はてなキーワード: 三角関係とは
仲が良くなった女の子が「この子、まだ彼氏ができたことなくて、だからまだ処女なんですけど、
可愛くないですか?」とスマホで自分の女友達の写真を見せてきた。
僕はこういうときの返答はバカのひとつ覚えで、その友達の写真を見るまでもなく、
「横にいるけーこちゃんの方が可愛い」と言った。その写真に吉岡里帆やエマ・ワトソンが映ってても。
他の女の子だと、雑誌の広末涼子のページの切り抜きを見て「こうゆうのが好きなんでしょー」と、
暗に捨てろよと言われたり。男は相手がジャニーズの追っかけを真剣にしてても、嫉妬しなくない?
テレビで見たのだと、お店で奥さんが「お前はさっきの店で、店員の女のお尻を見た」と激怒され、
高速道路上で置き去りにされたとか。
他の異性と楽しそうに話してた、ならまだ、まだ分かるけど。
そんなこと言うなら、AV見ながらのおなにーとか、相手の友達に紹介されて、
こっちの方が可愛いとか心の中で思ったこととか知れたら、どんなんなるんだろうか。
風俗のお店で、いつも指名してる女の子に「お客さんが誰を指名したか女の子は分かったりするんですか?」と聞いたとき、
他の女の子に入ったんだと分かることもある、みたいな回答だったかな。
その上で、それを知ったとき、やっぱりムカつきますかって聞いたら、
「がっかりはするけど、それは自分の魅力が足らないからで、もっと頑張らなきゃって。
でも、私も男の人だったら、色んな女の子と遊びたいのはわかります」って、頭の良い回答。
素直な女の子だと浮気呼ばわりされるかも。ホストクラブのキャストの永久指名とか、
キャストが彼氏だけど他の(お客の)女の子の接客に嫉妬して「仕事だから」と言われて、
「男ってずるいよ!仕事仕事って言って!」と泣いてる女の子の友達の女の子が、
朝6時の歌舞伎町のマックで立ち上がって叫んでるのを見て、若さ故の真っ直ぐさを羨ましく思ってた。
お店の女の子を本当に好きになって、女の子も「私も好き」なんてキスするけど、
もちろん他のお客にも同じ接客するし、プライベートで恋人もいるかも知れないとか想像して嫉妬に狂わないのかな。
いや、お店の掲示板の他のお客への書き込みに嫉妬したり、自分はいちばん通ってるんだから付き合って欲しいとか、
出禁になって拒絶されると、その女の子を殺そうと家まで行って、おばあちゃん殺しちゃう。
41歳でも20際の女の子を本当に真剣に好きになっちゃうことあるけど、みんな我慢してんだよ!
仕事でも優しくしてくれるから好きになっちゃうよね。マックの店員も好きになっちゃうよ。
僕も女の子に「どうして優しくしてくれるんですか」と言われることあるけど、
他の女の子にも同じようにしてるだけだけど、そこで勘違いされても、させても困ることになる。
好きな女の子に言われるなら「当たり前じゃないですか」だけど。
(他の男のおちんちんも舐めるんだろうな普通に)と思ってるけど、
そんな話になった時に聞くと「増田さんだけだから」って言う。僕は気にしないけど。
僕も他の女の子と遊んでるけど、それは絶対に言わない。「けーこさんがいれば他の女の子はいなくても。
それだと世の中が困るから、35億人の女性が全員けーこさんだと、楽しそう。AKB48も全員けーこさん」。
「本気で?w」と笑うけど、実際そうなったらけーこさん同士で争い始めるのか。
三角関係は楽しそうだな、男は。女は殺してやる勢いだけど。女の子はNTR属性なさそうだもんな。
彼女の女友達と結託して、彼女に秘密のアバンチュールは楽しそうだけど、
どうして楽しいんだろい。彼女だけ知らない状況に?バレたら大変なことになるスリルに?
友達は彼女から男を寝取った満足感?知らないのはあなただけ感?男は二人の女の子と仲良くできるから?
