 「諭。あいつはなぁ、チンピラだ。軍人の腰ぎんちゃくに成り下がって、ろくでもないことばかりしとる。麻薬の売人とかと組んでおるらしい。最近地元の子らを軍人に紹介する橋渡しのようなことをやっていると聞いた。要はな、売春の斡旋だ。分かるか?あいつだきゃぁ、クズだ」

 「ねぇ、叔父さん。じゃぁもしかして『桜番地』にいた僕と同じぐらいの年の子って…」

 僕は恐る恐る尋ねる。

 「あぁ、そうだ。昔は『桜番地』はきちんとした風俗街だったけど、今じゃぁ何だ、援助交際っていうのか?すっかり芯まで腐りきっちまったよ、この町も」

 叔父が煙草に火をつけたところで叔母が話に入る。

 「お父さん、やめなさいな。虚無ちゃんにこんな話。この子はまだ中学生なんだから。そうだ!虚無ちゃん、ご飯食べてく?」

 「何を言ってる。虚無はな、そこらのガキとは出来が違うぞ。そこらへんちゃぁんと分かっとる。な?虚無」

 僕は収拾をつけられなくなったので、「家で食べる」と言って店を出た。しかし、僕はさっき聞いた叔父の話で頭が一杯だった。僕がこんなにも動揺するのは集団の中に恐らく有無らしき姿を発見してしまったからに他ならない。まさかとは思う。ただ、どうしたらいいかは分からない。

 僕は家路に着いた。

 いつも魚を狙う場所があって、そこは観光客がくるようなところではなく地形も厳しく地元の子でもおおよそ僕ぐらいしか来ないプライベートな場所であった。今が夏休みだろうとそうでなかろうと、僕はそこで海につかった。 とろけそうな陽気の中有無はけだるそうに切り立った岩の上に立ち、僕を見下ろしている。彼女は紺色のキャミソールを着ていて肩にかかった部分から黒い下着のストラップがはみ出ているのが見えた。僕も彼女の立つところまで岩をよじ登る。爪や指先、そういった箇所が痛んだ。有無はやはり面倒臭そうに煙草を吸っていた。

 「今年は客足悪いんだってさ」

 彼女は自分の家が営む民宿の話をする。僕の家も観光客相手の商売を多少なりともしているので、そこらへんの話は良く耳にする。今年に限らず年々客足が減ってきているらしい。僕の住む町はそういったことに依った収入が不可欠な町なのだ。切り立った岩のすぐ下の水の中では僕が父から譲り受けた銛が天に向かって真っ直ぐに生えている。それは水没している部分がゆらゆらと正体不明に揺れて、眩しい光りを水面に放った。

 「喉乾かない?買ってこようか?」

 僕は振り返って有無の顔を見て言った。

 「ん」

 自分の財布を放り、咥え煙草のまま返事とも言えない返事で答えた。煙草を離した唇から白く風に棚引く煙を吹いて「奢る。あたし炭酸ね」と付け加えた。

 ガードレールなどない取りあえず舗装された道路を歩き、生活雑貨から何から売っている商店の前の自動販売機の前に立ち有無の二つ折りの財布を開いてお金を取り出そうとする。銀行カードや何かの会員証やらが差してあるスペースに異物感を感じて僕はそれを取り出した。僕は思わず絶句して立ち尽くす。コンドーム男性避妊具である。丁寧に連なったふたつのそれを慌てて元の場所にしまい、小銭が入るポケット部分から手早く出したお金ジュースを2本買った。有無のいる場所へ戻る最中、ずっと考えていたのだけど僕は僕の妄想を頭から払いのけることが出来はしなかった。

 缶を彼女に手渡すとき、偶然とは言いかねるが彼女の服と下着の中に眠るふたつの丘陵のゆるやかなカーブが見えて僕は激しく興奮してしまう。多分原因はさっき財布の中で見た、「性的な行為を行うときの確信」みたいなもので僕のその妄想を確かに現実の場所へ引きづりだすのだ。有無がいくら前かがみの体勢をしていたとしたってそれを覗くのは偶然でなく僕が見たかったからに相違ない。

