はてなキーワード: 狼煙とは
オマージュした。
https://anond.hatelabo.jp/20220313191005
私はフルタイム就業している主婦だ。料理なんぞとんと苦手だが、業務に上乗せで主婦を専任でやらされている。ここ20年、誰かがやらないといけないことだからやってきた。
やりたくてやってる訳じゃない。100%ただの善意、ボランティアである。
これまで色々なことがあった。
「都度アップデートなんて面倒臭いからやりたくない」「貴方が家に要る時間長いんだから定期的にやれば良いじゃない」
→お前のパソコンだ、お前が使うタイミングに合わせてアプデしろとか私はお前の奴隷じゃない。そもそもお前のアカウントで私がログインするのはおかしい。爆発しろ。
「私は嫁より稼いでいるから嫁が家のこと全部やればいい。アップデートなんて別にいらんでしょ。」
「嫁君、パソコン好きだったよね。これもあれもチャチャっとやっちゃってよ。」
→「好きではありません。仕事に必要だから勉強しただけです。やらないと機密情報が漏れるからセキュリティ対策してるだけです。道具です。夫さんはその机好きなんですか?(爆発しろ。)」
「この修理でそんなにお金かかるのおかしくない!?嫁部品買って修理してよ」
「嫁さんはパソコンできるからってみんなにちやほやされて良いよねー」
→代わってやるからお前がPTAにいけ、喜んで譲るから頼むからやってくれ。やらないなら黙るか爆発しろ。
6)知ってることを全部教えろ夫対応
「これはどうなってるの?あれはどうなってるの?分かんないオレに分かるように教えて。」
私は言いたい。パソコンは誰の命令でも聞く。キーボードを叩いた人間の立場など気にしない。
上下関係を二進法の世界に持ち込もうとするのはもうやめてくれ。語気を荒げて叱責してもパソコンは動かない。感情が無意味な世界に感情を持ち込む滑稽さをまず学べ。
そして私の静かな生活を脅かす奴は全員爆発しろ。定められたアプデやりたくない奴は端末を触るな。手書きと電話で仕事しろ。それも無理なら飛脚と狼煙で仕事しろ。それすら駄目ならお前が走れ。
40人以上が離党の準備?
実は、この騒動を発端に立民は一気に崩壊に向かう可能性がある。政治ジャーナリストの藤本順一氏が話す。
「すでに枝野幸男前代表を中心に40人以上が離党の準備を進めているようです。昨年の衆院選で140人以上も立民候補者が落選しましたが、その多くが今も支部長を務めており、財政負担が膨らんでいる。おまけに、泉新体制で枝野氏ら旧執行部の意見が通らなくなったので、落選議員というお荷物は立民に押し付け、選挙に強い議員だけで新党を立ち上げようという構想です」
分裂が表面化するのは参院選後とか。
「国民民主と都民ファーストの合流が実現すると、立民は厳しい。立民の支持母体である連合の芳野友子会長と連合東京の斉藤千秋事務局長、都民ファの荒木千陽代表は“女子会”仲間で、連合東京が国民民主を支持するのは既定路線なのです。参院選での票の激減が立民分裂の狼煙となるでしょう」
ブーメランも分裂もいつか来た道だが……’22年の立民から目が離せない!?
https://news.yahoo.co.jp/articles/8def08b7bb4b6845171f53d2e4d51d03e57720b1
近所のセブンイレブンから冷やしうどんが消えてしまって、私は悲しくなった。
夏の暑い時、温かいうどんやラーメンはどうしても食べづらいので、私は決まって「半熟たまごの冷やしぶっかけうどん」を食べていたのだ。
もしこの商品が売ってなかったら、類似品の「自家製揚げ玉の冷やしたぬきうどん」、または「ざるそば」を食べる。これが私の夏のルーティーンとなっていた。
私は冷やしうどんを3日に一度は食べていたはずなので、つまり身体を動かすエネルギーの20%ほどを冷やしうどんで補っていたことになる。
それが今、急に消えてしまったのだ。
私は、これは革命が起きたと思った。
外は暑い。9月はまだ夏の熱気を残している。人々は冷やしうどんを求めている。じきに怒りに身を任せた人々が反抗の狼煙を上げるだろう。私も参加しなければ。
私の心の中に沸々とした怒りが湧いてきた。そしてその怒りはアイス棚にモナ王を発見したことで急速に消えていった。
ラーメンやカレーやパスタが並ぶ棚から「お出汁のきいたきつねうどん」、アイス棚からモナ王を2つ手に取った。今日はこれにしようと思った。
温かいうどんを食べ、その後クーラーを効かせながらアイスを食べる。
体重は前よりも少し増えるだろうか?。エレベーターではなく階段を使えばトントンくらいにはなるだろう。
変わることは前に進むことと同義なのだ。それが自分の意思かどうかは些細なことなのだろう。
会計を済ませて外に出ると、ちょうど夕方5時のチャイムが鳴っていた。哀愁という言葉が脳裏をよぎった。これが秋なのだろうか。
自転車に乗っている人も、歩道を歩いているサラリーマンも浮かない顔をしていた。
おそらく私も同じ表情をしているだろう。信号が青に変わったのでみんな渡っていく。
冷やしうどんがコンビニから無くなったことも、まるで何でもないように人々は過ごしているけれど
それでもいまだに街はなんだか落ち着かないような気がしていた。
「最年少防衛」「最年少九段」。速報で次々と流れてくる文字は、間違いなく、将棋界の歴史に残る偉業だった。しかし、不思議と感情は湧き起こらず、それはただの文字の羅列にしか見えなかった。
「渡辺明の敗北」。代わりに浮かんだその文字は、頭から身体を巡り、あっという間に全身を蝕んでいった。
藤井聡太に初タイトルである「棋聖」を献上してから1年。渡辺は、本戦を勝ち上がり、再びタイトル戦の舞台に戻ってきた。あの夏から1年。両者は立場を変えて再び相まみえた。「現役最強決定戦」との呼び声も高く、戦前のボルテージは最高潮に達した。
しかし、結果は渡辺にとって非情なものに終わる。0勝3敗。自身39回目のタイトル戦にして、初のストレート負けである。昨年圧倒的な研究で藤井に一矢を報いた第3局で、今度はその矢が届かなかった。復位を期し、1年ぶりに臨んだ大舞台での再戦は、梅雨の黒雲に呑まれるように進行し、夏を迎えないままに幕を閉じた。
「どう負けようと意味がない」初のストレート負けの感想を聞かれた渡辺は、吐き捨てるようにそう答えた。フルセットも、ストレート負けも、番勝負の結果としては変わらない。結果主義者の渡辺らしく、恐らく包み隠さぬ本音なのだろうと思った。