サイトで会った女の子に「彼女とかいないんですか?」と聞かれて「いますよ」と答えたとき、
「(彼女が居るのに他の女と遊ぼうとしてるの)信じられない」みたいに冷ややかな表情されたことがあるんだけど、
やっぱりそうなんだろうか。彼女が居るのに彼女と遊ばないのは、その彼女が遊んでくれないからとか言うなら、
彼女側に立って説教されそうな雰囲気。「不倫は文化」発言とかの「不倫許すまじ」は電通の世論操作と思ってたけど、
本当に軽蔑されるんだ。昔は「泥棒猫」と女性を叩いてたけど、昨今は男性をかな。
人のものを取っちゃいけない、って考え方でなくなりはしないと思うんだけど。
女性は当事者になったら、有利な現状から奥さんに「私の方が体の相性も良いし、若いし、
性格もまともだって言ってましたよ!」みたいな宣戦布告して、奪い取ったりしないのかな。
そこでその奪い取る男の「離婚するするしない」の裏切りにあいがちなんだな。
「私とやりたかったら卒業論文出してから来いよ」と言えてたらよかったけど、
結婚しててもいちゃいちゃしたいしね。「家に帰ったら奥さんとはどうしてるの?」
「奥さんともせっくすしてるし、仲は良い方だと思う。。いや、会話もなくて家庭内別居で、
ただ同じ部屋に住んでる同居人って感じ。面倒だから離婚してないだけだよ、ふぅー。家に帰りたくないな」。
「増田さんとのせっくすは気持ち良い。旦那なんて前戯もしなくて、自分がイッたらすぐに寝て。10分ぐらい。
増田さんと結婚したら、週3回。4回かな。月水金土で、お風呂に入って21時くらいに布団敷いて。
1時間か1時間半くらい?それから寝る支度して、23時に寝てとか。あー、そんなの決めないで、
したくなったらすればいいのかな。朝食作ってるとき裸エプロンだったら襲われたり。遅刻しないようにしないと。
夢のある話だなー。
子供ができないからって、奥さんが食事の栄養管理や「今日は妊娠しやすい日だから、早く帰ってきて」と言われて、
家に帰っても「ご飯食べたらお風呂に入って。21時からでいいかな」と予定入れられて、
最中も「こうゆう体位が妊娠しやすいんだって」とか「もういきそう?」とか「いっぱい出た感ある?」とか、
指を入れて舐めて味を確かめて精液の質が分かるようになっててたり、
ティッシュで押さえて逆立ちして「精子くん頑張って卵子ちゃんにたどり着いて!」とか、次の日もで、
「ちゃんとオナニー我慢してる?」とか、終わったら「疲れてるから寝たいの」とかだと、
旦那さんも奥さんとせっくすしたくなくなるんですって!「今日は疲れてて明日にしよう」って拒否すると、
「今日が妊娠しやすい日なんだって!10分で終わるじゃん!なんで協力的じゃないの?妊娠しないのは私が悪いの?」
https://anond.hatelabo.jp/20211003032638
の続き。
実家の片づけをしていると母親から「この変なのもあんたのでしょ」と言われ、もう数冊ラノベが出てきたのでこれも浅くコメントする。
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ドラッグをいっぱい飲んでスタンドみたいなの(悪魔)を出して戦う話。
あれ、こんな今風な絵だったっけ・・・?と思ったら数年後に新装版が出てた。
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■デュラララ
それまで池袋はドラマのIWGPやニュースに流れるカラーギャングの影響も相まって
「暗くて怖い街」のイメージが強かったけど、これを読んで初めて行ってみたくなった。
あと当時はチャットで知らない人と待ち合せてだべるのが立派な趣味(立派ではないか)
だったので、デュラララチャットがリリースされた時は震えた思い出。
ちなみに後年アニメ化して、飲み会の場で今時オシャレオタクみたいな女子が
「デュラララにはまってます~」と言うので、酔っていた俺は思わず
「中坊の時から初版で読んでた!」とワシが育てた感を出して引かれた。
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■バウワウ!
内容がうまく思い出せない。
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実写化もされて思った以上に有名になっていって驚いた。
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主人公が女子になって女子だけの三角関係が生まれるほんわかストーリー。
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今朝私の母親が「この変なの」と言いながらハンペンか何かのように手渡してきた作品である。
自分が購入していた作品の作者が亡くなるという事が初めての経験で、
創作世界の終わりというものを初めて突き付けられたような気持ちがした。
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偶数月末に発売される雑誌。電子版の発売を待って買った。今回はいつもの半分くらいしか掲載作品数がなく、しかも好きなタイトル全部休載という、悲しいことになっていた。
だからといって課金を怠ったあとで休刊になられたら寝覚めが悪すぎなので、定価で購入。ほんとは次号の発売と同時に450円引きくらいになるので、推し作品が載ってない号は値引きを待って買うのが賢いのかもねー。そもそも買わんでもいいのか。
センターで最終回。なんか、攻めと受けが果てしなくセックスしていたという印象なのだが、攻めが虫垂炎で入院したり、攻めが気まぐれに買ってきた仔犬に邪魔されたりとかで、エロ禁していた時期もある……はずだけど、果てしなくセックスばかりしていたような?
初期の頃を読み逃したせいで攻めと受けの関係性がよくわからんのだが、
という理解でいいのだろうか。
最終回。79号表紙もこれ。
すっごい爽やかに終わった。登場人物が高校生だからか、エロなしで終わった。少女漫画的。少女漫画より爽やかだけど。
これまた爽やかな少女漫画的BL! 清涼感すごい。どうしたの今号のCannaは!? いや休載が少ない時でもそんなにドロドロしてないっぽい作品が多いけど。
第2話の後編ということで、心情描写メインで物語が動いたわけではないっぽい。
けもみみ主人×従僕獣
受けの狐の口の描線がふにゃふにゃしてるところが私のツボにヒットした。狐の口のふにゃふにゃをずっと凝視していたい。あと、受けの前足も可愛い。ちゃんと狐っぽい。銀貨を握りしめて人里におりて手袋を買いに行って欲しいお手々。とにかく受けが可愛い。
タイトルが良すぎる。タイトルの語呂が良すぎる。ベルガモット&サニーデイ。声に出して読みたい英語(ただし日本語イントネーションで)。
上司×部下のエロから始まる恋愛はヤバいと思った私は、はてなに毒されてソウルジェムが真っ黒に汚れている。
エロはあるけど爽やか系。今回のCannaはほんと爽やかだな……。
私はこういうSFっぽくてハードボイルドっぽい作風が好きだな!
