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2020-02-18

[] #83-8「キトゥンズ」

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「皆よ、案ずるな。既に今後のことは考えてある」

無力感に打ちひしがれる中、モーロックは動じなかった。

「残念だが、こうなった以上は別のところへ移り住む他あるまい」

「別のところ……ってアテはあるんですか」

「無論ある。そこへ向かうため、ここに皆を呼んだのだから

モーロックの威厳に、仲間達も希望を取り戻していく。

しかし、後に続く言葉に、皆の顔はフタタビ沈んでいった。

「その場所とは……“ネコの国”だ」

「も、モーロック、それは……クレイジーです」

補佐役のダージンも、その提案は受け入れにくかった。

俺も同じだ。

「ヒトがのさばる世界で、ネコがための地は限られておる。もし他にあるというのなら聞き入れよう」

しかしモーロックに代案を出せるものもいなかった。

実際、“ある一点”を除けば、『ネコの国』は今いる場所よりも優れた地だ。

周りに耳障りなものも、臭いものも少ない。

腹が減ったら、目についた獲物をとることも可能だ。

しかし、そこを新天地にするとして……果たして可能なんでしょうか?」

問題は、そこには別のネコたちが多くいるという点だ。

より良い場所であるが故に、あそこにいるネコたちは縄張り意識が非常に強い。

そして仲間意識も強く、新参が入ってくることを毛嫌いする。

それでも入りたければ、強さにものを言わせて存在感を示すしかないだろう。

「だが、それができるのならば、我々は元からここにいません」

いや、仮にできたとしても、好んでやりたくはない。

この集会所にいるネコたちは争いを好まない集まりだ。

それに、自分達のために他の住処を奪うことは、俺たちを追い出そうとするヒトたちと変わらない。

「分かっておる。だから、わしは少し前に『ネコの国』へ赴き、そこのヌシに話をしにいった」

「モーロックが……どうやって!?

「わしはこう見えても、あそこで偉い立場だったのだ。若い頃の話じゃがな」

「ええっ!?

さらりと明かされた過去に、一同は飛び上がるほど驚愕している。

俺も毛が抜けるんじゃないかってくらい内心びっくりしていた。

「まあ、詳細は省くが、それからやかんやあってな……お望みとあらば、聞かせてやろう~か?」

「いや……結構です」

またも歌って説明しようとするモーロックを、ダージン粛々と静止する。

実のところ少しだけ気にはなるが、今はそれよりも『ネコの国』に行けるかどうかだ。

「それで? その“ヌシ”とやらと話はついたのか?」

「うむ……全員受け入れることを約束してくれた」

「おおっ! やったぁ!」

一部のネコは、予想外の結果に喜び勇んだ。

しかし、ケンジャやダージンたちのような、頭の回るネコたちの顔色は優れない。

そう簡単にコトが運ぶわけがないことは想像がつくからだ。

「……モーロック、なにか条件を提示されたでしょう」

ケンジャの詰問にモーロックは苦々しく応えた。

「うむ……“認めさせろ”と言われた。わしらが『ネコの国』を治めれば、否が応でも納得するだろうと」

その言葉に、ほとんどのネコは凍りついた。

「それ……どういう意味?」

キンタは察しが付かないのか、それとも認めたくないのか、俺に恐る恐る尋ねてきた

「つまり……“戦って、勝て”ってことだ」

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