はてなキーワード: 内藤哲也とは
2023年の新日本プロレス「G1クライマックス」は内藤哲也の勝利で幕を閉じた。ファンの方は嬉しかったことだろう。
しかし、今回のG1は確実にある男が話題の中心に居続けたのは疑いようのない事実だ。
その名は清宮海斗。プロレスリングノアの若きエースといわれる男である。
今年1/21のオカダへの「蹴撃」から始まった清宮の行動は他団体のシングルリーグ戦出場へとつながって、リング内外で想定外の渦を巻き起こした。それが何を示しているのか。
まず、今回のG1への清宮参戦はどちらの希望だったろうか。これに関して私は新日本側の要請とみている。ここでの参戦が大きな話題になることは自明であり、チケット売上や専用アプリへの登録数を
増やせるいい機会である。ここで新日本側から感じるのは自団体の試合内容やレスラーへの自信だ。きっかけさえあればある程度以上の他団体ファンのとりこみが容易だと判断したのだろうと思う。
ノア側からみても清宮には良い経験になるし、知名度に劣り、参戦発表段階では新日本ファンからは諸手を挙げて歓迎されているわけでもない彼への「誤解」を解くいいタイミングでもある。
加えて若いとはいえ団体最高王座に2度(一度目は最年少記録での戴冠)就いた選手である。無碍な扱いをしないような話はあったろうし、そうでなければ送り出すようなこともないはずである。
しかし、ここから(おそらくどちらの団体からしても)想定外の事態が起こりまくった。
まず、新日本での発表時にファンから想像以上の歓迎を受けたことだ。おそらく新日本的にはブーイング半分の状況を想定していたのだと思う。それが想像以上の歓声とともに受け入れられたのだ。
次に新日サイドが目の当たりにしたのは、当初の予想や見積もりをはるかに超える技量をいかんなく発揮する清宮海斗のレスラーとしての能力だった。条件の厳しい(全くのアウェイ+一般的ではない20分一本勝負)中出る試合出る試合で、様々なタイプの対戦相手の特徴を引き出したうえでそれを超えてみせるという、清宮にとっては当たり前の、だが新日本サイドとしては予想だにしなかった状況を現出させたのだ。
その技量の突出の度合いが令和三銃士と名付け、なかで団体としては筆頭扱いであった辻陽太戦で現れた。この試合での清宮は普段の試合では見せない挑発的な技も駆使しつつ、最後は完勝としか言いようのない組み立ててで勝ってみせたが、現場やフロントはここまで技量差を見せられるとは思っていなかったろう。さらに海野翔太戦でも技量で圧倒しつつも海野の気の強さを存分に引き出して引き分けに持ち込んだ。さらに現IWGP世界ヘビー級王者SANADAとの試合でも試合をリードし、最後は時間ギリギリの敗北となったが、王者を差し置いて週刊誌の表紙にまでなってしまう状況となった。こうなればファンは正直である。新日本のファンが一目置くのは必定だ。
自団体の選手を差し置いて会場(=ファン)の信頼を次々に勝ち取っていく清宮を見て、新日本のフロントや現場は何を考えたろうか。その一端がゲイブ・キッド戦で現れたのではないか。
この試合、挑発的ヒールファイトをするスタイルに隠れているが、明確にゲイブは試合を壊しにかかっていたように見えた。清宮は最初受けるスタイルで修正を試みていたが、ある段階で完全に「これは違う」と判断したようだ。