1話~3話は渋い感じだったが、今回は急にBLっぽくほわほわしてきた。エロはない。この人たちどうやってスケベするんだろう、と謎は深まるばかりの鉄壁な服装(というより装甲と、防護服)。まあ、べつにエロはなくてもいいんだ。
BLというよりはハーレクインとかレディコミみたいな画風。フランス書院っぽい。そもそもCannaはフランス書院が発売しているのだが。けもみみかつ娼館もの。華やかだけどネガティブな娼館っぽい。
受けがすごく美人だが、BLである必要性があるのか謎なほどに女性的。だけど、絵が綺麗だからまあいいかってなる。
最終回。最終回作品のうち、これだけ後半に持っていくのか……。
ぶっちゃけ前半の数話を読んでいないせいで、ストーリーが全くわからん。受けが未亡人的な何かなのかなあ? と想像するのみ。
今号ではこれが一番楽しみだった……。BLを差し置いて宇宙猫の「サン」にスポットが当たりまくる回。2話以降ずっとそうな気もするけど。攻めの「いまぢ」は出張により欠席。受けの「ほづつみ」はいつも通り。
ちゃづけ(犬)×サン
なのではないかという気がしてきた。今回もエロはなし。爽やかだ。でも服は破ける。
よくわからないけど、受け(?)のスタッフが気の利く男だというのはわかった。あ、もしかしてホストの方が受け? 過去回読み直してこよ……。
次号は最推しの『シャングリラの鳥』(座裏屋蘭丸)と『リビングデッド』(朝田ねむい)が掲載されるっぽいので楽しみー!
『鴆――天狼の眼――』(文善やよひ)が次号で最終回らしい。vol.78から最終回ラッシュだなあ。次号は新連載が始まるだろうか?
クィア・リーディングとは、ごく単純化していえば、「女性は男性を、男性は女性を」という異性愛の枠内に収まらない性愛のありかたに注目する作品読解の方法である。
たとえば夏目漱石の『こころ』では「先生」と「K」と「お嬢さん」の三角関係が描かれるが、これを男性である「先生」と「K」が女性である「お嬢さん」を取り合う物語と読むのではなく、「先生」と「K」のあいだに、さらには一連の出来事を語る「先生」と、彼から話を聞く男性の「私」のあいだに同性愛関係を読みとる──そのような可能性をクィア・リーディングは引きだす。
だからといって、異性愛の三角関係として『こころ』を読むことが「誤り」だと主張するわけではない。基本的にクィア・リーディングは、異性愛だけを前提にした読解では抑圧されてしまう要素に光をあてられるようなときに真価を発揮する方法であると言えるだろう。
富野作品って基本的に「大きな状況」にまつわるリアリティと、「メカを売る」という商業的な要請によって構成されている。
パトレイバーで言うなら、「企業の理屈をわかれ!」「労働者の権利はどうなる!」みたいなことをパイロットが叫びながら、レイバーがひたすら戦い続けるみたいな話になる。
一方で富野以外のガンダムの監督だと、ミリタリフェチ的な「戦闘」のリアリティを重視しがちで、パトレイバーの日常目線のリアリティからは乖離するだろうなと思う。
まあ「ポケ戦」はオススメだけど。
しかし閃ハサは「富野原作で監督は別人」という座組が良く作用したのか、あるいは原作の閃ハサが商業性に囚われずに作られたというのもあるのか、主要な人間関係にクローズアップするのがかなり上手くいってる。
テロリストの若きリーダー。対テロ部隊を率いるエリート軍人。二人のあいだで自由に飛び回るファム・ファタール。
戦闘シーンの狂気的な作り込みが話題になってるけど、あれもミリタリフェチのためではなく、物語のリアリティの底上げをするためだとわかる。
・黒宮ティマ
エイレーン学園ぺろぺろ部の部長。サイボーグメイド。現在の登録者数4600。
多くのコラボ企画を仕掛けゲームマスターやMCなどで活躍している。
中でも絵柄はポップだが生命倫理的にヤバい作品が好き(メイドインアビス、カイバなど)。
エイプリルフール企画と誕生日逆凸企画では、3桁後半の登録者数に比べてなかなか高い同時接続数を叩き出した(仲のいいどっとライブとのコラボ効果もあったが同時接続数は全体を通して安定していた)
苦手意識から歌枠やASMRをやらない弱点がある(歌枠は1度だけゲリラでやってアーカイブなし)
声はすごく良いのでせめてシチュエーションボイスのASMR動画を出してほしいと思っている
・月紫アリア
花鋏キョウの所属するRe:AcTの新人。ツインテールの中学生。
高い配信頻度、歌えて絵が描けASMRもできるマルチっぷり、何よりも巧みなメスガキRPでリスナー(ファンネーム:推ぢさん)を引きつける。
働いていたのはもう5年以上前のことだけど大変だったことをなんとなく書いてみる。
①人間関係
私が勤めていたところは男女比が同じくらいで年齢は18~40代とバラバラだった。男はパチンカスかオタク、女は揃って全員病んでいた(酷い子だとスタッフルームで気がついたら自傷していたり、薬でフラフラしながら出勤してくる子もいた)