 夏は終わりにさしかかっているようで終わりは一向に見えやしない。まだまだ雲はその力を誇示するかのごとく胸を張って広がりを見せる。空は低く。巨人はさわやかな笑みを浮かべ。

 僕は思い切って尋ねた。

 「なぁ、おまえ、やったの?」

 僕はこれ以上具体的には言えなかった。空気は全ての空間と繋がっていると僕は思っていたのだけど、それは違った。人と人を繋ぐ関係性の濃密によって区切られていたのだ。そして、僕は空気がこれ程硬く固まるものだなんて知らなかった。伝う汗さえも流れ落ちない程度時間が流れた。

 「見たんだ?」

 と言って有無は目を閉じて立ちあがった。そしてゆっくりとこちらを向き、太陽に背を向け逆光の中褐色の肌が通常よりもそのトーンを落とすのを僕は見た。明度も彩度もが一段落ちる。そして瞼を開いて微笑んで言った。

 「そうだよ。セックスしたよ」

  僕ははっきりと滑舌良く発音したその単語と服と下着の中から覗いたふくらみを脳裏に描いて、まるで猿のように際限なく永久機関のように終わりなくオナニーした。マスターベーション自慰行為と言い代えても良い。そう、十年一日のごとく来る日も来る日も布団の中でそればかりしていた。最低の男であった。他にするべきことも見つかりはしなかった。想像が加速してブレーキが利かず、有無は僕の想定した架空の世界の架空の部屋で日を追うごとに一枚ずつ脱いでゆき、日を追うごとに僕のどんな無理な要求にも応えるようになった。そしてある日の夕方一切立ち寄らなくなった海へ行き、計り知れなく大きい太陽ですらすっぽりと難なく包んでゆく水平線を見て自分が一体何者かを己に問うた。

 朝起きると適当な袋の中に水着タオルそういったものを積め込んで、海へ出かけた。銛は持たず、ただ体ひとつで海を泳ぐ。海水中の塩分が浮力を生み僕の体をまるで拒絶するかのように押し上げ水面に浮かせた。僕が潜ることを嫌がっているようでもあった。体中に蔓延した不健康な老廃物を全て排出する腹づもりで、体の奥深く何処かで息を潜める病巣の中核を探し当てねばならない。そうでもしないと僕は存在異議を失うのだ。夜毎陰茎をしごくだけの「もの」であって堪るものか。自分だけが知る海岸線でなく、公衆遊泳場に来ていた。時期もピークではないので割と地元若者が多いようである。そういった経緯で日がな泳いだ。

 僕はこれ以前にだって自慰行為をしていた。考えていた。ずっと。何故僕はこうまでみっともなくならなければいけなかったのか。何故僕はかさぶたを掻き毟るように。何故。何故。そういったことを呟きながら水中から回答の眠った宝箱を探す、見渡す。遊泳中のカップルの片割れで目的も持たずにふらふらと漂い泳ぐ女が平泳ぎの恰好で股の間の小さな布で隠された部分を晒すのを長い間ずっと潜り続けて凝視していた自分を発見したとき、僕は同時に答えをも発見した。なんのことはない。これが僕だったんだ。塩水で目を擦った。

 僕は大人になるまでこの自分自身の下半身的問題を平和的に解決出来ない。要するに女を買えない、ということだ。しかしながら僕は望みもしたが勿論憎みもした。有無が買われるという現実を、この両目ではっきりと見ておかなければならなかった。より深く自分を呪う為に。

  町へ降りると、金曜だけあって人は多い。都会の盛り場と比べたら本当にちっぽけなものだ。色町『桜番地』へ近づくにつれ、ぎょろぎょろとした目つきであたりを見まわす。ここの色町は変わっている。それらしい店を全部一角に集めただけで、表の通りから丸見えの場所で平然とさも普通のことのように売り・買いが成される。同時に良くある繁華街でもあるから、例えば僕や同級生やなんかが居ても特に誰も咎めない。