しかし、観ている者はそうもいかないのである。「渡辺明のタイトル戦ストレート負け」。登場39回目にして初めて見せつけられたそれを、はいそうですかと受け入れられるわけがない。渡辺本人が切り捨てるものに過剰な「意味」を持たせるのは愚かしいが、そうせざるを得ないのである。「たまたま」星が偏ってタイトル戦でストレート負けを喫する男ではない。そのことは、自分の全てを懸けて断言してもいい。だからこそ、この結果は重く、厳然としたものとして突き付けられている。まだ、受け入れることはできそうにない。
1年前に失冠した時、渡辺は完敗を認めつつも、最後には前向きな発言をした。今回は藤井聡太の情報がほとんどなかったが、番勝負を指して分かったことがある。だから次は「普通」にやる―そう述べたのである。この発言には説得力があった。渡辺明は、「情報」で勝ってきた棋士だからである。最初は得体の知れない相手であっても、戦ううちに相手を知り、習得していく。そうやってタイトル戦の舞台で何人もの後輩棋士を沈めてきた。実績があるからこそ、この発言には説得力があり、そして藤井との再戦にこれ以上ないくらいの期待を持たせた。有言実行とばかり、厳しい対戦相手たちを下し、再び挑戦者としてタイトル戦の舞台に戻ってきたことはさすがとしかいいようがない。だからこそ、ボルテージは最高潮に高まり、観る者は「現役最強決定戦」と謳った。
開幕前のインタビューで、渡辺は藤井への意識を強く口にした。そして、「(今後の)棋士人生を考える意味でも大きな鍵になる」そのように述べた。これは単なる1タイトル戦ではない。渡辺明が今後どれだけ最前線で戦い続けられるのか、そのことを示す戦いになると、渡辺自身が述べた。
その「棋士人生を懸けた」戦いが、蓋を開けてみれば厳しい結果となる。万全の研究をぶつけ、自身が一番得意とする勝ちパターンで上回られた第1局。先に藤井の残り時間を3分に追い込みながら、そのあとで全く持ち時間が減らない、「永遠の3分」を突き付けられた第2局。藤井聡太の底知れない中終盤力に呑まれ、渡辺はあっという間に土俵際に追い詰められた。1年前の番勝負で、渡辺は藤井の「情報」を得た。しかし、用意周到な渡辺の準備を、信じられない速度で進化する藤井が上回っていたのかもしれない。戦前に述べた言葉は、もっとも厳しい形で、渡辺自身に降りかかっていた。
追い詰められた第3局。戦型は矢倉の最新型となった。激しい展開ながら、渡辺の指し手は早かった。これは研究が行き届いている証左である。持ち時間に大きな差を付ける理想的な展開になるが、昼食休憩明け、藤井の金寄りが控室も驚く意表の一手。難解な局面を突き付けられ、渡辺、長考に沈む。
感情を鎮めるように、淡々と書いてきたつもりだったが、それはここで止める。トップ棋士による読みのぶつけ合いは想像を絶しており、盤上の表面だけ見たところで分かることは限られている。二人がどれだけ読みを深め、盤の底で思索の海に沈んでいるのか、はっきり言って「分からない」のである。
このような難解な将棋で、ファンができることは一つしかない。研究を外されたのか、長考に沈む渡辺。89分の考慮は非常に長く、言いようのない不安と恐怖があった。意を決した渡辺、角を切り飛ばす。その後も続くねじり合いから69手目、今度は決断の飛車切りである。風雲急を告げる「勝ちにいった手」だが、直後に渡辺は再び長考に沈んだ。残り時間は44分。渡辺はそのほとんど、40分を費やして角を打った。ここまで時間を費やし、渡辺はどこまで読んでいるのか。勝ちまで読み切ったのか、それとも予定外の長考か。分からない。何も分からない。分からないから、ファンにできることは一つしかない。信じるしかないのである。藤井聡太相手に本当に「勝ち筋」はあるのか。吐きそうになりながらも、渡辺がそれを掴みにいっていると、手繰り寄せにいっていると、ただひたすら、信じるしかない。こんな時、将棋ファンとはどこまでも無力である。分からないものを前にして、ただ信じるしかない。声援を送っても渡辺に届くわけではないから、ひたすら祈ることしかできない。はるか高みで戦う孤独な棋士に、ファンができることはただ一つ、信じることしかない。
詰むや詰まざるや、難解な最終盤となった。藤井が機を捉えて渡辺玉に迫る。駒を渡す怖い変化だが、果たして藤井の玉は大丈夫なのか。分からない、本当に分からない。局面が少し進んだ。藤井の玉が上に逃れ、渡辺、どうやら足りない。「信じたくない」そう思ったところで、全てを打ち砕くように、藤井が華麗な決め手を放つ。
「△7一飛」。馬が利いているところに飛車を捨てる、普通はあり得ない手である。しかし、この飛車を取ると渡辺の玉が詰まされてしまう。あまりにも、あまりにも華麗な決め手であった。分からない局面が延々と続いたこの将棋だったが、最後にようやく、この将棋はもう続かないのだということが分かった。この華麗な一手を盤上に出現させられては、もう指す手がない。渡辺、斜め上を見上げて飛車を取る。首を差し出し、棋聖戦五番勝負が終幕した瞬間だった。
まだ、冷静にこのシリーズを受け止めることができない。「信じたくない」率直に言うと、そうなのかもしれない。しかし、この結果は動かない。この結果を誰よりも重く受け止めるのは、結果主義者の渡辺自身であると、そのこともよく分かっている。
渡辺明は、この敗北をどう受け止めるのか。そして戦前に自らが述べた「棋士人生」にどのような道筋を立てるのか。戦いを終えたばかりの今、それはまだ分からないが、ファンにできることは相も変わらず一つだけである。渡辺があげるのは、白旗ではなく、反撃の狼煙であると。そう信じるしかない。
<プロローグ>
その男は一度死んだはずだった。
満月は徐々に厚い雲に覆われ、辺りを漆黒の闇に塗りかえていった。
男の傍らには、無残にひしゃげたラップトップの残骸があった。
一瞬の激しい通り雨が降ると、ラップトップは怪しげな閃光を放ち、男はその刹那小刻みに身体を揺らした。
一度は止まってしまった男の鼓動が再び刻み始める。
男は自分の置かれている状況を最初は理解出来なかったが、身体中の痛みがそれを思い出させてくれた。
男の視界の先には数刻前に彷徨っていた山道があったが、それは既に崩壊して形を留めていなかった。
ーーーぼくは、復讐してやる……
ーーーぼくを馬鹿にした全てに……
男はゆっくりと動きだすと、拾ったハンチング帽を大事そうに抱え、闇の中に消えていった。
厚い雲が晴れた満月は、紅く鈍い光を放っていた。
つづく
まだ飲み続けているのは、NPO・TWOれいほくのスタッフ里木だった。
NPOは先日代表理事が殺害されたばかりだったが、何事もなかったかのように平常運転だった。
ーーーくそ、なんでこんなとこに俺は居るんだ?