表ではそこそこ仲よくやっていたがマネージャーや店長がバイトとデキていたり、そもそもバイト同士がセのつくフレンドだったり、三角関係だったり、裏ではかなりごちゃごちゃしていた。送っていくよと言われて車に乗ったらホテルに連れ込まれそうになった事件などもあった。
②仕事内容
メダルコーナーは基本を覚えたらほぼ補充とエラー対応だけなので楽だった。問題はクレーンゲームの方である。ゲーセンにもよるが私がいたところは景品の設置方法などをほぼ自分で考えないといけなかった。マニュアルはないので先輩がやっているのを見て真似してみたり、他の店舗で置き方を見て研究したりするしかなかった。
設定に失敗すると半日でほぼ景品をとられてしまい大赤字ということもある。特に責任をとらされたりはしないがかなりのプレッシャーだった。新人の頃やらかしてお局的な先輩に怒られて涙目になったのは今でも覚えている。今では多い確率機はほとんどなく、本当に取れるかしっかりチェックしていたのでとても大変だった。
③客対応
私がいたところは家族向けだったこともあり家族の客が多かった。もちろん普通の善良な客もいたけれど、いかにも馬鹿な親、そしてアホそうな子供的という家族が本当に多かった。そういう客はだいたいルールに反した遊び方をする。
「こんなの詐欺だろ」「店長を呼べ」「お前の名前と住所教えろよ」「訴えてやるから覚悟しとけよ」と何回怒鳴られたかわからない。最初のうちは本当に怖かった。しかし1年ほど経つとすっかり慣れてあーまた始まったよ、とスルーする力が身に付いた。ゲーセンで働いて一番身についたのは精神的忍耐力だと思う。今でもこの忍耐力は役に立っている。
夜はチャラついた客が多かったがそういう客は見た目と雰囲気に反して普通である。そういう客より先に述べたような家族や老人のが厄介なのだ。老人はとにかく本当にめんどくさい。
こんな職場でも結局4年間働いた。
店舗や地域で環境は全然違うと思うのでもしゲーセンで働きたいならどんな人間が働いてるかと客層を見てから行くのをおすすめする。
以上のお話によって、郷田三郎と、明智小五郎との交渉、又は三郎の犯罪嗜好癖などについて、読者に呑み込んで頂いた上、さて、本題に戻って、東栄館という新築の下宿屋で、郷田三郎がどんな楽しみを発見したかという点に、お話を進めることに致しましょう。
三郎が東栄館の建築が出来上るのを待ち兼ねて、いの一番にそこへ引移ったのは、彼が明智と交際を結んだ時分から、一年以上もたっていました。随したがってあの「犯罪」の真似事にも、もう一向興味がなくなり、といって、外ほかにそれに代る様な事柄もなく、彼は毎日毎日の退屈な長々しい時間を、過し兼ねていました。東栄館に移った当座は、それでも、新しい友達が出来たりして、いくらか気がまぎれていましたけれど、人間というものは何と退屈極きわまる生物なのでしょう。どこへ行って見ても、同じ様な思想を同じ様な表情で、同じ様な言葉で、繰り返し繰り返し、発表し合っているに過ぎないのです。折角せっかく下宿屋を替えて、新しい人達に接して見ても、一週間たつかたたない内に、彼は又しても底知れぬ倦怠けんたいの中に沈み込んで了うのでした。
そうして、東栄館に移って十日ばかりたったある日のことです。退屈の余り、彼はふと妙な事を考えつきました。
彼の部屋には、――それは二階にあったのですが――安っぽい床とこの間まの傍に、一間の押入がついていて、その内部は、鴨居かもいと敷居との丁度中程に、押入れ一杯の巌丈がんじょうな棚があって、上下二段に分れているのです。彼はその下段の方に数個の行李こうりを納め、上段には蒲団をのせることにしていましたが、一々そこから蒲団を取出して、部屋の真中へ敷く代りに、始終棚の上に寝台ベッドの様に蒲団を重ねて置いて、眠くなったらそこへ上って寝ることにしたらどうだろう。彼はそんなことを考えたのです。これが今迄いままでの下宿屋であったら、仮令たとえ押入れの中に同じような棚があっても、壁がひどく汚れていたり、天井に蜘蛛くもの巣が張っていたりして、一寸その中へ寝る気にはならなかったのでしょうが、ここの押入れは、新築早々のことですから、非常に綺麗きれいで、天井も真白なれば、黄色く塗った滑かな壁にも、しみ一つ出来てはいませんし、そして全体の感じが、棚の作り方にもよるのでしょうが、何となく船の中の寝台に似ていて、妙に、一度そこへ寝て見たい様な誘惑を感じさえするのです。