セコンドも連れず、文字通り「単身」敵地に乗り込んでいる彼は試合そっちのけで自らと団体の尊厳を守る行動に出る。最低限の行動(眼球への攻撃や急所への打撃を行わない)は守りつつ立ち向かったのだ。ちなみに観客席で自らの頭を椅子で殴ってから相手に襲い掛かるという奇行ともいえる行為も、湧き上がる怒りを抑える行動とすれば納得もいく。清宮の突然の「試練」に対しても全く臆することなく、むしろ敢然と立ち向かう姿に、おそらくレスラー間で彼を見くびるものはいなくなったはずだ。
だが、一部の人間がそれを完全に脅威としてみたこともまた真実だろう。
私は、この試合を見たときに「これが<仕掛け>であるなら、予選突破はないのかもしれない」と思い始めた。普通に試合を行っても引き分けは当然あるわけだが、この引き分けはそういうものとは違うと見え感じたのだ。その後報道で清宮がスタッフを突き飛ばした、という記事が出た。普段は試合後でもそのような態度をとらない彼がとった行動はその内容が全く予想外であったことを示している。このあたりから、当初の思惑とは違う流れが起こっていたのではないか。
話は飛んで清宮は成田蓮戦で「まさかの」敗北を喫しあえなく予選落ち、となったが、翌日にノアの副社長を兼ねる丸藤正道がかなりセンシティブな内容のツイートを行った(https://twitter.com/noah_marufuji_/status/1687979081059762176?s=20)。真意は以前丸藤との対戦を希望した成田の勝利後に自身と対戦すると清宮のランクが下がってしまうということ、と言っているが、タイミングがタイミングなだけに鵜呑みにはできない。時系列の文脈からすれば成田の勝利を隠れ蓑にしてG1興行全体のピエロとして清宮を扱ったのはおかしい、という風に解釈するほうが無理がないからだ。丸藤の立場でこの発言をしたこと自体、新日本側に対するけん制の意味があるわけで、けん制せねばならない事案が起こっていたという推論にたどり着くことになる。
リーグ戦敗退後もG1興行に参戦を続けた清宮を待っていたのは、なんとほぼ第一試合でのタッグマッチ、というものだった。当初から決まっていたグレート・O・カーン&ジェフ・コブ戦はともかく、その後のマイキー・ニコルズ&藤田晃生、天山公吉&マスター・ワト、矢野通&オスカー・ロイベとの試合とあっては、いくら興行のハナが大事だといっても他団体のトップレスラーをあまりにもぞんざいに扱いすぎている。これはなぜだろうか?
私は準々決勝の組み合わせでAブロックの選手の相手を見たとき、ふと「ヒクレオのところにSANADAが、SANADAのところに清宮がいたほうがはるかに盛り上がったのではないか?」と感じた。これだと内藤がSANADAに勝利していたろうし(結果として優勝後の興行の流れもこのほうがスムーズだった。)、清宮とEVILの試合は相当に盛り上がったはずだ。しかもここで清宮が勝てば準決勝でオカダ戦ということになり、興行の盛り上がりは最高潮だったろう。
しかし、それこそが新日本側の最も恐れていたことではないか。清宮がG1興行の柱になってしまうのだ。この流れでオカダが清宮に勝っても決勝でその盛り上がりを上回ることができるか。決勝は内藤でもオスプレイでもそれは盛り上がるだろう。しかし、仮に清宮がそこまでの試合のようにベストマッチ連発の内容を見せていたらどうなるか。清宮の試合の積み重ねが新日側にあった「自団体の試合内容やレスラーへの自信」を揺るがせたのではないだろうか?