 僕は諭くんを見つけた。面影が残っていたのですぐに分かった。その後について歩くのは有無と同級生の友達であった。僕の予想は出来れば外れて欲しかった。全員知った顔で、それもクラスの中でも特に大人びていて顔だちが美しく整った者ばかりだった。そして有無は群を抜いている。

 僕は叔父さんの家にお使いに行く名目で町に来ていた、そして恐らく彼女らも似たような嘘を並べて来たことであろう。預かってきたトマトを握りつぶした。

 何てこった。あいつらか。

 僕は自転車の籠の中のトマト軍人の足元に投げつけた。そして僕自身、我を失い何事か夢中で叫んだ。自分ですら果たして何を言っているのか分からない。僕は右手の中指を立て、

 「間座墓!」

 と叫んだ。軍人は首だけで振り返り、それから僕の方へ歩みを寄せる。僕よりも40センチ身長が高い彼の眼光は既に「子供のしたこと」を笑って許すような雰囲気ではなかった。軍人はその上等な皮のブーツで僕のももの付け根をポケットに手を突っ込んだままで蹴った。大人の力の衝撃がその箇所から電流のように地面に抜け、さながらアースの役割でも果たしたかのように僕の左足は焼け焦げて落ちた。立っていられなくなり、地面に倒れ込むとすぐ目の前に皮製の靴のつま先がある。目をつぶる暇もなく鼻から大量の血が流れ出して、息が出来なくなった。口の中が熱くて、鼻水と血が混ざってマーブル模様を織り成しその不自然な美しいコントラストを眺めた。涙で視界が利かなくなると、今度はわき腹に針で刺されるような衝撃が訪れた。正体不明の嗚咽を漏らす僕を助けようなどという者は現れるはずもなく、結局は僕が何者であるかを問われるだけだった。彼の顔は笑っていた。

 「坂!…国家!」

 僕は片足を押さえ膝を付いた姿勢まで体を起こし再び中指を立てた。彼はそれまで顔の表情は笑った形を作って努めていたがその瞬間には完全に笑顔もおちゃらけた態度もなくなった。ポケットから出した拳で僕を思いきり殴りつけた。僕は誰だ?彼は最早軍人として僕を殴らない。そして笑わない。ならば、立ちあがろうとする僕は一体何者だ?今さっきまで軍人であった男は問う。オレは誰だと。オレは一生陰部を擦り続ける醜い生き物か?そんな男か?退いて生きるか?

 僕はふいに笑いがこみ上げた。

 「オレは海の男だ」

 僕は声に出して言った。

 彼は飽きたという身振りで友人らしき軍人を連れて、帰っていった。だらりとぶら下がった動かない腕はファイティングポーズのつもりだった。

 叔父さんの家で目が覚めた。叔父さんは安堵した表情で

 「あぁ、良かった。このまま目を開けないんじゃないかと思ったよ。しかし、すげぇ顔だなぁ」

 と僕に話し掛ける。叔父さんの説明によると僕は気を失い、そして軍人が帰っていった後で見ていた人達がここまで運んでくれたということらしい。有無がどうなったか知りたかったけれど、そんなことは勿論訊けはしなかった。叔母さんが出してくれたお粥を食べようとして口の中に入れたらすごい衝撃が走って、僕は思わず宙に浮く。

叔父さんも叔母さんも笑って言った。

 「虚無の親父さん、未曾有さんもケンカはしたけどさすがに奴らにケンカふっかけるなんざ聞いたことねぇや」

 「そうよ。もうちょっと相手を考えなさい。殺されてたかも知れないのよ」

 やはり叔母さんは泣き、僕はあとで家族にみっちりと怒られた。

 だけれど、僕は自分が何者かを取り戻した。

 以前にも増して僕は亡き父のように立派な漁師になろうと強く思う。鋭く切り立った岩壁を背に、汐が引いて膝丈程もなくなった外界から隔絶された知られぬ海で僕は銛を片手に空を見上げた。いつまでも空は夏の様相を呈していて水面に落ちた人影で僕は背後の岩の上に有無がいることを察知する。