そこで、彼は早速さっそくその晩から押入れの中へ寝ることを始めました。この下宿は、部屋毎に内部から戸締りの出来る様になっていて、女中などが無断で這入はいって来る様なこともなく、彼は安心してこの奇行を続けることが出来るのでした。さてそこへ寝て見ますと、予期以上に感じがいいのです。四枚の蒲団を積み重ね、その上にフワリと寝転んで、目の上二尺ばかりの所に迫っている天井を眺める心持は、一寸異様な味あじわいのあるものです。襖ふすまをピッシャリ締め切って、その隙間から洩れて来る糸の様な電気の光を見ていますと、何だかこう自分が探偵小説の中の人物にでもなった様な気がして、愉快ですし、又それを細目に開けて、そこから、自分自身の部屋を、泥棒が他人の部屋をでも覗く様な気持で、色々の激情的な場面を想像しながら、眺めるのも、興味がありました。時によると、彼は昼間から押入に這入り込んで、一間と三尺の長方形の箱の様な中で、大好物の煙草をプカリプカリとふかしながら、取りとめもない妄想に耽ることもありました。そんな時には、締切った襖の隙間から、押入れの中で火事でも始ったのではないかと思われる程、夥しい白煙が洩れているのでした。
ところが、この奇行を二三日続ける間に、彼は又しても、妙なことに気がついたのです。飽きっぽい彼は、三日目あたりになると、もう押入れの寝台ベッドには興味がなくなって、所在なさに、そこの壁や、寝ながら手の届く天井板に、落書きなどしていましたが、ふと気がつくと、丁度頭の上の一枚の天井板が、釘を打ち忘れたのか、なんだかフカフカと動く様なのです。どうしたのだろうと思って、手で突っぱって持上げて見ますと、なんなく上の方へ外はずれることは外れるのですが、妙なことには、その手を離すと、釘づけにした箇所は一つもないのに、まるでバネ仕掛けの様に、元々通りになって了います。どうやら、何者かが上から圧おさえつけている様な手ごたえなのです。
はてな、ひょっとしたら、丁度この天井板の上に、何か生物が、例えば大きな青大将あおだいしょうか何かがいるのではあるまいかと、三郎は俄にわかに気味が悪くなって来ましたが、そのまま逃げ出すのも残念なものですから、なおも手で押し試みて見ますと、ズッシリと、重い手ごたえを感じるばかりでなく、天井板を動かす度に、その上で何だかゴロゴロと鈍い音がするではありませんか。愈々いよいよ変です。そこで彼は思切って、力まかせにその天井板をはね除のけて見ますと、すると、その途端、ガラガラという音がして、上から何かが落ちて来ました。彼は咄嗟とっさの場合ハッと片傍かたわきへ飛びのいたからよかったものの、若もしそうでなかったら、その物体に打たれて大怪我おおけがをしている所でした。
「ナアンダ、つまらない」
ところが、その落ちて来た品物を見ますと、何か変ったものでもあればよいがと、少からず期待していた彼は、余りのことに呆あきれて了いました。それは、漬物石つけものいしを小さくした様な、ただの石塊いしころに過ぎないのでした。よく考えて見れば、別に不思議でも何でもありません。電燈工夫が天井裏へもぐる通路にと、天井板を一枚丈け態わざと外して、そこから鼠ねずみなどが押入れに這入はいらぬ様に石塊で重しがしてあったのです。
それは如何いかにも飛んだ喜劇でした。でも、その喜劇が機縁となって、郷田三郎は、あるすばらしい楽みを発見することになったのです。
彼は暫しばらくの間、自分の頭の上に開いている、洞穴ほらあなの入口とでも云った感じのする、その天井の穴を眺めていましたが、ふと、持前もちまえの好奇心から、一体天井裏というものはどんな風になっているのだろうと、恐る恐る、その穴に首を入れて、四方あたりを見廻しました。それは丁度朝の事で、屋根の上にはもう陽が照りつけていると見え、方々の隙間から沢山の細い光線が、まるで大小無数の探照燈を照してでもいる様に、屋根裏の空洞へさし込んでいて、そこは存外明るいのです。
先まず目につくのは、縦に、長々と横よこたえられた、太い、曲りくねった、大蛇の様な棟木むなぎです。明るいといっても屋根裏のことで、そう遠くまでは見通しが利かないのと、それに、細長い下宿屋の建物ですから、実際長い棟木でもあったのですが、それが向うの方は霞んで見える程、遠く遠く連つらなっている様に思われます。そして、その棟木と直角に、これは大蛇の肋骨あばらに当る沢山の梁はりが両側へ、屋根の傾斜に沿ってニョキニョキと突き出ています。それ丈けでも随分雄大な景色ですが、その上、天井を支える為に、梁から無数の細い棒が下っていて、それが、まるで鐘乳洞しょうにゅうどうの内部を見る様な感じを起させます。
「これは素敵だ」
一応屋根裏を見廻してから、三郎は思わずそう呟つぶやくのでした。病的な彼は、世間普通の興味にはひきつけられないで、常人には下らなく見える様な、こうした事物に、却かえって、云い知れぬ魅力を覚えるのです。
その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まりました。夜となく昼となく、暇さえあれば、彼は泥坊猫の様に跫音あしおとを盗んで、棟木や梁の上を伝い歩くのです。幸さいわいなことには、建てたばかりの家ですから、屋根裏につき物の蜘蛛の巣もなければ、煤すすや埃ほこりもまだ少しも溜っていず、鼠の汚したあとさえありません。それ故ゆえ着物や手足の汚くなる心配はないのです。彼はシャツ一枚になって、思うがままに屋根裏を跳梁ちょうりょうしました。時候も丁度春のことで、屋根裏だからといって、さして暑くも寒くもないのです。
三
東栄館の建物は、下宿屋などにはよくある、中央まんなかに庭を囲んで、そのまわりに、桝型ますがたに、部屋が並んでいる様な作り方でしたから、随って屋根裏も、ずっとその形に続いていて、行止ゆきどまりというものがありません。彼の部屋の天井裏から出発して、グルッと一廻りしますと、又元の彼の部屋の上まで帰って来る様になっています。
下の部屋部屋には、さも厳重に壁で仕切りが出来ていて、その出入口には締りをする為の金具まで取りつけているのに、一度天井裏に上って見ますと、これは又何という開放的な有様でしょう。誰の部屋の上を歩き廻ろうと、自由自在なのです。若し、その気があれば、三郎の部屋のと同じ様な、石塊の重しのしてある箇所が所々にあるのですから、そこから他人の部屋へ忍込んで、窃盗を働くことも出来ます。廊下を通って、それをするのは、今も云う様に、桝型の建物の各方面に人目があるばかりでなく、いつ何時なんどき他の止宿人ししゅくにんや女中などが通り合わさないとも限りませんから、非常に危険ですけれど、天井裏の通路からでは、絶対にその危険がありません。
それから又、ここでは、他人の秘密を隙見することも、勝手次第なのです。新築と云っても、下宿屋の安普請やすぶしんのことですから、天井には到る所に隙間があります。――部屋の中にいては気が附きませんけれど、暗い屋根裏から見ますと、その隙間が意外に大きいのに一驚いっきょうを喫きっします――稀には、節穴さえもあるのです。
この、屋根裏という屈指の舞台を発見しますと、郷田三郎の頭には、いつのまにか忘れて了っていた、あの犯罪嗜好癖が又ムラムラと湧き上って来るのでした。この舞台でならば、あの当時試みたそれよりも、もっともっと刺戟の強い、「犯罪の真似事」が出来るに相違ない。そう思うと、彼はもう嬉しくて耐たまらないのです。どうしてまあ、こんな手近な所に、こんな面白い興味があるのを、今日まで気附かないでいたのでしょう。魔物の様に暗闇の世界を歩き廻って、二十人に近い東栄館の二階中の止宿人の秘密を、次から次へと隙見して行く、そのこと丈けでも、三郎はもう十分愉快なのです。そして、久方振りで、生き甲斐を感じさえするのです。
彼は又、この「屋根裏の散歩」を、いやが上にも興深くするために、先ず、身支度からして、さも本物の犯罪人らしく装うことを忘れませんでした。ピッタリ身についた、濃い茶色の毛織のシャツ、同じズボン下――なろうことなら、昔活動写真で見た、女賊プロテアの様に、真黒なシャツを着たかったのですけれど、生憎あいにくそんなものは持合せていないので、まあ我慢することにして――足袋たびを穿はき、手袋をはめ――天井裏は、皆荒削あらけずりの木材ばかりで、指紋の残る心配などは殆どないのですが――そして手にはピストルが……欲しくても、それもないので、懐中電燈を持つことにしました。
夜更けなど、昼とは違って、洩れて来る光線の量が極く僅かなので、一寸先も見分けられぬ闇の中を、少しも物音を立てない様に注意しながら、その姿で、ソロリソロリと、棟木の上を伝っていますと、何かこう、自分が蛇にでもなって、太い木の幹を這い廻っている様な気持がして、我ながら妙に凄くなって来ます。でも、その凄さが、何の因果か、彼にはゾクゾクする程嬉しいのです。
こうして、数日、彼は有頂天になって、「屋根裏の散歩」を続けました。その間には、予期にたがわず、色々と彼を喜ばせる様な出来事があって、それを記しるす丈けでも、十分一篇の小説が出来上る程ですが、この物語の本題には直接関係のない事柄ですから、残念ながら、端折はしょって、ごく簡単に二三の例をお話するに止とどめましょう。
天井からの隙見というものが、どれ程異様な興味のあるものだかは、実際やって見た人でなければ、恐らく想像も出来ますまい。仮令、その下に別段事件が起っていなくても、誰も見ているものがないと信じて、その本性をさらけ出した人間というものを観察すること丈けで、十分面白いのです。よく注意して見ますと、ある人々は、その側に他人のいるときと、ひとりきりの時とでは、立居ふるまいは勿論もちろん、その顔の相好そうごうまでが、まるで変るものだということを発見して、彼は少なからず驚きました。それに、平常ふだん、横から同じ水平線で見るのと違って、真上から見下すのですから、この、目の角度の相違によって、あたり前の座敷が、随分異様な景色に感じられます。人間は頭のてっぺんや両肩が、本箱、机、箪笥たんす、火鉢などは、その上方の面丈けが、主として目に映ります。そして、壁というものは、殆ど見えないで、その代りに、凡ての品物のバックには、畳が一杯に拡っているのです。
何事がなくても、こうした興味がある上に、そこには、往々おうおうにして、滑稽こっけいな、悲惨な、或は物凄い光景が、展開されています。平常過激な反資本主義の議論を吐いている会社員が、誰も見ていない所では、貰もらったばかりの昇給の辞令を、折鞄おりかばんから出したり、しまったり、幾度も幾度も、飽かず打眺うちながめて喜んでいる光景、ゾロリとしたお召めしの着物を不断着ふだんぎにして、果敢はかない豪奢振ごうしゃぶりを示している、ある相場師が、いざ床とこにつく時には、その、昼間はさも無雑作むぞうさに着こなしていた着物を、女の様に、丁寧に畳んで、床の下へ敷くばかりか、しみでもついたのと見えて、それを丹念に口で嘗なめて――お召などの小さな汚れは、口で嘗めとるのが一番いいのだといいます――一種のクリーニングをやっている光景、何々大学の野球の選手だというニキビ面の青年が、運動家にも似合わない臆病さを以て、女中への附文つけぶみを、食べて了った夕飯のお膳の上へ、のせて見たり、思い返して、引込めて見たり、又のせて見たり、モジモジと同じことを繰返している光景、中には、大胆にも、淫売婦(?)を引入れて、茲ここに書くことを憚はばかる様な、すさまじい狂態を演じている光景さえも、誰憚らず、見たい丈け見ることが出来るのです。
三郎は又、止宿人と止宿人との、感情の葛藤かっとうを研究することに、興味を持ちました。同じ人間が、相手によって、様々に態度を換えて行く有様、今の先まで、笑顔で話し合っていた相手を、隣の部屋へ来ては、まるで不倶戴天ふぐたいてんの仇あだででもある様に罵ののしっている者もあれば、蝙蝠こうもりの様に、どちらへ行っても、都合のいいお座なりを云って、蔭でペロリと舌を出している者もあります。そして、それが女の止宿人――東栄館の二階には一人の女画学生がいたのです――になると一層興味があります。「恋の三角関係」どころではありません。五角六角と、複雑した関係が、手に取る様に見えるばかりか、競争者達の誰れも知らない、本人の真意が、局外者の「屋根裏の散歩者」に丈け、ハッキリと分るではありませんか。お伽噺とぎばなしに隠かくれ蓑みのというものがありますが、天井裏の三郎は、云わばその隠れ蓑を着ているも同然なのです。
若しその上、他人の部屋の天井板をはがして、そこへ忍び込み、色々ないたずらをやることが出来たら、一層面白かったでしょうが、三郎には、その勇気がありませんでした。そこには、三間に一箇所位の割合で、三郎の部屋のと同様に、石塊いしころで重しをした抜け道があるのですから、忍び込むのは造作もありませんけれど、いつ部屋の主が帰って来るか知れませんし、そうでなくとも、窓は皆、透明なガラス障子しょうじになっていますから、外から見つけられる危険もあり、それに、天井板をめくって押入れの中へ下り、襖をあけて部屋に這入り、又押入れの棚へよじ上って、元の屋根裏へ帰る、その間には、どうかして物音を立てないとは限りません。それを廊下や隣室から気附かれたら、もうおしまいなのです。
さて、ある夜更けのことでした。三郎は、一巡ひとまわり「散歩」を済ませて、自分の部屋へ帰る為に、梁から梁を伝っていましたが、彼の部屋とは、庭を隔てて、丁度向い側になっている棟の、一方の隅の天井に、ふと、これまで気のつかなかった、幽かすかな隙間を発見しました。径二寸ばかりの雲形をして、糸よりも細い光線が洩れているのです。なんだろうと思って、彼はソッと懐中電燈を点ともして、検しらべて見ますと、それは可也かなり大きな木の節で、半分以上まわりの板から離れているのですが、あとの半分で、やっとつながり、危く節穴になるのを免れたものでした。一寸爪の先でこじさえすれば、何なく離れて了い相なのです。そこで、三郎は外ほかの隙間から下を見て、部屋の主が已すでに寝ていることを確めた上、音のしない様に注意しながら、長い間かかって、とうとうそれをはがして了いました。都合のいいことには、はがした後の節穴が、杯さかずき形に下側が狭くなっていますので、その木の節を元々通りつめてさえ置けば、下へ落ちる様なことはなく、そこにこんな大きな覗き穴があるのを、誰にも気附かれずに済むのです。
これはうまい工合ぐあいだと思いながら、その節穴から下を覗いて見ますと、外の隙間の様に、縦には長くても、幅はせいぜい一分ぶ内外の不自由なのと違って、下側の狭い方でも直径一寸以上はあるのですから、部屋の全景が、楽々と見渡せます。そこで三郎は思わず道草を食って、その部屋を眺めたことですが、それは偶然にも、東栄館の止宿人の内で、三郎の一番虫の好かぬ、遠藤えんどうという歯科医学校卒業生で、目下はどっかの歯医者の助手を勤めている男の部屋でした。その遠藤が、いやにのっぺりした虫唾むしずの走る様な顔を、一層のっぺりさせて、すぐ目の下に寝ているのでした。馬鹿に几帳面きちょうめんな男と見えて、部屋の中は、他のどの止宿人のそれにもまして、キチンと整頓せいとんしています。机の上の文房具の位置、本箱の中の書物の並べ方、蒲団の敷き方、枕許まくらもとに置き並べた、舶来物でもあるのか、見なれぬ形の目醒めざまし時計、漆器しっきの巻煙草まきたばこ入れ、色硝子いろがらすの灰皿、何いずれを見ても、それらの品物の主人公が、世にも綺麗きれい好きな、重箱の隅を楊子ようじでほじくる様な神経家であることを証拠立てています。又遠藤自身の寝姿も、実に行儀がいいのです。ただ、それらの光景にそぐわぬのは、彼が大きな口を開あいて、雷の様に鼾いびきをかいていることでした。
三郎は、何か汚いものでも見る様に、眉をしかめて、遠藤の寝顔を眺めました。彼の顔は、綺麗といえば綺麗です。成程彼自身で吹聴ふいちょうする通り、女などには好かれる顔かも知れません。併し、何という間延びな、長々とした顔の造作でしょう。濃い頭髪、顔全体が長い割には、変に狭い富士額ふじびたい、短い眉、細い目、始終笑っている様な目尻の皺しわ、長い鼻、そして異様に大ぶりな口。三郎はこの口がどうにも気に入らないのでした。鼻の下の所から段を為なして、上顎うわあごと下顎とが、オンモリと前方へせり出し、その部分一杯に、青白い顔と妙な対照を示して、大きな紫色の唇が開いています。そして、肥厚性鼻炎ひこうせいびえんででもあるのか、始終鼻を詰つまらせ、その大きな口をポカンと開けて呼吸をしているのです。寝ていて、鼾をかくのも、やっぱり鼻の病気のせいなのでしょう。
三郎は、いつでもこの遠藤の顔を見さえすれば、何だかこう背中がムズムズして来て、彼ののっぺりした頬っぺたを、いきなり殴なぐりつけてやり度たい様な気持になるのでした。
四
そうして、遠藤の寝顔を見ている内に、三郎はふと妙なことを考えました。それは、その節穴から唾つばをはけば、丁度遠藤の大きく開いた口の中へ、うまく這入りはしないかということでした。なぜなら、彼の口は、まるで誂あつらえでもした様に、節穴の真下の所にあったからです。三郎は物好きにも、股引ももひきの下に穿いていた、猿股さるまたの紐を抜出して、それを節穴の上に垂直に垂らし、片目を紐にくっつけて、丁度銃の照準でも定める様に、試して見ますと、不思議な偶然です。紐と節穴と、遠藤の口とが、全く一点に見えるのです。つまり節穴から唾を吐けば、必ず彼の口へ落ちるに相違ないことが分ったのです。
併し、まさかほんとうに唾を吐きかける訳にも行きませんので、三郎は、節穴を元の通りに埋うずめて置いて、立去ろうとしましたが、其時そのとき、不意に、チラリとある恐しい考えが、彼の頭に閃きました。彼は思わず、屋根裏の暗闇の中で、真青になって、ブルブルと震えました。それは実に、何の恨うらみもない遠藤を殺害するという考えだったのです。
彼は遠藤に対して何の恨みもないばかりか、まだ知り合いになってから、半月もたってはいないのでした。それも、偶然二人の引越しが同じ日だったものですから、それを縁に、二三度部屋を訪ね合ったばかりで別に深い交渉がある訳ではないのです。では、何故なにゆえその遠藤を、殺そうなどと考えたかといいますと、今も云う様に、彼の容貌や言動が、殴りつけたい程虫が好かぬということも、多少は手伝っていましたけれど、三郎のこの考かんがえの主たる動機は、相手の人物にあるのではなくて、ただ殺人行為そのものの興味にあったのです。先からお話して来た通り、三郎の精神状態は非常に変態的で、犯罪嗜好癖ともいうべき病気を持ってい、その犯罪の中でも彼が最も魅力を感じたのは殺人罪なのですから、こうした考えの起るのも決して偶然ではないのです。ただ今までは、仮令屡々しばしば殺意を生ずることがあっても、罪の発覚を恐れて、一度も実行しようなどと思ったことがないばかりなのです。
ところが、今遠藤の場合は、全然疑うたがいを受けないで、発覚の憂うれいなしに、殺人が行われ相そうに思われます。我身に危険さえなければ、仮令相手が見ず知らずの人間であろうと、三郎はそんなことを顧慮こりょするのではありません。寧むしろ、その殺人行為が、残虐であればある程、彼の異常な慾望は、一層満足させられるのでした。それでは、何故遠藤に限って、殺人罪が発覚しない――少くとも三郎がそう信じていたか――といいますと、それには、次の様な事情があったのです。
東栄館へ引越して四五日たった時分でした。三郎は懇意こんいになったばかりの、ある同宿者と、近所のカフェへ出掛けたことがあります。その時同じカフェに遠藤も来ていて、三人が一つテーブルへ寄って酒を――尤もっとも酒の嫌いな三郎はコーヒーでしたけれど――飲んだりして、三人とも大分いい心持になって、連立つれだって下宿へ帰ったのですが、少しの酒に酔っぱらった遠藤は、「まあ僕の部屋へ来て下さい」と無理に二人を、彼の部屋へ引ぱり込みました。遠藤は独ひとりではしゃいで、夜が更けているのも構わず、女中を呼んでお茶を入れさせたりして、カフェから持越しの惚気話のろけばなしを繰返すのでした。――三郎が彼を嫌い出したのは、その晩からです――その時、遠藤は、真赤に充血した脣くちびるをペロペロと嘗め廻しながら