ーーーちょっと夜風にでもあたるか。
そう考えてシェアハウスの外に出た。
周囲には他に何もない。
このど田舎の暮らしは最初こそ楽しかったが、段々と生産性のない連中との生活が嫌になりつつあった。
玄関の外階段に腰を掛けると、ポケットから煙草を取り出してジッポーで火を着けた。
暗闇に一筋の白い狼煙が上がると、背後に人の気配を感じた。
里木は振り返らず、声を掛けようとしたその刹那、背中に鋭い痛みを感じた。
熱く焼けるような痛みが次第に広がり、続け様に肩、腕、首筋と刺すような激痛が走る。
ーーーな、なんだ、何が起こってる?!
彼は碌に抵抗する暇も与えられないまま、階段から無様に転げ落ちた。
転げ落ちながら仰向けになった彼は、初めて背後の主の姿を捉えた。
部屋からの逆光で影となった背後の主の顔は、深く被られた帽子でよく見えなかった。
そして、今まさに影は鎌のようなものを振り降ろそうとしていた。
つづく
彼女は目覚めると里木が居ない事には気づいたが、普通に家に戻って寝たのだろうと思い、不思議に思わなかった。
リビングには、NPO職員の森と石渡、そしてムツミの3人だけだった。
森と石渡の2人は床に転がって寝息を立てていた。
シェアハウスにはムツミ以外に3人の住人がかつてはいたのだが、NPOの代表理事の谷野が惨殺された事件後しばらくして、事件のショックからかムツミ以外全員、シェアハウスを出て行った。
ムツミも一度は去ろうとしたが、NPOの皆が余りにも不憫だったので、一人残ったのだった。
彼女が偶然にも遺体を発見したのは、起きて自室に戻ろうとした時に、ふと玄関の扉を見ると鍵が掛かっていたからだった。
扉は両開きの二枚扉で、鍵は二枚扉の合わせ目に取り付ける閂状の鉄の棒が装置から飛び出るタイプである。
その鍵は遠くからでも開閉がわかるように開いていると青に、閉まっていると赤に光るようになっていた。
その鍵が赤く光っていた。
彼女は、里木はここの鍵は持っていないから外に出たなら鍵が掛かっているのはおかしいと思った。
彼女が玄関の鍵を開けて外に出た瞬間、真っ赤な階段と恨めしそうに天を仰いで絶命している里木の姿を捉えて、あの黒い虫を見つけた時のように悲鳴をあげた。
つづく
遺体の検死や現場の捜査が行われ、事件当時にシェアハウスに居たムツミ達三人は、リビングに集められ事情聴取が行われた。
当夜は三人共に泥酔してつぶれてしまったため、当然ながらアリバイもなかった。
「そう言えば、玄関前に防犯カメラがあります。もしかしたら何か映っているかも。」
森がそういうと、玄関内にあるボックスに入った装置からデータを取り出し自分のラップトップで映像を再生した。
カメラは玄関前のアプローチを映したものだったので犯行の瞬間は捉えていなかったが、真夜中に後ろ姿の人物が一瞬映っていた。
ハンチング帽の男、概念隼人は数日前から行方が分からなくなっていた。
クラインガルテンとその周辺を探したところ、山道が崩落した下に彼のものらしき壊れたラップトップが残されていた。
しかし、そこには彼の姿はなかった。
現場周辺の数日の捜索も虚しく、一向に足取りは掴めなかった。
つづく
<モノローグ>
片一方は鎌を振り上げ、もう一方に襲いかかっていた。
しばらく攻防が続いていたが、数分の後には抵抗も虚しく、襲われた側の影が無残に崩れ去った。
戦いに勝利した影は、相手が絶命したのを確認した後、物言わぬモノとなったそれを引きずり、近くの崖から落とした。
崖下には川が流れ、その濁流にかつて人だったモノは呑まれ消えていった。
争いの中で落ちたハンチング帽を拾い上げた鎌を携えた影は、それを大事そうに抱えて急いで山の中を駆け出した。
辺りは再び静寂に包まれた。
つづく
シェアハウスの面々が解放され、捜査員が引き上げた時にはもう午後8時を回っていた。
彼らは遅い夕食として作り置きのカレーライスを食べ、落ち着いた後も、なんとなくリビングに残っていた。
暫くは三人とも黙ったままだったが、森が口火を切って話し始めた。
「あの概念さんが里木さんを殺すなんて信じられない。確かに変わった人だったけど、人を殺すような度胸とかなさそうな人だったし。
ムツミが少し考えて切り出した。
「あの、気になってることがあるんです。朝、私が気付いた時に玄関は施錠されてたのですよね。おかしいと思いませんか?」
石渡が訝しげに聞く。
「なぜ?」
「里木さんは鍵を持ってないのにどうやって外に出たの?」
あっと言って、森と石渡は顔を見合わせた。
「何のために?また、ここに来るため?
あと、概念さんはどうやって鍵を手に入れたの?私たちがいる隙にってこと?」
「里木さんが持って出たのかな。物騒だし施錠しておこうとして。」
「それでも、概念さんが持ち去る理由がないと思う。私たちも殺すつもりなら分かるけど。」
ムツミはそう言って背筋が凍るのを感じた。
つづく
シェアハウスのリビングでの話し合いは、結論が出ないまま御開きとなった。
遅い時間だったので、森と石渡もシェアハウスの部屋に泊まることになった。
ムツミは、凶器を持ち去られていることを考えると、やはり里木が防犯のために外から鍵を掛けた後、概念に殺されて鍵を奪われたと考えるのが妥当だとは思った。
だが、少し引っかかることはあった。
そこに辿り着きそうな矢先、焦げる匂いが漂ってきた。
おかしいーーー
彼女は鍵を開けて外に出ようとしたが、扉はビクとも動かなかった。
慌てて扉を激しく叩く。
大声で叫んだが、誰からの応答もなかった。
そうこうしているうちに、熱い空気と火花が部屋に舞い込んできた。
やはり燃えている!
つづく
<作者からの挑戦状>
ここまでの話で犯人を推理する全ての手がかりは与えられている。
また、そう考える根拠はどこか。
また、シェアハウスの失火は犯人の放火によるものであり、里木の殺人の犯人と同一人物である。
健闘を祈る。
<翌日の高○新聞 朝刊>
X日未明、本山町のシェアハウス「つんく」木造二階建てyyyy平方メートルが全焼し、焼け跡から2人の遺体が見つかったほか、男性1人が軽傷を負った。
軽傷を負った森さんの話によると、遺体は
石渡文太さんと永島ムツミさんと見られ、県警では現在身元の確認を急いでいる。
<森の回想>
厚い雲が晴れた満月は、紅く鈍い光を放っていた。
森は、ハンチング帽の男に悪態をつきながら、後をゆっくりと追った。
ーーーぼくは、復讐してやる……
ーーーぼくを馬鹿にした全てに……
ーーー先ずは、あんただよ!
「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟むねばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼めもさめるような、青宝玉サファイアと黄玉トパースの大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ進んで来、間もなく二つのはじは、重なり合って、きれいな緑いろの両面凸とつレンズのかたちをつくり、それもだんだん、まん中がふくらみ出して、とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来ましたので、緑の中心と黄いろな明るい環わとができました。それがまただんだん横へ外それて、前のレンズの形を逆に繰くり返し、とうとうすっとはなれて、サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風になりました。銀河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒い測候所が、睡ねむっているように、しずかによこたわったのです。
「あれは、水の速さをはかる器械です。水も……。」鳥捕とりとりが云いかけたとき、
「切符を拝見いたします。」三人の席の横に、赤い帽子ぼうしをかぶったせいの高い車掌しゃしょうが、いつかまっすぐに立っていて云いました。鳥捕りは、だまってかくしから、小さな紙きれを出しました。車掌はちょっと見て、すぐ眼をそらして、(あなた方のは?)というように、指をうごかしながら、手をジョバンニたちの方へ出しました。
「さあ、」ジョバンニは困って、もじもじしていましたら、カムパネルラは、わけもないという風で、小さな鼠ねずみいろの切符を出しました。ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のポケットにでも、入っていたかとおもいながら、手を入れて見ましたら、何か大きな畳たたんだ紙きれにあたりました。こんなもの入っていたろうかと思って、急いで出してみましたら、それは四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑いろの紙でした。車掌が手を出しているもんですから何でも構わない、やっちまえと思って渡しましたら、車掌はまっすぐに立ち直って叮寧ていねいにそれを開いて見ていました。そして読みながら上着のぼたんやなんかしきりに直したりしていましたし燈台看守も下からそれを熱心にのぞいていましたから、ジョバンニはたしかにあれは証明書か何かだったと考えて少し胸が熱くなるような気がしました。
「これは三次空間の方からお持ちになったのですか。」車掌がたずねました。
「何だかわかりません。」もう大丈夫だいじょうぶだと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。
「よろしゅうございます。南十字サウザンクロスへ着きますのは、次の第三時ころになります。」車掌は紙をジョバンニに渡して向うへ行きました。
カムパネルラは、その紙切れが何だったか待ち兼ねたというように急いでのぞきこみました。ジョバンニも全く早く見たかったのです。ところがそれはいちめん黒い唐草からくさのような模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したものでだまって見ていると何だかその中へ吸い込こまれてしまうような気がするのでした。すると鳥捕りが横からちらっとそれを見てあわてたように云いました。
「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想げんそう第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行ける筈はずでさあ、あなた方大したもんですね。」
「何だかわかりません。」ジョバンニが赤くなって答えながらそれを又また畳んでかくしに入れました。そしてきまりが悪いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめていましたが、その鳥捕りの時々大したもんだというようにちらちらこっちを見ているのがぼんやりわかりました。
「もうじき鷲わしの停車場だよ。」カムパネルラが向う岸の、三つならんだ小さな青じろい三角標と地図とを見較みくらべて云いました。
ジョバンニはなんだかわけもわからずににわかにとなりの鳥捕りが気の毒でたまらなくなりました。鷺さぎをつかまえてせいせいしたとよろこんだり、白いきれでそれをくるくる包んだり、ひとの切符をびっくりしたように横目で見てあわててほめだしたり、そんなことを一一考えていると、もうその見ず知らずの鳥捕りのために、ジョバンニの持っているものでも食べるものでもなんでもやってしまいたい、もうこの人のほんとうの幸さいわいになるなら自分があの光る天の川の河原かわらに立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいというような気がして、どうしてももう黙だまっていられなくなりました。ほんとうにあなたのほしいものは一体何ですか、と訊きこうとして、それではあんまり出し抜ぬけだから、どうしようかと考えて振ふり返って見ましたら、そこにはもうあの鳥捕りが居ませんでした。網棚あみだなの上には白い荷物も見えなかったのです。また窓の外で足をふんばってそらを見上げて鷺を捕る支度したくをしているのかと思って、急いでそっちを見ましたが、外はいちめんのうつくしい砂子と白いすすきの波ばかり、あの鳥捕りの広いせなかも尖とがった帽子も見えませんでした。
「あの人どこへ行ったろう。」カムパネルラもぼんやりそう云っていました。
「どこへ行ったろう。一体どこでまたあうのだろう。僕ぼくはどうしても少しあの人に物を言わなかったろう。」
「ああ、僕もそう思っているよ。」
「僕はあの人が邪魔じゃまなような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」ジョバンニはこんな変てこな気もちは、ほんとうにはじめてだし、こんなこと今まで云ったこともないと思いました。
「何だか苹果りんごの匂においがする。僕いま苹果のこと考えたためだろうか。」カムパネルラが不思議そうにあたりを見まわしました。
「ほんとうに苹果の匂だよ。それから野茨のいばらの匂もする。」ジョバンニもそこらを見ましたがやっぱりそれは窓からでも入って来るらしいのでした。いま秋だから野茨の花の匂のする筈はないとジョバンニは思いました。
そしたら俄にわかにそこに、つやつやした黒い髪かみの六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。隣となりには黒い洋服をきちんと着たせいの高い青年が一ぱいに風に吹ふかれているけやきの木のような姿勢で、男の子の手をしっかりひいて立っていました。
「あら、ここどこでしょう。まあ、きれいだわ。」青年のうしろにもひとり十二ばかりの眼の茶いろな可愛かあいらしい女の子が黒い外套がいとうを着て青年の腕うでにすがって不思議そうに窓の外を見ているのでした。
「ああ、ここはランカシャイヤだ。いや、コンネクテカット州だ。いや、ああ、ぼくたちはそらへ来たのだ。わたしたちは天へ行くのです。ごらんなさい。あのしるしは天上のしるしです。もうなんにもこわいことありません。わたくしたちは神さまに召めされているのです。」黒服の青年はよろこびにかがやいてその女の子に云いいました。けれどもなぜかまた額に深く皺しわを刻んで、それに大へんつかれているらしく、無理に笑いながら男の子をジョバンニのとなりに座すわらせました。
それから女の子にやさしくカムパネルラのとなりの席を指さしました。女の子はすなおにそこへ座って、きちんと両手を組み合せました。
「ぼくおおねえさんのとこへ行くんだよう。」腰掛こしかけたばかりの男の子は顔を変にして燈台看守の向うの席に座ったばかりの青年に云いました。青年は何とも云えず悲しそうな顔をして、じっとその子の、ちぢれてぬれた頭を見ました。女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。
「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。それよりも、おっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみんなと手をつないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたりほんとうに待って心配していらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。」
「うん、だけど僕、船に乗らなけぁよかったなあ。」
「ええ、けれど、ごらんなさい、そら、どうです、あの立派な川、ね、あすこはあの夏中、ツインクル、ツインクル、リトル、スター をうたってやすむとき、いつも窓からぼんやり白く見えていたでしょう。あすこですよ。ね、きれいでしょう、あんなに光っています。」
泣いていた姉もハンケチで眼をふいて外を見ました。青年は教えるようにそっと姉弟にまた云いました。
「わたしたちはもうなんにもかなしいことないのです。わたしたちはこんないいとこを旅して、じき神さまのとこへ行きます。そこならもうほんとうに明るくて匂がよくて立派な人たちでいっぱいです。そしてわたしたちの代りにボートへ乗れた人たちは、きっとみんな助けられて、心配して待っているめいめいのお父さんやお母さんや自分のお家へやら行くのです。さあ、もうじきですから元気を出しておもしろくうたって行きましょう。」青年は男の子のぬれたような黒い髪をなで、みんなを慰なぐさめながら、自分もだんだん顔いろがかがやいて来ました。
「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」さっきの燈台看守がやっと少しわかったように青年にたずねました。青年はかすかにわらいました。
「いえ、氷山にぶっつかって船が沈しずみましてね、わたしたちはこちらのお父さんが急な用で二ヶ月前一足さきに本国へお帰りになったのであとから発たったのです。私は大学へはいっていて、家庭教師にやとわれていたのです。ところがちょうど十二日目、今日か昨日きのうのあたりです、船が氷山にぶっつかって一ぺんに傾かたむきもう沈みかけました。月のあかりはどこかぼんやりありましたが、霧きりが非常に深かったのです。ところがボートは左舷さげんの方半分はもうだめになっていましたから、とてもみんなは乗り切らないのです。もうそのうちにも船は沈みますし、私は必死となって、どうか小さな人たちを乗せて下さいと叫さけびました。近くの人たちはすぐみちを開いてそして子供たちのために祈いのって呉くれました。けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子どもたちや親たちやなんか居て、とても押おしのける勇気がなかったのです。それでもわたくしはどうしてもこの方たちをお助けするのが私の義務だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました。けれどもまたそんなにして助けてあげるよりはこのまま神のお前にみんなで行く方がほんとうにこの方たちの幸福だとも思いました。それからまたその神にそむく罪はわたくしひとりでしょってぜひとも助けてあげようと思いました。けれどもどうして見ているとそれができないのでした。子どもらばかりボートの中へはなしてやってお母さんが狂気きょうきのようにキスを送りお父さんがかなしいのをじっとこらえてまっすぐに立っているなどとてももう腸はらわたもちぎれるようでした。そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟かくごしてこの人たち二人を抱だいて、浮うかべるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。誰たれが投げたかライフブイが一つ飛んで来ましたけれども滑すべってずうっと向うへ行ってしまいました。私は一生けん命で甲板かんぱんの格子こうしになったとこをはなして、三人それにしっかりとりつきました。どこからともなく〔約二字分空白〕番の声があがりました。たちまちみんなはいろいろな国語で一ぺんにそれをうたいました。そのとき俄にわかに大きな音がして私たちは水に落ちもう渦うずに入ったと思いながらしっかりこの人たちをだいてそれからぼうっとしたと思ったらもうここへ来ていたのです。この方たちのお母さんは一昨年没なくなられました。ええボートはきっと助かったにちがいありません、何せよほど熟練な水夫たちが漕こいですばやく船からはなれていましたから。」
そこらから小さないのりの声が聞えジョバンニもカムパネルラもいままで忘れていたいろいろのことをぼんやり思い出して眼めが熱くなりました。
(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかったろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船に乗って、風や凍こおりつく潮水や、烈はげしい寒さとたたかって、たれかが一生けんめいはたらいている。ぼくはそのひとにほんとうに気の毒でそしてすまないような気がする。ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。)ジョバンニは首を垂れて、すっかりふさぎ込こんでしまいました。
「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠とうげの上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」
燈台守がなぐさめていました。
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」
青年が祈るようにそう答えました。
そしてあの姉弟きょうだいはもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡ねむっていました。さっきのあのはだしだった足にはいつか白い柔やわらかな靴くつをはいていたのです。
ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光りんこうの川の岸を進みました。向うの方の窓を見ると、野原はまるで幻燈げんとうのようでした。百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙のろしのようなものが、かわるがわるきれいな桔梗ききょういろのそらにうちあげられるのでした。じつにそのすきとおった奇麗きれいな風は、ばらの匂においでいっぱいでした。
「いかがですか。こういう苹果りんごはおはじめてでしょう。」向うの席の燈台看守がいつか黄金きんと紅でうつくしくいろどられた大きな苹果を落さないように両手で膝ひざの上にかかえていました。
「おや、どっから来たのですか。立派ですねえ。ここらではこんな苹果ができるのですか。」青年はほんとうにびっくりしたらしく燈台看守の両手にかかえられた一もりの苹果を眼を細くしたり首をまげたりしながらわれを忘れてながめていました。
「いや、まあおとり下さい。どうか、まあおとり下さい。」
「さあ、向うの坊ぼっちゃんがた。いかがですか。おとり下さい。」
ジョバンニは坊ちゃんといわれたのですこししゃくにさわってだまっていましたがカムパネルラは
「ありがとう、」と云いました。すると青年は自分でとって一つずつ二人に送ってよこしましたのでジョバンニも立ってありがとうと云いました。
燈台看守はやっと両腕りょううでがあいたのでこんどは自分で一つずつ睡っている姉弟の膝にそっと置きました。
「どうもありがとう。どこでできるのですか。こんな立派な苹果は。」
青年はつくづく見ながら云いました。
「この辺ではもちろん農業はいたしますけれども大ていひとりでにいいものができるような約束やくそくになって居おります。農業だってそんなに骨は折れはしません。たいてい自分の望む種子たねさえ播まけばひとりでにどんどんできます。米だってパシフィック辺のように殻からもないし十倍も大きくて匂もいいのです。けれどもあなたがたのいらっしゃる方なら農業はもうありません。苹果だってお菓子だってかすが少しもありませんからみんなそのひとそのひとによってちがったわずかのいいかおりになって毛あなからちらけてしまうのです。」
「ああぼくいまお母さんの夢ゆめをみていたよ。お母さんがね立派な戸棚とだなや本のあるとこに居てね、ぼくの方を見て手をだしてにこにこにこにこわらったよ。ぼくおっかさん。りんごをひろってきてあげましょうか云ったら眼がさめちゃった。ああここさっきの汽車のなかだねえ。」
「その苹果りんごがそこにあります。このおじさんにいただいたのですよ。」青年が云いました。
「ありがとうおじさん。おや、かおるねえさんまだねてるねえ、ぼくおこしてやろう。ねえさん。ごらん、りんごをもらったよ。おきてごらん。」
姉はわらって眼をさましまぶしそうに両手を眼にあててそれから苹果を見ました。男の子はまるでパイを喰たべるようにもうそれを喰べていました、また折角せっかく剥むいたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜ぬきのような形になって床ゆかへ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。
川下の向う岸に青く茂しげった大きな林が見え、その枝えだには熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、その林のまん中に高い高い三角標が立って、森の中からはオーケストラベルやジロフォンにまじって何とも云えずきれいな音いろが、とけるように浸しみるように風につれて流れて来るのでした。
だまってその譜ふを聞いていると、そこらにいちめん黄いろやうすい緑の明るい野原か敷物かがひろがり、またまっ白な蝋ろうのような露つゆが太陽の面を擦かすめて行くように思われました。
「まあ、あの烏からす。」カムパネルラのとなりのかおると呼ばれた女の子が叫びました。
「からすでない。みんなかささぎだ。」カムパネルラがまた何気なく叱しかるように叫びましたので、ジョバンニはまた思わず笑い、女の子はきまり悪そうにしました。まったく河原かわらの青じろいあかりの上に、黒い鳥がたくさんたくさんいっぱいに列になってとまってじっと川の微光びこうを受けているのでした。
「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすように云いました。
向うの青い森の中の三角標はすっかり汽車の正面に来ました。そのとき汽車のずうっとうしろの方からあの聞きなれた〔約二字分空白〕番の讃美歌さんびかのふしが聞えてきました。よほどの人数で合唱しているらしいのでした。青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまた座すわりました。かおる子はハンケチを顔にあててしまいました。ジョバンニまで何だか鼻が変になりました。けれどもいつともなく誰たれともなくその歌は歌い出されだんだんはっきり強くなりました。思わずジョバンニもカムパネルラも一緒いっしょにうたい出したのです。
そして青い橄欖かんらんの森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の音にすり耗へらされてずうっとかすかになりました。
「あ孔雀くじゃくが居るよ。」
「ええたくさん居たわ。」女の子がこたえました。
ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の反射を見ました。
「そうだ、孔雀の声だってさっき聞えた。」カムパネルラがかおる子に云いいました。
「ええ、三十疋ぴきぐらいはたしかに居たわ。ハープのように聞えたのはみんな孔雀よ。」女の子が答えました。ジョバンニは俄にわかに何とも云えずかなしい気がして思わず
「カムパネルラ、ここからはねおりて遊んで行こうよ。」とこわい顔をして云おうとしたくらいでした。
川は二つにわかれました。そのまっくらな島のまん中に高い高いやぐらが一つ組まれてその上に一人の寛ゆるい服を着て赤い帽子ぼうしをかぶった男が立っていました。そして両手に赤と青の旗をもってそらを見上げて信号しているのでした。ジョバンニが見ている間その人はしきりに赤い旗をふっていましたが俄かに赤旗をおろしてうしろにかくすようにし青い旗を高く高くあげてまるでオーケストラの指揮者のように烈はげしく振ふりました。すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまりも鉄砲丸てっぽうだまのように川の向うの方へ飛んで行くのでした。ジョバンニは思わず窓からからだを半分出してそっちを見あげました。美しい美しい桔梗ききょういろのがらんとした空の下を実に何万という小さな鳥どもが幾組いくくみも幾組もめいめいせわしくせわしく鳴いて通って行くのでした。
「鳥が飛んで行くな。」ジョバンニが窓の外で云いました。
「どら、」カムパネルラもそらを見ました。そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は俄かに赤い旗をあげて狂気きょうきのようにふりうごかしました。するとぴたっと鳥の群は通らなくなりそれと同時にぴしゃぁんという潰つぶれたような音が川下の方で起ってそれからしばらくしいんとしました。と思ったらあの赤帽の信号手がまた青い旗をふって叫さけんでいたのです。
「いまこそわたれわたり鳥、いまこそわたれわたり鳥。」その声もはっきり聞えました。それといっしょにまた幾万という鳥の群がそらをまっすぐにかけたのです。二人の顔を出しているまん中の窓からあの女の子が顔を出して美しい頬ほほをかがやかせながらそらを仰あおぎました。
「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと。」女の子はジョバンニにはなしかけましたけれどもジョバンニは生意気ないやだいと思いながらだまって口をむすんでそらを見あげていました。女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻もどりました。カムパネルラが気の毒そうに窓から顔を引っ込こめて地図を見ていました。
「あの人鳥へ教えてるんでしょうか。」女の子がそっとカムパネルラにたずねました。
「わたり鳥へ信号してるんです。きっとどこからかのろしがあがるためでしょう。」カムパネルラが少しおぼつかなそうに答えました。そして車の中はしぃんとなりました。ジョバンニはもう頭を引っ込めたかったのですけれども明るいとこへ顔を出すのがつらかったのでだまってこらえてそのまま立って口笛くちぶえを吹ふいていました。
(どうして僕ぼくはこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)ジョバンニは熱ほてって痛いあたまを両手で押おさえるようにしてそっちの方を見ました。(あ Permalink | 記事への反応(0) | 22:20
「トランス女性にもシス女性(生物学的女性)と同じ女性専用施設(例:女子トイレ)を使う権利があるか?」という論争の参加者について、「男性器を持つトランスは女子トイレを使うな」と言うトランス排除ラディフェミ(TERF)の方が社会階層が低くて性犯罪被害に遭いやすいから女性専用施設に男体持ちが入って来ることに危機感を覚えているのではないかな?
職場が入館セキュリティも無い雑居ビルだったり、子供の遊び場が近所の公園だったり、休日はショッピングモールに出かけたり……つまり女子トイレで獲物を待ち構えるような性犯罪者が身近にいるかもしれない環境で暮らしているというわけだ。
野良のツイフェミが大半のTERFに比べて、トランス擁護派の方が高い教育を受けている傾向がある。
ジェンダー専門でなくても学者だったり留学経験者だったりで、主張も論理的だ。
(というか社会構築主義なジェンダー論を展開したらトランス女性とシス女性に同じ権利を与えるしかないだろう。フェミニズム的に正しいのはこっち)
トランス擁護派は治安の良い地域で暮らしセキュリティのしっかりした職場で働いているから「女子トイレの個室に自称トランスの男性性犯罪者が侵入する可能性が高まる」と主張するTERFの危機感が被害妄想にしか思えないのでは?
トランス擁護派にはTERFの主張は「ほとんど起こりえない可能性を挙げて差別を正当化する、まるで『男性特権』を手放そうとしない反フェミニスト男性のような言い分」にしか聞こえないのかもしれない。
移民が隣に引っ越してきて迷惑を受ける可能性の高い低所得層ほど移民反対になり、移民が来ない地価の高い地域に住む高所得層ほど移民賛成になるのと同じ構造だ。
JKローリングが偉いのは、ハリポタで成功して大金持ちになった今でも、かつての自分と同じく身近な性暴力に怯えるTERFの側に付いて、女装殺人犯小説という反撃の狼煙を上げたことだ。
これは階級闘争だよ。
もうあとほんの少しでも衝撃がきたら、心が根元からボッキリいってしまう気がする。
だから、まずは自分がやろうやろうと思っていたことを今日から継続して行おうと思う。
三日坊主なきらいがあるので継続できない可能性もあるが、とにかくやる。
逃げ場がない。作らねばなるまい。
ずっとやりたいと思っていたことを蔑ろにして、毎日毎日心をすり減らして、
洗い物する気力も料理する気力も、やりたいゲームをする気力もなく、
買ってきた弁当なり総菜なり食って寝るだけ。
もう少し寝れると思っても目は冴え、横になっているうちに準備する時間になる。
シャワー浴びて弁当詰めて、(最近は上記の通り晩飯作る気力すらないので冷食か諦めてスーパーで買う)
8時前には家を出る。
最近だと家に着くのはそこからまるっと12時間後の夜8時ぐらい。
そこから色々やってとなると、気力がない。
お腹空いてるからすぐご飯食べたいと思うしでも飯作る気力はないしゲームもやりたいしでも明日の準備もしなくちゃだしなんてしてるうちにそろそろ寝るべき時間になっている。
(ひどい人はもっと早くから遅くまでなのだろうが、だからといって私がつらいわけではない。そりゃあ私よりつらい人は山ほどいるだろう。恵まれている方なのかもしれない。それでも私がつらいと思ったことは私の「つらい」だし、同様に私よりつらい環境の人もその人の中で「つらい」だけだ。お互い別個の「つらい」だから比較対象ではない。キャパも違うし)
こんなご時世だから仕事辞めたところで職にありつけるのか謎だし、こんな心持で転職できるのかも危ういし、そもそも勤め人むいてるのか?って思う。
むいてる人なんていないのかもしれない。それでも周りの人間はそれなりに仕事ができて、「めんどくせー」なんていいながら仕事してる。
私から見ると「この人たちは適合できているんだな」と純粋にうらやましく感じる。
最初は「学生気分ぬけてないなこの人ら」と思っていた私だが、ふたを開けてみれば私の学生気分が抜けてないだけで、周りはとっくに「卒業」していた。
「ミイラ取りがミイラになる」なんてことわざ、存在は知っていたけれどまさか私がその当事者になっていたとは。
まあミイラ取りでもないんだけれど。元からミイラだったのかもしれない。生きる屍。うーん否定しきれない。
振り返れば今まで、なにか明確に自分で道を決定したことがなかったような気がする。
なんとなく楽しそうだから、なんとなく楽そうだから、何となく面白かったから、何となく受かったから。
色々考えて生きてきたつもりでも、全然考えて生きてこなかったんだな。ウケる。
因果応報な気もするが、ただはき違えたくないのは「仕事の為に生きる」のではなく、「生きるために仕事をする」というのが本分であるということ。
仕事なんか(もちろん今している仕事が好きな人とか趣味を仕事にしている人もいるだろうが)のために命削るのばかばかしくないスカ。
「社会的責任が~」とか正直「うるせえ!」って思いませんか。私の人生は私の人生だ。犯罪を犯したとか倫理的に問題があるとか、そういう事ならまだしも別にただ生きてるだけでなんで属してる組織や社会に捕らわれきららねばならんのだ。息継ぎするスキマぐらい存在したっていいだろうが。
楽しいだけの人生がないのは何となくわかるけど、だからと言ってなるべく多くの「楽しい」を得られるように生きちゃダメなのか?
ダメって言われてもなるべくそうありたいからその問いかけは無駄なんだけどさ。
一日目終了、反撃の狼煙。
なにへの?
久しぶりに文章打ってて気づいたことは、このPCクソもっさりだし延々とファン熱いしうるさい。
あと ”「” キーがなんか詰まってるのかめっさ押しづらい。新しいPCほしいな。
あとさっき久しぶりに趣味を行ったら(って表現であってるのかしらんが)すごい楽しかった。
本格的に学ぶとなると金もかかるし継続できるか別だろうけど。でもやってみたい。
やりたくないことやるのってエネルギー消耗するけど、やりたいことをやるってエネルギー湧くな。
いいことに気づいた。それだけでもこれは収穫だったかもしれない。
安倍が悪い、野党が悪い、小池都知事が悪い、共産党が悪い、トランプが悪い、・・・・・
何故かと言うと、僕はおそらく、「共感」しない人間だからだろう。
感情がないわけじゃない。むしろ、喜怒哀楽に弱い人間で、感動ポルノに号泣してしまうくらい幼稚な感受性の持ち主だ。
要するに、あの人気のある人がこう言っているから、とか、これこれで有名な人がそう言っているからという理由などお構いなしなのである。
だからネトウヨであろうがはてサであろうが、ツイフェミであろうが、イケハヤであろうが、はぁちゅうであろうが、そんな名刺には一切拘らない。
そうは言っても流されそうにはなる。名刺で判断したほうが楽だから。
でも、大抵はそうした大勢から叩かれるような人の意見でも、「ほんとに間違ってるのかな?」と何処かで疑問を持つ。
Twitterは党派性の塊があちこちに存在し、フォロー・フォロワー、或いはRTやいいねで曖昧に支持しあっている。
だから、「あんな人をフォローしたりRTしたりしてるんだ」と思われると、極端な場合はブロックするという行為が頻繁に行われている。
絡んだことすらない、言及もしたこともないような、まったく知らない人からブロックされることは日常茶飯事だ。
僕はそんなの気にしない。僕は意見を支持したり反対することはあっても、人それ自身を支持したり反対することはない。まぁ余りに自分にとって迷惑そうならブロックはする。
はっきり言って無茶苦茶。特にフォロワーは、完全に対立する人からフォローされていたりすることもしばしばある。
そして、不用意にその対立する人へ対立するツイートを流すと、しばしばブロックされるのである。
これが地味に困る。その人からの情報が遮断されてしまうからだ。
他にも、僕はそうした「名刺」に拘らないから、例えばアンチフェミに賛同するようなことをあっちで言い、そっちでは和やかにツイフェミと話したり、酷いことを言うオタクに批判したり、矛盾したことを言うツイフェミに疑問を投げかけたり、そういう人から見ると全く矛盾したことをするので、どんどん孤立してゆく。
僕の意見自体もそうした党派性を帯びない。フェミの表現規制に共感を示すようなことを言いながら、表現の自由に対する侵害だ、だんなて平気で言う。
最近では、割と親しかったツイフェミの人に、女性専用車両に無理に乗り込む男性の団体は酷いなー、と言いながら、女性専用車両はやめるべき、だなんて言うもんだから、ブロックはされないものの口も聞いてくれなくなった。
自分自身が党派性を示さないということは、党派性の人達から見ると排除するしかない人になっていくのである。
当たり前の話だ。人で判断しないというのは、自分も人として判断してはもらえないということになる。
僕は人と繋がれないのである。
人と繋がれない人はSNSには不要である。そんな仕組みなのだ。
だから、極端に言えば敵対関係と個別の仲良しな党派があるだけになる。
僕はそのどちらにも属することは出来ない。
長いことネットをやってきて、やっとこの自分がSNSに向かないということの理由が見えてきた。
なのにどういうわけか寂しいと思わない。
僕にはそういう共感性がまったくない。
多分、あまりにも素直過ぎるのかも知れない。
ある会社にいた時、そこの社長からよく言われた、君は素直すぎると。
「これが正しい」と言われたら、何も考えずに受け入れてきた。
あちらに、戦争反対の狼煙が上がれば、それが正しいのだと盲目的にそう思い
こちらで、自分の親父がそんな事を言うサヨクはけしからんというと、そんなもんなのかなーと思い
全く相反する矛盾した考え方を、どういうわけだか自分の中に許容してしまったのだろう。
世の中には相反する考え方が無尽蔵にある。
そんなのを素直に受けいている間に、自分で気づかないうちに、自分が社会に相反する人間になってしまった。
でも繰り返すけど、寂しくはない。
社会には従うけど、人には従わない、それだけだ。