 「そこだ!」

 僕は小指の爪ほどの大きさの小石を放ちながらそう言った。

 「久しぶりじゃない」と小石のことには触れずに進める。思わず冗談めかした自分が恥ずかしくなるほど冷静に。

 「そうだな」

 僕も冷静に。

 「虚無、少し変わった?」

 「そうかな」

 「何してんの?」

 「銛の練習。オレはやっぱり漁師になるよ」

 「そう」

 そんな会話を交わした。有無はメンソールの煙草に火をつけて煙を吐き出すと同時に顔を上げた。僕は相変わらず銛で水の中の地面を形をなぞるように落ちつきなく突ついていた。彼女は指に煙草を挟んだまま、切り立った岩のわずかな取っ掛かりを慎重に滑るように降りた。僕の隣に腰を下ろし尻をつけて砂浜に座る。僕も砂の上に座るが水着が濡れていた為に濡れた砂が尻の形にくっきりとついた。あまりスムーズ言葉が出ない。

 「有無は?何になるの?」

 僕は沈黙の堰を切るように話し掛ける。

 「分からない。あんたのお嫁さんにでもして貰おうかな」

 僕が驚いた顔をしていると「冗談よ」と言った。

 二人で動きのない海を見ていた。海鳥が遠くの島へ飛んでゆく。すると、有無は立ちあがり

 「気持ち良さそうね。あたしも入ろ」

 とそのままの姿で駆けて波を掻き分けてその身を浸した。僕があっけにとられ制止する暇もないまま彼女はずぶぬれの恰好で海からあがってきた。

 「やっぱ服着たままだと辛いね」

 僕の目は彼女の透けた服から浮き出た秘密しか入らず、完全に思考は停止し例えば気の利いたセリフのひとつも出てこないままとめどなく湧いてくる唾で急激に乾いていく喉を潤していた。髪をかきあげる仕草をした後、有無は

 「虚無はセックスしたいの?」

 と訊いた。

 僕は「オレはセックスしたいよ」と答えた。

 僕は煮え切らない情欲を抱えて悶々としたままの紳士に分かれを告げた。僕は快楽を貪る者だが、決してそれのみには存在しない。彼女に抱いた幻想彼女に抱いたいかがわしい妄想、己に都合の良い空想、そういったものを1箇所にまとめて全部破棄した。それから僕は有無と交わった。

  鋭く切り立った岩影で、外界から情報がシャット・アウトされた知られぬ砂の上で、落ちかけた太陽に焼かれ背中を水飛沫に濡らし僕は一際大きな声を出して果てた。

 僕も有無も裸だった。彼女のお腹の上にはまだ生々しく行為の証が記されたままである。濡れた有無の服は薄いタンクトップですらまだ乾かず先ほどと全く変わらない。時間の経過も感じられない。脱ぎ散らかされた衣類の位置もそのままだ。

 「気持ち良かった?」

 と一番最後に有無は乾いた服をそそくさと着ながら訊いた。

 自転車海岸線を走っていると、東の方角へ飛行機が飛んでいった。僕が数えただけでももうさっきから一体何台の飛行機が飛び立っただろうか。気体がもの凄い速さで小さくなっていくのを見届けてから、再び自転車に跨りエデンに似た外界から隔絶された場所へ向かう。遠目に有無の姿を発見して片手でハンドルを握りながら大きく手を振った。彼女も体全体を使って信号を僕に返す。

 「あ、また飛行機

 有無は上空を見上げて言う。

 「オレも見たよ。来るときだけですごい数の飛行機見たなぁ」

 「あたしも。何かあるのかなぁ。演習とか?」

 僕は「さぁ、どうだろうね」と言い終わらないうちに、すぐ隣に座る有無の乳房を背面越しに触ろうとした。彼女は僕の手をまるで蝿や蚊をはたくような感じで叩いた。僕が彼女に会うのが待ち遠しかったのはいわずもがななのだけど。有無は