そうなれば最も安全なのは「観客の記憶の奥に清宮の存在を眠らせる」ことである。それはノア側の「想定外」だったろうことが丸藤の態度に表れている。
しかし、両団体にとって(良くも悪くも)更なる想定外は「G1によって清宮の支持が大きく広がった」ことではなかったか。
清宮敗退の報がネットに流れた際、新日本の方針を批判する発言が多く流れ、想像以上の数の新日本のファンがそれに賛同していたのは正直驚きだった。会場でも第一試合や第二試合の出場であっても大歓声で迎えられた。新日本側のレスラーたちの思いも天山戦後に天山自身が清宮を讃えた態度で伝わってきた。そしてなにより清宮本人が腐ることなくしっかりと試合を行いファンを裏切らなった。これこそ清宮が再三言っていた「ノアを広める」が具体的な形になった瞬間ではなかったか。
清宮は正式に使用技の伝授をされている関係から武藤敬司の影響が語られることが多いのだが、元は三沢光晴に憧れノアの門を叩いた生粋の「三沢チルドレン」である。ここまでの清宮の行動を見ればわかる通り、「レスラーは試合で魅せる」「いざとなったら筋を通す」「ファンを裏切らない」という三沢光晴の思想が彼のレスラーとしての行動に裏打ちされている。彼の恩師である小川良成の指導が大きく花開いた瞬間でもあったと思う。
さらに、清宮はあの若さにして日本プロレス発祥のプロレス技術の継承者としての側面を持っている。彼と新日本でタッグを組んだ大岩陵平は清宮にスカウトされる形でノアに留学となったが、すでにノア道場の道場主でもある清宮は指導者としての側面も期待されている。
突然の自語りであるが、私は嵐オタである。そして同時にライトなプロレスオタクでもある。正確には新日本プロレスオタクであるが。
ドルオタとプオタを兼任している自分から言わせれば、ドルオタとプロレスは非常に相性がいいのだ。なお、ここでの「アイドル」には地下アイドルは含まないこととする。
その理由は以下の4点だ。
①ストーリー性 ②コスパの良さ ③圧倒的に会える ④育て専との相性の良さ
主観によるため異論はもちろんあるだろうが、「まあそんな考えもあるわな」くらいの気持ちで読んでくれるとありがたい。
①ストーリー性
とにかくドルオタは、推しにまつわるストーリーが好きだ(と思っている)。ストーリーを、アイドルの努力、グループへの思い、苦労、葛藤などと言い換えてもいい。NiziUなんかストーリー推しの典型だと思っている。
逆に言えば、ストーリー性のないアイドルは推せないし、推しているアイドルのストーリーをオタクは探しているとも言える。
例えば、内藤哲也選手。内藤さんは正直パッとしない選手で事務所からも冷遇されていた選手だった。しかしヒール(悪役)転向後、人気爆発。過去を踏まえて2017年のG1優勝後のマイク「新日本プロレスの、主役は、俺だ」を聞くと本当に泣ける。
ここぞという時にヒール転向前のフィニッシュホールド(必殺技みたいなもの)を出してくるのもアツい。
2018年のベストオブスーパージュニアで優勝した高橋ヒロム選手のマイクも、ジュニアへの思い、愛、責任などを感じさせるマイクで号泣を禁じ得ない。
また、オタクは推しと他メンや他グループメンとの絡みも大好きだ。
例えば内藤さんと棚橋弘至選手の関係性。内藤さんは元々棚橋さんに憧れを抱いていたが、諸々あって道を違え、とうとう2017年の1.4で内藤さんは棚橋さんに勝利する。
リング上で立ち上がれない棚橋さんを見下ろす内藤さん。一体どうするのかとハラハラしてリングを見つめる観客。そんな観客を尻目に、内藤さんは被っていた帽子を脱ぐと、棚橋さんに一礼してリングを降りていった。
棚橋さんへのリスペクト。過去の自分との決別。これからの自分への決意。そういったものを読み取り、私は配信を見ながら号泣していた。
こういった選手同士の過去の因縁や対立、裏切りと和解がそこらへんに散りばめられている。語り出すと止まらないので、この辺りで終わっておこう。
②コスパの良さ
正直地下アイドルには劣るだろうが、ジャニーズのような超大手に比べればかなりコスパはいいと思う。
新日本プロレスは月額999円で、リアルタイムの配信はもちろん、過去の試合も見放題だ。ハマってすぐに過去配信を見ることもできるし、解約、再登録も可能だ。
そして会場での観戦ついて。
人気のジャニーズは地方に来ない。そのため、地方民は運良くチケットが当たっても、チケット代、旅費、場所によっては宿泊代と結構な額がかかる。実質ファンクラブ会員でないとチケットが取れないため、ファンクラブ代もかかる。
プロレスは、日本各地どこにでも行く。ビッグイベントは都会の大きな箱だが、地方都市にも来てくれる。そのためチケット代だけで観戦できる場合もある。チケットも、普通にぴあとかでとれる。
まあこれは極論住んでいる場所にもよるため、当てはまらない人もいるだろう。
また、少しコスパという観点とはずれるかもしれないが、ジャニーズのライブは、良席だろうが見切れ席だろうが、同じ値段だ。
それに対してプロレスは、「良席欲しくば金を積め」だ。もちろん「この値段でこれ?」という場合もあるが、金は払うから良席をよこせという人からしたら良コスパではないだろうか。
小さい箱での試合では、わりと後ろでも肉眼で選手が見えるのもいいところだ。
③圧倒的に会える
とにかく嵐のライブはチケットが取れなかった。自分のような弱小ぼっちオタクは、1ツアーで1公演行けたら超ラッキー。他のジャニーズのグループも、人気やファンクラブ会員の人数によって差はあれど、似たようなものだろう。
まずプロレスは1年通して試合をしているため、母数が絶対的に多い。先ほど述べたように地方都市にも来てくれるので、自分の場合は車で1時間も走れば年に3、4回は観戦が可能だ。
コロナ禍では厳しいところもあるが、サイン会と撮影会もあった。
撮影会はファンクラブ限定だし、サイン会もグッズ購入は必須だ。対象の選手もランダムだが、いざ参加してみると結構テンションが上がる。嵐ファンの自分からしたら「目の前で話も握手もできてこの値段は実質無料」という気持ちだった。
目の前で場外乱闘が行われることもあり、そんな時は「この距離で見れるなんてマジかよ最高だな」という気持ちになる。
小さい箱では観客の数も必然的に少なくなるので、自分の声が推しに届いているのではという気持ちになれるのも、個人的には嬉しい。
④育て専との相性の良さ
育て専という存在がいる。ジャニーズでいうと、ジャニーズJr.を応援し、デビューまでを見守るような存在だ(あくまで自分の認識だが)。
新日本プロレスにおけるジャニーズJr.は「ヤングライオン」と呼ばれている。
ヤングライオンの試合はグラウンド(関節技)メインの攻防であり、逆エビ固めからのギブアップで試合が終わる。対戦相手の先輩レスラーの得意技やフィニッシュホールドが出されることはまずない。
それは、プロレスが危険な競技だからだ。お互いの技術と信頼がなければ、難易度の高い技、ダメージの大きな技は出せない。そのため、ヤングライオンの試合は基本であるグラウンドが中心となるのもやむを得ない。
しかし、試合と経験を重ねるうちに、ヤングライオンに対してかけられる技の種類が増えていき、逆エビ固め以外の技で試合が終わるようになっていく。そこにヤングライオンの成長を感じる。
このヤングライオンの試合は、だいたい第一試合か第二試合で行われるため、意識的能動的に情報を集めなくても、自然と情報が入ってくる。軽い気持ちで育て専になれるのだ。
推しにお金をかけて育てたい人には不向きかもしれないが、初々しい推しがプロになっていく過程を見届けたい人にはおすすめだ。
また、最近のヤングライオンは海外遠征から帰ってきてヤングライオンを卒業という流れが一般的だ。
新日本プロレスのリングに戻り、ベルトに絡んだりする姿を見ていると、特に推しでなくとも「大きくなったな……」と親のような気持ちになる。
推しを応援しながら若手の推しを探す労力がかなり低いのは、育て専と相性がいいと言えると考える。
ここからは余談だが、プロレス好きあるあるとして、「プロレスって台本あるんでしょ」というかったるい質問を投げかけられる問題がある。類似の質問としては、「アイドルって口パクでしょ」がある。
正直うっせー黙ってろとしか思わない。「映画で感動?あれフィクション、つまり嘘ですよね?」「アニメって所詮絵ですよね?」っていうくらいナンセンスな質問だと思う。
肉体と肉体のぶつかり合いには真実しかないし、2メートル近くの高さから対戦相手に向かって腹から飛び降りるその精神と身体はタフだ。
台本云々とかそういう次元ではないのだ。こっちはこっちで楽しんでいるんだからほっといてくれ。
ということで、ドルオタにプロレスとおすすめしたい理由は以上だ。長々とお目汚し失礼しました。
追記:親和性の高さというより、ドルオタにプロレスをおすすめしたい理由になってしまっていた。親和性の高さでいうと、①ストーリー性くらいだったか?まとめきれてなかった。申し訳ない。