はてなキーワード: 香具師とは
○ご飯
○調子
・はじめに
角川ゲームスが発売したミステリーアドベンチャーゲーム。
30代の中年男性が実家の片付けをしていると15年前の高校時代に行っていた女の子との文通の手紙を見つける、しかしそこには記憶にない11通目の手紙があった。
何事も全力で取り組む「マックス」を合言葉に、文通相手の正体を探るべく島根県に繰り出し、文通の中で紹介されていた彼女の友達に話を聞く。
という、高校時代の淡い青春の思い出を、中年男性が振り返る甘塩っぱい開始なのだけど、めちゃくちゃ変なゲームだった。
ストーリーは主に島根県を観光しつつ、15年前の文通相手の手紙に書かれていた友人達7名を探し出す前半パートと、彼らから真相を聞き出す後半パートに別れている。
・脅迫で進んでいく前半ート
インテリは美術館に行く、アナウンサーはおしゃべりが好き、デブは甘いものが好きなどなどの、一方的な思い込みで調査を開始し、文通相手の友人を探す。
その上で、身分を偽ったり嘘をつくことに躊躇がないため、関係者以外立ち入れない場所や、アポイントメントもサクサクと進んでいく。
それでいて探偵のように複数の名刺を持っているわけでも業界知識があるでもないので、すぐバレる。
これだけでも、中々に辛いのだけど、本質は調査が進み、ターゲットを見つけてから。
ゲームとしてはコマンド選択式のポイントアンドクリックのお馴染みのシステムで、証拠や証言を集めて、ターゲットが文通相手の友人であることを証明するという、ミステリ系ADVではかなり定番。
しかし、このゲーム独自のシステム主人公の何事も全力で取り組む姿勢マックスを象徴する、マックスモードのアクが強すぎる。
証拠とか証言を集めた上で、デカい声で相手の嫌がることを言って相手を諦めさせるシステム。
香具師のやることでしょ、と言いたくなる程に主人公が恫喝をする。
カツラであることを大声で指摘する、というのが最初のターゲットの攻略方法。
その後も、野球の試合での失策を嘲笑う、必死に頑張って痩せた元デブに対して過去の体型のことを執拗に弄る、犯罪者である父親を馬鹿にすると、ひたすらに相手の嫌がることをし続ける。
ゲームが進んでいくと、飲食店の中で血のように赤いジャムをばら撒いて見たり、ターゲット本人が開き直ったから娘にバラすぞと凄んでみたと、暴力を伴わないだけでやっていることが反社会的すぎる。
その上、主人公自身にはその自覚が全くなく、あっけらかんと友達ヅラしてみたり、なんで怒っているのか理解できないと嘯いてみたりしている。
所謂サイコパス的な描写が多く、登場人物達からもドン引きされている。
リアリティラインが定まっていないようで、SF、伝記、都市伝説などの超常現象が突然出てきて、突然終わる。
トゥルールートだけは現実的な要素だけで組み立てられているのだけど、それはそれで、その程度のよくあるすれ違いに、よくマックスモードで恫喝し続けたなとドン引きしてしまう。
・総じて文量が薄い
シナリオの中で起きた事象やキャラクタの感情の揺れ動きだけを眺めると、物語として成り立っていると思うし、これがアニメや映画などの映像であれば、演者の演技で補完できていたかなとも思う。
しかし、小説に近いADVというゲームのシステムでは、起きた事象の間を埋める文量が足りていなかったのだと感じた。
サイコパスのように見えるマックスモードも、混乱を極める結末も、作者が目指した味というよりは、単に作者がADVというゲームで遊んだときにどうなるかが想像できず、情報量が不足していたんじゃないかなあ。
・さいごに
割と散々な評価をしたが、シナリオ以外、立ち絵、一枚絵、BGM、背景、声優の演技、システムの快適さ辺りは文句はなかった。
メインヒロインの日高のり子さんは声だけのシーンが多いのに、ちゃんとビジュアルが浮かぶようなキャラクタ性を持った演技をしていて素晴らしい。
皆口裕子さんは演技をしている演技が求められる難しいシーンが多い中それを表現しつつ演技の外の素の顔も想像させる深さがあった。
井上喜久子さんはひたすらに可愛いキャラで、これがもうメロメロ。主人公の意味不明なマックスモードで虐められてるのが可哀想だった。
レジェンドだからすげえのは当たり前なんだけど、アニメやドラマCDと違ってユーザーのテンポに依存する分よりそこに耳が行くんだなあ、ってシナリオがつまらないからより思いました。