 「あの時だけだよ。そんなねぇ、都合良くホイホイやらせるわけないでしょうが」

 と手厳しく言った。僕はしつこく懇願したが、彼女が要求を飲むことは無かった。岩場に立てかけた銛が太陽の光りを反射して光線を生み出す。僕や有無に浴びせ掛けられた兆しの元を探し、空を見上げた。往き付く先は夏を完全に体現しその大きな両手で包み込むような入道雲。空を支える巨人はやはりその笑みを絶やさずやがて秋が来るまで微笑み続けるのだろう。

 「まったく、言わなくちゃ分からないの?」

 有無は胸の高さの水面に左手を入れて、水の中で僕の手を握り引き寄せた。帆を張った舟のように水面に浮かんだ僕の体もその小さな力で彼女の体にぶつかる形で引き寄せられる。お互いに向き合い体の前面を押しつけるように抱き合った。彼女は僕の股間を水中で触る。空は高く広大で、僕たちは身を寄せ合い抗わずそこに含まれた。東の空からまた飛行機が飛んで来て、僕たちの上空を過ぎ去るのを見ていた。

 僕たちは飛行機の来た方角の空を見る。空では入道雲とは違う、けれど、ひときわ大きな球体のような雲が風船が膨らむ様を連想させた。心なしか荘厳で見ているものを魅了する何処かで見たことのある形の雲だった。ずっと、ずっと遠くまで、僕は僕の父も祖父もが愛したこの海の果てまで思いを飛ばす。

 「わぁ、見て。綺麗」

 と有無は水中から出した手をかざし、遥か遠くの海で立ち昇る雲を指差した。

2008-02-28

http://anond.hatelabo.jp/20080228084920

プロ市民」という言葉もあるように、日本人には「結社の自由」の価値がわかってないとこがあるように思う。

というか、その価値がわからないように個人個人が分断されて生きるように社会デザインされているのかも。

「一人で外食するのが怖い」って人も増えているらしいが、一人で気軽に入れるファーストフードコンビニは平気。

しかしそういうところでは「常連さん」として店員と会話が弾むなんてことはないだろうな。

はてなーの一生。

2chねらー

たまたま2ch系の紹介系サイトで話題にのぼっていたブログはてなを知る

はてな・・・?どうせブログサービス負け組だろ・・・」

「みんななんか頭良さそうなこと話してんな・・・話題のニュースもわかりやすいし、いい感じ」

ハイクに迷い込み、意味不明さのあまり二秒で逃げ出す

アルファブロガーすげぇ!俺もブロガーになろう!」

三日で飽きる

はてブなら簡単だし書き逃げできるから楽チンだお!痛ニュ死ね」

  • [はてな村民期]-------------------------------------

はてブで長文(といっても60,70文字程度)書いて☆集め

ぶっちゃけ、100文字程度で世の中を論じようなんてガキのやることだよな」

でも、今更ブログに戻るのは嫌なので増田で活動

だんだん虚しくなってくる

「そういえば、ハイクってあったよな・・・」

ハイクにはまる

飽きる

今更2chには戻れないので、はてな村で死んだように生きる

  • [10年後]------------------

FC2エロブログを書いて、広告収入を稼ぐ日々。

2008-02-25

生きるのには忍耐が必要よね。

何に対しての忍耐かはあえて言わない。

それを努力と呼ぶか、あるいは意志と、はたまた自由と。

わたしはどれだけ耐えればいいんだろう。

寄りかかってくる他人に、孤独の痛みに、孤独になりえない運命に。

人から離れれば離れるほど、人はわたしに寄ってくる。

わたしは独立してる。

ごめんね。あなたに依存なんてできない。

死ぬ事を禁止されたわたしの残り長い人生

わたしは耐え抜けるんだろうか。生き抜けるんだろうか。

この絶叫を、自らの血で生を世界に刻みつけながら、

こんな生きかたを続けられるのかな。不安なの。

実は、わたしはいつだって寄りかかってる。

この不安に、不安をかき消すための何かに。

寄りかかることによって、孤独でいられる。依存しなくていられる。

だから寄りかかってる。

足を、前に出さないと倒れてしまいそうなの。

前に、前に行かないと怖いの。

知ろうとしてる。世界を、自分を。

わたしは知に寄りかかってる。

畏怖さえ覚える、偉大な、最も美しい知に。

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん