はてなキーワード: 国家公務員とは
もうね。募集が始まった時点で、採用枠の人選はほぼ確定しているの。
普段から、採用決定権のある人を訪問し、付け届けをし、ちゃんと接待しておくのよ。
そうすれば、採用決定権のある人も、この人なら信頼できるって思えるじゃん?
いろいろ良くしてもらってるし。
裏切って、連絡も無しにバックレるとは到底思えないじゃん。
つまり、普段のお付き合いの中で、信頼関係を構築しておくから、
毎年確実に採用される。
社会ってこういうもんなんですよ。
省庁の国家公務員だってそう。公務員試験に合格すれば、合格者リストの中から
良さげな人が選ばれると思ったら大間違いなんですよ。
合格は最低条件。合格したら、せっせと希望の省庁に通い、挨拶周りをしてコネを作っておく。
自分は関東の公務員(政令指定都市ではない基礎自治体・事務)を10年程度経験してから民間に移った。元々いた役所の人と話すとだいたい仕事辞めたいという話になるので、地方公務員を辞めたい他の方へも参考になると思い、増田の辞めるべきか悩む理由に沿って思うことを書いてみる。以下はすべて基礎自治体の地方公務員を前提としている。
増田は35歳だと主査(係長)か主任主事(上級兵隊)か?仮に都内の基礎自治体勤務として、35歳で月40時間残業代(2,000円/h)が付くなら、600万円弱くらいはいくんじゃないか。
最初に増田の転職活動の最大のネックになるんじゃないかと思うことを伝えておく。「やめるべきか悩む理由」、「気になること」で明記されていなかったが、はっきり言って高卒であることが一番ネックになると思う。役所は低学歴にとってコスパがいい職場だということは認識しておくといい。逆に国家公務員の総合職に行くような高学歴にとっては搾取されつくされる職場だ。
残念だけど、学歴で伸びしろを図る会社は多い。さらに、増田は職務経験に自信がないんだよな。それから、増田が望むまっとうな会社を挙げてみな?増田が知ってるようなCMを打ってる会社で高卒35歳未経験をとってくれるところは少ないと思う。もちろん小さな会社でも素晴らしい会社はあるだろうけど、そこがどこかはここで聞いても答えは返ってこないと思う。なぜなら、高卒35歳未経験をとる会社は小さい会社で営業区域も限定される。増田が住んでいるところがどこかわからない以上、何とも言えない。
増田もみんなも知っている会社で高卒35歳未経験、支給される残業40時間と仮定して年収600万弱の会社をあげられるひとはほとんどいない。加えて、残念なことに小さな会社ほど社長のパーソナリティに社風が左右される。いいかえると、中にいる人しかわからない事情で社風が左右される。これは私の経験に基づかない主観に過ぎないが、そうした会社ほど残業をはじめ法令関係の扱いについて無茶苦茶するように思う。余計に毒の少ない会社を探すことは難しい。
未経験であっても求人側からすると隣接領域を経験しているなら、決して悪くないと思う。例えば、増田は土木系の工事発注やってるんだよな?土木系の業界は公共との付き合いが多い会社が多い。だから増田の経歴に関心を持つ公共工事で食っている会社は多いだろう。特に、最近流行りの公民連携(PFI)の発注経験があるなら興味を持つ会社は必ずある。求人は多いみたいだ。おれも隣接領域への企業へ転職して、2年で年収が8割くらい上がった。
とはいえ、官公庁系の仕事がしたくないんだよな。元公務員の転職先として官公庁向けにコンサルやってる会社が転職先として一番わかりやすいとは思ったが、高卒で官公庁しか経験がない増田でも関心を持ってくれる職種があるといいな。ごめん、増田の年齢・学歴かつ、非官公庁系で関心を持ってくれる会社は万年人が足らないブラック以外思い浮かばなかった。
もっとも、逃げ道がないわけではない。伸びしろで勝負できない、官公庁の仕事も嫌だという以上、即戦力として自分は今これができますという証明があるといいんじゃないか。
不動産鑑定士、司法書士とか難しめの資格を取得するために1,2年費やせば何とかなると思う。どっちも官公庁とのつながりもあり得るけど、つながりがない資格は何か探してくれ。職業大学校での資格取得でもいいし。公務員になれたっていうことは机に向かって勉強できるということだ。資格職はいいんじゃないか。なんとなく、公務員の「仕事の進め方のルールを守る」が性に合ってる人は、経理が向いてるんじゃないかと思ってる。
そもそも役所と関わりたくないという前提での話をする。役所とかかわりがない会社で、増田が重ねてきた経験のうちスキルと評価されることは極めて少ないということを前提にした方がいい。なんかあるかもしれんけど、高齢未経験、まっとうな職場を前提とすると思い付かない。②、③との関係で言うと、簿記・社労士が資格職として思いつくけど、役所は長く複式簿記を採用してこなかったし、労働基準法も適用除外だったしな。強いて言えば、規則通りにやるということは意外と重宝されるけど、そういう人が重宝されるのは、そもそも規則すら守れない人があふれる組織であるような気がする。
ただ、資格職はおいておいて、だいたいどんな仕事も経験積めばできるように制度設計されているのであんまり気にしなくていいと思う。ただし、これは入社できれば、という話で、さらに入社できたとしても35歳だと最初からいい歳の中途採用者としてそれなりの成果は求められるだろう。
そもそも転職できるか、さらに、まともなところに入れるかを気にした方がいい。④は入ったうえで自分がやり切れるかという心づもりの問題だろう。もっとも入ってからも業務で求められる頭の使い方がそれまでと違いすぎて俺はかなり苦労した。
これはおれも失敗した。面接でホワイトだと言われて中小企業に入社したらブラックだった。もっとも、その後まともな会社に転職している。
どうしたら回避できるだろうか?OpenWorkに課金したり、コンプラがうるさい上場企業を狙うのがいいと思う。Open workの口コミがなく、中小企業で上場企業でもないところからのまともな会社の見分け方は、そこで働いてる人に聞く以外わからない。力になれなくてごめんね。
これが一番何とかなる。自分が信じられるビジョンなんかなくていい。適当に中途採用向けのフォーマットに合わせて物語作っとけ。今ないなら、訴求力ありそうな物語をとにかく作ってみて、その物語に足りない資格・経験は今から何とかすればいい。
増田が気にしている中で一番でっち上げられるところだと思う。どうやってでっちあげるかわからなければ、Amazonで中途採用希望者向けの本を買えばいい。
先述したところと重なる。これは今からとればいい。増田の手持ちの時間とやる気が問われる。
暗いことばかり連ねたが、最後に転職しない場合の処方案を伝えたい。
精神科行って病んだとか適当な診断もらって休んでこい。なんだかんだ言って役所はまだまだ使えないと診断されたやつに仕事ふらない程度の体力はある。やりたいこともないなら、診断もらって今のところにしがみつくことをお勧めする。図書館勤務でまったり余生を過ごせばいい。
財務省での財政制度等審議会資料での、予算をめぐる文科省と財務省のバトルが話題になっています。
ブコメや増田の記事を見ていると、前提知識を勘違いしている方もおられるようなので、国の予算要求と財務省の役割、今回のバトルについて自分のわかる範囲で解説します。
なお、自分は教育関係者でも財務関係者でもなく、ただ国の予算編成過程が多少わかる、という程度です。
★教育新聞の記事(発端となった記事。お金を払っていないので「教員採用倍率『今後は改善する』と「奨学金返還免除『課題が多い』」までしか読んでいません)
文科省令和6年度予算 (ざっくり知りたければ「・・・ポイント等」の資料を読めばよい)
財務省制度審議会資料 (ここでは資料1と参考資料を対象)
今回のバトルで、国の予算の成立の背景知識や、財務省が文科省の予算をどこに気になっているのか、自分なりに解説をします。
また、上記別の増田の記事で解説されている内容は、以下の部分における2つ目に大きな誤解があり(文科省の予算案について、財務省が当初の案通りに認めてきたわけではない)、
それが全体の論旨をゆがめているので、訂正をしたいです。
■3行で
むしろ、教育新聞の記事の趣旨通り、このままだと文科省の要求した予算を大きく減額するよ、という意思表示とみたほうが自然です。
国の予算は、ざっくり言えば、
8月末:概算要求(各省庁が財務省に対して必要予算金額を伝える段階)
9月~11月:概算要求内容に対する各省庁担当部局への財務省ヒアリング、財務省での予算編成(予算金額の修正を含む)
12月:概算決定(財務省が事業の予算金額を確定させ、それぞれの金額を積算した政府予算案を策定)
上記の通り、制度上、国会の予算委員会で審議、承認されることで予算として成立します。財務省が決定しているわけではありません。
では、財務省は何をしているかというと、8月の各省庁から提出された概算要求内容を基に、各省庁の各予算事業の要求金額を精査し、必要に応じた減額(増額されることはあまりないです)を行ったうえで、政府予算案を決定しています。
また、国会予算委員会での審議においては、多くの場合そのまま政府予算案通り承認されます。
と書いていますが、文科省のHPの記載での「予算案」は、財務省と調整後の12月に決定された政府予算案を指しており、文科省が最初に8月に出した予算案を財務省が丸呑みしたわけではないです(丸呑みしたのは国会)。
上記9月~11月の財務省の予算編成過程では、バチバチに財務省から注文を付けられ、また、概算要求された予算は多くの場合削られます(=コストカット)。
むしろ、財務省審議会で財務省がこのタイミングで論点化してきたことは、文科省の教職員定数の増加や教員に対する奨学金の返還支援について財務省から待ったをかけた形と見たほうが適切だと思います。ただ、教育関係の予算を一律に削りたいとかではなく、文科省の令和6年度要求に反応した形ではないかと思います。
まず、文科省の令和6年度概算要求(特にp.6参照)において、教職員の給与の国の財源(教職員給与は1/2が国負担)である義務教育費国庫負担金について増額要求をしていること、特に以下の項目が、財務省としてはカチンときたのではないかと思います。
<令和6年度要求>
・教職員定数の改善 +128億円(+5,910⼈) ・定年引上げに伴う特例定員 +105億円(+4,857⼈) ・教職員定数の⾃然減等 ▲168億円(▲7,776⼈)
<令和5年度予算>
令和6年度予算は、定年引上げを行い教員を増やすにもかかわらず、昨年度以上に教職員定数を増やしています。
おそらく財務省としては、定年引上げに伴い教職員定数の増加量は小さくなる(例えば令和3年は定年引上げなしで+2000人)と見込んでいたところ、逆に増やしてきてぶち切れ、という流れかな、と勝手に推測しています(この辺りは令和5年度予算要求の際に文科省が財務省にどのように説明してきたかにもよりますが)。
また、、財務省が一般公務員と教員給与を比較して云々言っているのは、同じく文科省の令和6年度概算要求資料p.6の中で、
教師の給与体系の改善については、⾻太⽅針2023に基づき、具体的な制度設計を進めつつ、職務の負荷や職責を踏まえ、先⾏して以下の処遇改善を図る。
財務省としては、「骨太方針2023(これのことです。)に基づくとか言っているけど、『職務の負荷に応じたメリハリある給与体系の改善』とされてるのに、なに雑に一律に給与上げようとしてんだよ!」となったのかなあ、と思います。ただこれについては額も小さいので、どちらかというと「今後ちゃんとメリハリある給与体系をきちんと考えるんだよなぁ(威圧)」という脅しの意図のようにも思いました。
(この部分について個人的な意見として、財務省側も、反論として教員の給料と国家公務員(一般職)の給料を平均で比較して高いとしたのはあまりに雑すぎるのでは、と思いました。)
あと、教員に対する奨学金の返還支援については、「一度辞めたものを復活させるにはそれなりに理由がいる(もし理由がないなら、過去の決定は間違っていたことになる)けど、当時の理由が解消された、あるいはそれ以上の理由があるの?」という財務省として当たり前の指摘かな、という印象です。
全体的に、今回の文科省の予算要求は、教員に対する奨学金の返還免除でかなり話題になったため、大きく削る決定をする前の先手を打った、という形と思います。
個人としては、現代の教師の方は部活や時間外労働など山ほどあってしんどいし大変で、本当に頭が下がるな、という思いはあります。
一方で、そのために必要なのは学校の仕組みや組織の改善(部活の縮小やテストの採点・授業等の効率化など)であり、
今の枠組みを維持したまま、予算だけを増やしていくのは違うのでは、という思いが強いです。
(個人的には、今回の審議会資料の参考資料の、「在学者1人に対し、どの程度の公財政教育支出を行っているかで見ると、日本はOECD諸国平均と遜色ない水準。」というデータはとても驚いたし、今後公的な教育支出の増額を議論するならこのデータへの反論が必要になると思いました。)
逆に文科省に対しては、自治体レベルの教育は各自治体の教育委員会、現場の運営は各学校にゆだねられている中で、現場を少しでも改善しようと頑張っておられ、その中で今回の予算要求となったのだと推察しています。仮に今回の要求が大幅に減額になったとしても、教員予算や教員不足解消に関する議論に一石を投じたという意味で、意味があるものと思います。
一律に「財務省は教育を軽視している!」とか、逆に「文科省は何もわかっていない!」と勝手に悪魔化せず、冷静に論点を見極めて議論し、これからの教育の在り方を我々一人ひとりも考えていきたいですね。
スペック→現在20代後半。底辺私大文系卒。大学時代授業出席以外完全引きこもり。ガクチカなし。
フリーターしながら予備校通い1年。国家公務員と大規模自治体に複数合格。
・筆記試験のウエートが低い地方公務員と違い、一次さえ突破できれば最終合格まで行ける可能性が高いと踏んだ。
・今まで全然勉強をしてこなかったので、専門科目の勉強がしてみたいと思った。
・底辺私大から資格職ではないまともな仕事に就くにはもうこれしかないと思った。
退職するまで
・全落ちのリスクを最小限にとどめるため、短期離職の経歴を作りたくなかったので3年働いた。
・退職する1年半前に実家に戻り、小遣い1万、家に2万入れる以外は全額予備校費用と1年間勉強するための生活費の貯金をした。
・ガクチカが一切なかったので、自己PRで少しでも有利になるよう成長できそうな仕事は積極的に引き受けた。
・実家に戻った後簿記2級を取った。これにより長時間勉強する体力がつき、自信になった。落ちたら経理派遣をやろうと思っていた。
退職後
・大手予備校に最もスタンダードなコースで入校した。予備校のカリキュラムに忠実に、講師に言われたことはすべてやった。
・自分の勉強スケジューリングにあまり自信がなかったので、2週間に1回は講師に勉強進捗を報告していた。
・1日10時間は勉強した。(朝3時間、昼間5時間、夜3時間ほど。)
・モチベを維持するため、SNSやオプチャを活用して仲間を作った。
反省点
・基礎学力が足りなかったため、数的処理(中学受験に出てくる算数のようなものらしい。)と英語が全然できなかった。
思えば、退職前に英単語くらいはやっておけばよかったかもしれない。
40代前半になり、管理職を意識した仕事の進め方(実務中心→マネジメントへ)を検討しはじめた頃だった。ずっと同じ部署で働いていたわけではないが、新卒からほぼずっと法人課税一本だった。
そんな折、数個年上の同僚のひとりであるN君が「今年度いっぱいで辞めて転職するから」と言ってきた(ビットコインの件で苦しんでいた人だ)。職場の飲み会の帰りで、飲み直しで別の店に入った時だった。少しばかり仕事で縁のあった会計コンサルの内定を得たという。
「なんで辞めるの?」と聞くと、「昨年課長にはなったけど、どこまでいっても組織の歯車で、それだったらまだいいけど……国民のために役に立っているとは思えない。だったら民間の方がいい。自分の仕事力は、広く社会のために使いたい」といった答えが返ってきた。「上司と人事には退職の旨を話してある」という。
私は、そこまで高邁なことを考えるタイプではない。どこか仕事から引いたところがあって、上から60点の成果を求められた時、80を出せる時でもあえて70の成果を出す。残り10の余力は、いざという時のためにとっておく。そういうタイプだった。
できるなら上の方まで昇進したいとは考えていたが、審議官とか、次長とか、長官とか、そういう地位はむしろ遠慮したかったし、私の学歴だと奇跡が起きても難しい。職務自体は好きだったから、できれば長い間やりたいとは思っていたが。
そのN君は、私などよりも公僕に向いている。いつも全力だからだ。そういう人だった。今回、自分の力を社会のために役立てたいという想いを聞いたが、嘘偽りはないと感じた。
数か月後、私は「絶対にここを辞めてやる」と決意することになった。N君の退職が認められなかったからだ。それで結局、N君は内定先を辞退することになった。伝聞での話になるが、N君の内定先には「霞が関の事情を説明する」という名目での情報共有(という名の転職妨害)が入ったのだという。
民間の方には事情がわかりにくいと思う。まずは次の規則を読んでほしい。
(辞職)
第五十一条 任命権者は、職員から書面をもって辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとする。
公務員の任免というのは、民法上の雇用契約が基底にある。そのうえで、国家公務員法や人事院規則により公法上の契約関係を構成する。ざっくりいうと、行政事務職の公務員≒サラリーマンということだ。労基法が適用されないからといって、隔絶した存在ではない。現業職の公務員だと、よりサラリーマンに近い扱いになる(団結権があるなど)。
上の人事院規則は、公務員のみならず民間業界をも拘束する。当規則が国家公務員法(国会で議決)から委任を受けているからだ。
N君の例だと、別の内規により人事院規則第51条が課長補佐以上には厳しく適用されるのに加え、「再就職に関する規制」に該当するおそれがあったのだろう。それゆえ、転職を目的としての辞職が認められなかった。
結局、N君はどうしたのかというと……私が辞める時点では在職していたが……少し述べると、あれからも転職活動をしたが失敗に終わったらしい。40代半ばで、国家公務員としての経験しかないN君は転職市場では必然不利になる。
N君に興味のある会社があったとして、N君からすれば入りたい会社ではなかったという。とはいえ、税務や会計の会社を選ぶとまた転職できない可能性がある。かくして、N君は今でも霞が関のどこかで働いている。どうか幸せでいてほしい。
「こいつらクソだな」と思った。たかだか数年前に1回契約したっきりのコンサルに移るくらい、認めてやってもいいじゃないか。厳密にいうと再就職の規制にかかってしまうのかもしれないが、それでもいいだろう。仲間なんだから。
当時は怒りでいっぱいだった。今はとうに収まっているが。所詮は、その程度の仲間意識しか持てない連中の集まりだったのだ――と今では達観している。
繰り返すが、四十前半であれば課長(管理職)になってもおかしくはない。平均的には43,44ほどで課長に昇進するイメージがあった。早くミッションを遂行しなければならない。
転職活動を始めることにした。この時、妻はすでに亡くなっていた。子どもはふたりいたが、先ほど書いたとおり、霞が関の一人親に子育ては不可能であるため実家に預けている。妻が存命だったなら、転職活動自体していなかったかもしれない。
この時は、リクナビも有名になっていた。転職エージェントもネットで探せる時代になっていた。さっそく求人を探していくも、自分に合った仕事は見つかりそうにない。リクルートエージェントにも登録して、毎日少ない自由時間を使って求人を確かめていき、平行して求人応募に最低限必要なドキュメントを作っていった。
転職活動スタートから三ヶ月ほど経った頃は、こんな状況だった。希望条件には、就業場所や入社時期や休業制度や、もっと細かい事項もあったが省略する。
二 職務内容に拘らない
ア どんな仕事でもやっていれば好きになる
イ それよりもどんな人と働けるかが大事
イ 全体向けに説明した後、現場レベルに立脚した観点で是非を整理
※この箇所は、文字ばかりで窮屈~というエージェントからの指摘あり
ア 息子と娘を遊園地などに連れていきたい
ウ この年になるとゆっくりしたいのもある
二 風通しがいいこと
イ 怒鳴ったり急に泣き出したり、負の感情を吐き出す社員はいないか?
ア 前の職場が不明確だったので。データによらずに上司が決めるなど。
イ ずっと続けられる好きな仕事にしていきたい
イ 子がいるので額面700万はほしい。今の年収△200万円までOK。
とまあ、いろいろ考えはしたが……結局、税務コンサルにした。スキルを活かせるうえに、さらに磨くこともできる。そのうえ、応募に必要な資格である税理士免許もある。応募要項には「事業会社での税務実務経験5年以上」とか「同業界でリーダーシップを発揮された経験3年以上」とか「M&A、組織再編、事業統合、事業再生等の案件に対する税務コンサルティング経験」とか、該当していない要件があった。
だが一方では、「上場企業、外資系企業などに対する税務申告書作成業務」など、こちらの十八番(ルールを作ったり審査する側)とも言える要件もあった。当てはまるかもしれない。
こちらの日系大手の税務コンサルを受けたいと転職エージェントに告げたところ、「要件については、体感6割でいいので。ほかにも何社か受けた方がいいですね。増田さんの場合は、最低15社は受けましょう」とアドバイスをもらった。
言いたいことはわかったが、こういうのは絞るべきだと感じた。一気に15社受けるのではなく、3社を5回に分けるなど、そういうやり方がいいと思った。※よく考えると、転職エージェントと転職希望者は利益背反の関係にある。転職エージェントとしては、ほどほど短い期間で離職しそうな会社を勧めるのがメリットだからだ。
かくして、税務コンサルのうち、外資系大手・日系大手・日系準大手の3つにエントリーした。うち2社が書類選考を通過し、一緒に働くであろう仲間との数度の面接を経た後に、幹部社員とも話をさせてもらい、最終的に2社の内定を得た。
決め手として、一番好感があった会社を選んだ。やはり、一緒に働く仲間――これがマストだった。上の3つでいうと日系準大手になる。
こちらの会社は、昔仕事でお世話になったことがあった。直接契約を交わしたことはないのだが。とある相談案件を通じて、互いの知見を高めることができた……とこちらは認識していた。その会社は、国税庁を不当課税処分で訴えたことがあったのが気になったが、今さら大した問題ではない。
次は、どうやって上司に転職を伝えるか考える必要がある。まともにやってしまうと、N君の時のように無理筋なことをされる可能性がある。公務員の退職にあたっての厳密な許可制や再就職の規制は、当時の私の役職(課長補佐)だとばっちり適用される。※20代とかの若手だと、基準を緩めてもらえるらしい。
「年度末で退職します」と告げた時の直属の上司の顔を覚えている。諦めと怨嗟が混じったような顔つきだった。一応遺留は受けたものの、上司もわかっていたようで、最後には「これまでお疲れ様。次のところでもうまくやれるように。ただ、辞職が認められたらいいけどな。俺は無条件に認めるけど」と言っていた。後は、人事による退職ヒアリングを残すのみだ。
思案した結果、退職ヒアリングにおいては、内定を得ていた会社のうち辞退するところを転職先として告げることにした。入社予定の日系準大手は、一応これまでの取引先には当たらないが、関係先に該当すると見做されるおそれがあった。N君の二の舞だけは御免だった。絶対に避けたい。今ここで、今ここで就職しておきたい。絶対に!!
証拠書類として、第二志望だった外資系大手のオファーレターの写しを人事ヒアリングで提出したところ、それから約一週間ほどか、何事もなかったように辞職の許可が下りた。そこから、残りの約二ヶ月半の間で引継資料を作り、3月の初め頃には仕事を引き受ける人に業務の説明をして、懸念事項の対処方法の素案を示して、最後に職場内で気を付けるべきことを述べて……それから数日後、私は職場を跡にした。
転職に成功した。一度下った辞職許可である、春先になって覆されることはない。覆そうにも、4月の時点ですでに民間企業との雇用契約が成立している。どうしようもない。私は管理職ではないからして、そこまで大事にならないはずだ。
実際、春先になってすぐ、雇用保険や健康保険の手続きの関係で、私の勤め先は元職場に知られることになったろう。それでも、私に元職場から電話がかかってくることはなかった――転職に成功したのだ。
新しくスタートした税務コンサルティングの仕事は、私にピッタリ合っていた。最初の1年間は、向こうの会社でいうところの雑巾がけ(企業の予定納税額の調べ、特定の申告方法の可否の問い合わせ、税制改正の動向調査)に当たる仕事だった。これまでの経験が活かせる、いい仕事に出会うことができた。
定時退社が実現し、給与は少しだけ上がり、休暇日数も増えて、福利厚生も十分だった。何より、一緒に働く仲間だ。自然な話し合いができる。暴言を吐く者や、怒りや悲しみの感情をぶちまける者や、不貞腐れる者もいない。言いたいことを言い合える。
反対意見に弱い人達じゃなくて、なんというか、「精神的に健康」というか。自分と考えの違う人の反論に耳を傾けることができる。それでいて、自分の意見として昇華できる。そんな人達だ。
いい職場に移ることができた。運がよかった。太陽が昇っている時間に家に帰れるなど、私にとっては夢のひとつだった。夕焼けは近かったものの、まだ青空が残っている部分を見上げると、子どもの頃に読んだ児童作品を思い出した。少し前にも思い出そうとしていたっけ。きっかけは忘れたが。
タイトルは、『ちいちゃんのかげぶんしん』だった。時代背景は、太平洋戦争の末期だ。ネタバレは避けるけれども、ちいちゃんという女の子が家族と一緒にやった『かげおくり』という遊びを通して、戦争反対を訴えるものだ。
かげおくりというのは、地面に映った影法師をしばらく見てから青空に目をやると、網膜に焼き付いた影の残像が空に映ってみえるというものだ。未成年だった頃の私の心にドスンときた作品だった。増田民にも是非おすすめする。
晴れ晴れとした気分だった。それからはマイホームで羽をのばした。なにしろ、毎日が定時帰りなのだから。子どもを実家から引き取るまでの間、家でゴロゴロしたり、趣味に勤しんだり、妻の遺品を整理したり、平穏な日々を過ごした。
暇な時間を使って、『犬神さんと猫山さん』のBlu-rayディスクを購入して観た。やはり、何も考えずに見られる。1話がCM込みで5分なのもいい。最終回は、花火大会だった。今まで出てきたキャラクターがみんな登場して、最後はふたりで花火を見上げながら手を繋いだところでエンドだった。
ネット掲示板を読んだところ、原作漫画(※記念に1巻を購入)の方は、残念ながら打ち切りのような結果だったらしい。作者も若い人だから、いろいろと苦労があったのかもしれない。でも、あの作品を面白いと思った人がたくさんいるのだと――作者に知ってもらえたら幸いだ。
私のようなおじさんが楽しめたのだから、若い人だったらもっと楽しめる。面白い作品に違いない。できれば15分枠のアニメだったらよかった。
たった三ヶ月の間だったが、思い出に残るアニメだった。ありがとうございました。
ここまで書き終えて、今は自室にあるパソコン机の前で一息ついている。携帯電話の通知を見ようか、それともコーヒーを飲もうか、ボーッとするのもいいかなと、いろいろ考えている。
税務官僚だった頃に比べると、今は幸せだ。そのうち慣れるとは思っていたが、あの辛かった日々を思い出すと、しみじみ幸せに思えてくる。不思議かな、辛かった日々であればあるほど、思い出す時に幸せな気分になる。なぜだろうか。
そんな思いに捉われて、ふと携帯電話を拾い上げた私は、デリヘルでも呼ぼうかと思い、アドレス帳を開いた。お気に入りの子が脳裏に浮かんでくる。
ここで思い留まった。そうだ、先日誓ったばかりじゃないか。もう風俗店を利用するのは辞めようと。昔はよくソープに行ったり、デリヘルを呼んだりしていたけれども、もうしない。そういう店は利用しないと決めていた。
長い日記になった。ゆっくり読んでもらえばいいし、わかりにくいところや、興味のないところは飛ばしてもたぶん理解できる。
今回、昔のことを振り返ることができてよかった。書いている最中、じんわりとした幸せが込み上げてきた。この幸運に感謝したい。
(追伸)
上で挙げたN君だが、半年前に話をする機会があった。今でも彼は、どうにか転職ができないか模索しているらしかった。裏技を使おうかとも言っていた。さすがにここでは言えないが。
N君の転職活動が成功する未来を祈っている。彼は独身だから、私よりは選ぶ会社の自由が利くだろう。彼の多幸を願って日記の結びとする。
国税庁の最終面接のことを思い出している。大学四年生の頃だ。今までの面接は、無機質な長机とパイプ椅子でのものだった。だがその時は、四角いどっかりとした檜机と、ふかふかの椅子だった。それでいて圧迫感のある面接であり、最後に「私達と一緒に働けますか?」と言われたのを憶えている。
「はい。私でよければ宜しくお願いします」といったことを告げると、その場で最終合格が遠回しな言い方で告げられた。内定通知は賃貸アパートに届いた。
こんなところに書くほどだから予想はつくだろうが、結構前に官僚を辞めている。仕事は大変キツかった(きっつー、というやつ)が、やりがいはあった。いつかは挑戦してみたい仕事もあった。
思えば、大学3年生の春からコツコツコツコツと勉強を重ねて、やっと第一志望のひとつだった官庁に合格できて、「やったー!」と無邪気に思っていた。案外こんなものだ。
国家公務員(課税部門)としての経験は20数年しかないが、せっかくのシルバーウィークだ。ちょっと語ってみたい。今は税務コンサルタントとして働いているが、夏前に大きな仕事が片付いた。今は仕事を少なくしてもらっている。
仕事のことを、はてな匿名ダイアリーに書いてる人を稀に見る。今回、私もやってみようと思った次第だ。企業との課税交渉の協議録とか、個人・法人の税額とかを載せない限りは大丈夫だろう。何かあったら責任は取るつもりだ。
高橋洋一や山口真由が自著で話している内容に比べれば、当日記はベジタブルのようなものだ。あの内容を出版して捕まらないなら、ここで書く内容など余裕でセーフだ。
なお、私ははてなユーザーの中では年寄り(フミコフミオさんと同い年)である。古い表現があってもお許し願いたい。
先に言っておくが、「霞が関に来なければ体験できなかったことは人生の財産」とか、「国のために働いている自負があった」とか、「苦しかったけどいい仕事ができて国民のためになった~」といったことはあまり書かない。
そんなに夢や理想のある官僚じゃなかった。僅かばかりはあったが。むしろ組織に負のイメージがあって、若い頃に限った語彙だと「こいつらクソ野郎だな」という感情を抱いていた。それで、40代になって数年後に転職した。再就職規制に引っかかる危険はあったが、グレーな方法で突破した。
当日記は、数パートに分かれている。できるだけ簡潔にまとめたい。以下、思い出を何点か挙げて回想する。
中学生の頃から、「税ってそもそも何ぞや?」という疑問があった。大学に入ってからは、税理士の資格を取るために勉強していたが、どれだけ勉強しても税への理解はイマイチだったし、全科目に合格した後も結局わからなかった。
※東大とか一橋大とか慶應とか早稲田とか、そういういい大学を出てるわけじゃない。偏差値50ちょっとの大学だ。たまたま会計学の講義を取ってみたら面白く、勉強にハマった。
税とは、一般的な説明だと、国や地方自治体が国家の維持や発展をめざして、民間では供給されにくい公共的なサービスを提供するにあたっての資金として「税金」を徴収している――ということになっている。
だが、おかしいと思っていた。だって、国はお金を自由に発行できる。地方自治体が言うのならわかる。あと、大昔だったら年貢を物納で納めてもらわないと国が維持できなかったはずだ。
だが、現代社会の国家がそんなことを言っても説得力はイマイチだ。税金をとらなくても、別にお金を刷ったらそれでいい。金本位制の時代を通り抜けて、今では発行された紙幣そのものに信用がある時代なのだ。お金というのは、それがお金であるがゆえにお金だ、というトートロジーである。
増田民の人も、わかってる人はわかってるだろう。税とは何かが。ここで答えは書かない。気になる人は、Yahoo!知恵袋とか、Quoraで求めれば賢い人が教えてくれる。
私が納得いかなかったのは、一応は国家公務員一種試験(昔だったら上級甲種試験)を通ってきたはずの人達が、入庁一年目だった私の質問に答えられなかったことだ。「そんな当たり前のことを聞くな」という人もいたし、「ここではちょっと…」と口を濁す人もいたし、「知らん。自分で調べろ」という人もいた。
税を納めるのは当たり前のこと、ただ、その原理と言うか……そう、原理が大事だろう。何も考えずに常識を信じていいのは中級者までだ。上をめざすのであれば、身も蓋もない本質を疑う必要がある。
こういうことを私が言っても説得力がないので、ちょっと引用させていただく。
それぞれの原理を、その自然本性のかぎりで探求しようとしなければならないし、きちんと定義されるよう腐心しなければならない。というのも、原理はそのあとに続く事柄にとって、大きな影響をもっているからである。実際、原理は全体の半分以上であり、探求されているものの多くは、原理を経由することで明確になると思われるのである。 ニコマコス倫理学(上) P.62
なぜ国民から税金を取るのか、という新人職員の問いに答えられる職員は10人に1人ほどしかいなかった。思えば、この時から私はいつかここをやめようと思っていたのかもしれない。
実際、徴税は国民みんなから集めたお金を公共サービスに充てるため、というのはお題目だ。わかりやすく国民を納得させるための。本来の目的はほかにある。それに比べると、上の『お題目』はビックリマンチョコのおまけに近い。ウエハースだ。
トラブルになりかけた事例になる。詳細は端折って書く。専門用語は補足するか、日常的な言葉に言い換えている。
キャリア官僚は現場を体験しないイメージがあるかもしれないが、別にそんなことはない。入庁二年目からは普通に現場だったし、30才を過ぎて地方支局で働いてる人もいる。
当時は、北海道某所にある国税局に勤務していた。一応は税理士に必要な科目は残りふたつというところまで取っていたが、それでも実務は難しかった。勉強しないといけないことは山ほどあるし、一年目は税務の学校で学ばせてもらったが、実務に必要な知識の何割も身に付いていない。税務の世界は広いのだ。
最初の頃はひたすら、簡単な事務とか雑用とか、先輩が受けた税務相談の回答案作りとか、上位機関からの調査ものとか、庶務全般(文書収受~会議日程調整~飲み会手配まで含む)に、兎に角いろいろやった。
すべて勉強になるとは思ったが、正直これは臨時職員がやった方がいいのでは……と感じるものもあった。まあ、とにかく新人らしく何でもやった。
赴任して半年だった。とある先輩を経由して、それなりの事業規模の法人の税務申告を最初から最後までやらせてもらえることになった。同じ年代の職員(※省庁キャリア)の中では遅い方だった。資本金が結構ある機械メーカーだったかな。これまで当業務では、先輩方を手伝う立場として動いていたから、割とすんなりいくように思えた。
申告内容は当然精査するのだが、日本の課税制度は一応性善説でいっている。国民(法人含む)が嘘をついたりごまかしたりしない、ということを前提にしている。その企業も、過去に税務に関して更正処分(支払う税額が誤っていると判断した場合に○円払いなさい、という措置)関係のトラブルを起こしたことはない。
一応は提出書類を三周ほどしたところ、申告書類も、帳簿も、領収書や請求書や契約書(請書)も、通帳関係も問題なし……それで、さあ決裁だといった具合に伺いをスタートした。
先輩方の場合は、スルッと起案が通るようだったが、自分の場合はそうはいかなかった。新人に厳重なチェックが入るのは当然だった。
「不動産の項目がおかしい。取得した不動産価格が常軌を逸して安い。税をごまかそうとしているのでは?」
という、先輩及び直属の上司からのツッコミがあった。上司を納得させないと、次に進むことができない。思えば、あの先輩は、このことがわかっていて私に振ったのかもしれない。
当時の私の実力を超えた課題だった。頭を抱えたのを憶えている。あの時の思考過程を追っていこう。
かくして・・・
探求の旅は はじまった
まず何をすればいいかというと、不動産価格がしっかりしたものかを調べればいい。正当な根拠のある価格であればいいし、不適当な価格であれば……面倒なことになる。
不動産売買にかかる課税額は、比較的シンプルだ。普通の法人税と同じで基本は定率である(税額表を見ればいい)。ちょっと賢い中学生でも実務ができるだろう。
印紙税も、登録免許税も、不動産取得税(県税)も、固定資産税(市税)もそんな具合だ。不動産本体の価格については難しい計算が必要だが、焦る必要はない。市区町村にある固定資産税台帳には、固定資産税評価額が載っている。それを見れば、登録免許税の目安となる不動産価格がわかる。※固定資産税の納付書にも書いてある。
それを根拠に……と思ったが、そんなに単純な話ではない。ならば先輩も上司もツッコミを入れたりしない。イレギュラーなケースなのだ。
その物件は、なんと固定資産税台帳に載っていなかった。そういう土地だった。登記簿を見たところ、字名がとんでもないことになっていた。奥地にあって、大昔は栄えていたのかもしれないが、今では地域まるごと誰も手入れをしていない。そんな土地だった。しかし、幅4.0m以上の道路は通っている。江戸時代の人が整備したと思われる。
国税庁においても、外部公表している不動産価格の調べ方みたいなものはある(いわゆる路線価だが、当然奥地には路線価がない)。国でも地方自治体でも、不動産価格を求めるための要綱要領は具えているが、今回は通用しないのではないか。そういう案件だった。
若かりし日の私は思案しつつ、先輩にも相談して上司に2つの案を出したはずだ。懐かしい。
1. 比準価格(みなし計算のようなもの)を使って不動産価格を弾くと、今の数倍以上の価格になる
2. 今回は大した金額ではないため、相手方の税額を受け入れる
メリット…百万にも満たない税額差であり、費用対効果を考えるべき
結局、2.の案が採用された。それで、起案はあっさり通った。協議や相談をしたのは直属の上司までであり、決裁の責任者には上司が一声かけたくらいだ。それで新人職員の一件目である課税処分は通ってしまった。
思えば、先輩や上司からすれば、最初から2.一択だったのだ。今の私の判断もそうだ。課税額の差として百万円にも満たない金額のために、そこまでの手間はかけられない。もっとほかに、日本の税務行政のためにやらないといけないことが山ほどある。
一応弁護しておくと、現場で働く公務員には、「法適用の裁量」と「エネルギー振り分けの裁量」がある。現場的な要素が強い職種だと、上司の指揮監督を受けるのが望ましくない場合がある。極端な例だが、警察官が凶悪犯をパトカーで追っている最中に、スピード違反や信号無視をしている者を放っておくのはやむを得ない、といった観点だ。
余談になるが、国税局職員が県税や市税の脱税を見つけた場合も、人や状況によって対応が変わる。情報提供する場合もあれば、見なかったことにする場合もある。
それこそ昔の話だが、飲み会でとある話を聞いた。ある個人納税者から地方税務署に相談があったという。要約すると「1年前に出した赤字決算の申告書だが、実は黒字で、税金を納めないといけないことがわかった。どうすればいいか」ということだった。追加で納付すべき税額は、約30円のようだ。このままでは脱税者になってしまうと焦っていたらしい。
その相談を受けた税務署員はこう答えたという。「実は、ボールペンとか消しゴムとか、事務用品を買っていたのを申告書に書いてないんじゃないですか? だったら、納付すべき税額はやはり赤字では? 問題ないですよ」と。※以後の話は不明
課税処分はもちろん、どのような行政処分であっても費用対効果という観点が重視される。税収1万円増のために2~3万円をかけるのは議論の余地があるにしても、20~30万円をかけるのは明らかに不合理だろう。
テレビやネットメディアやはてなブログでは、公務員は何も考えずに税金を支出しているイメージがあるかもしれないが、ちゃんと考えている人が多数派である。そこは信じてほしい。
数年後、私は北海道から霞が関に戻ることになった。それから退職するまで、ずっと法人課税部門にいた。
Part2/3
官僚が間違いや失敗を犯すことはない。
・一般職、〇〇専門官、〇〇専門職という形式で選ばれた下級役人
その理由を御三家男子中高一貫校→東大文一→旧司法試験不合格→国I(当時)不合格→東京大学法学部→小学生向け受験塾の講師という経歴を持つ俺が官僚にはなれなかったけれども官僚の友人を多く持つ人間として解説する。
まず官僚になるためには突破しなければならないものがとにかく多い。
中学受験、東京大学文科一類現役合格、国家公務員総合職試験上位合格、面接など文科省や環境省などの下級官僚、課長級を経て肩たたきされる底辺官僚でも最低限この四つを突破する必要がある。局長、次官級ともなればここに加えて学生時代の旧司法試験(現代なら予備試験と本試)の合格、仕事で間違いを犯さないこと、政治家から嫌われないことなどさらに多くの要素が必要となる。
10歳から始まるこの競争では間違いは許されない。中学受験、大学受験、公務員試験とどれか一つでも間違えれば官僚への道は潰える。学業だけでなく、非行に走ったりした学校を追われたり、享楽に耽って大学を中退したり留年しても同様である。
そのように間違いを犯した人間から「官僚への道」が潰れ、医学部医学科、工学部などに進学したり、法曹、外資系企業、財閥系総合商社…など別の道に泣く泣く進んで行く。
お分かりいただけただろうか。
よって政治や行政への批判の際に官僚を槍玉にあげてはいけない。なぜなら彼ら官僚はミスや間違いは犯さず、もしも間違いが存在するのならそれは政治家(但し官僚出身者は除く)、下級役人、政治家の選んだ専門家、有権者たちなど別の人間に要因があるからである。
日銀がわかりやすい例だ。日銀叩き上げや大学教授出身の総裁が就任すれば日本経済は傾き、財務官僚が就任すれば日本経済は持ち直す。この繰り返しだった。日銀総裁の中で最も功績の大きい黒田氏(面識は全くないものの私の中高大学学部の先輩に当たる)は大蔵・財務官僚である。
ちなみに民間企業や法曹、医師などにおいても仕事で間違いやミスを犯さない順に属性を並べれば
中高一貫東大卒→非中高一貫東大卒→中高一貫国立卒→非中高一貫国立卒→中高一貫私大卒→非中高一貫私大卒となる。ちなみに仕事における能力の高さやパフォーマンスの高さで順位をつけても全く同様となる。
これは様々な業界にいる私の中学、高校、大学の友人も同意しており、私の職場の職員や講師を見ても同じく当てはまる。
お子様をお持ちの方は子供の未来を考えればこそ、金銭の負担や労力を厭わず、迷うことなく中学受験をさせ間違いやミスを犯さない輝かしい人生を送らせてあげてほしい。