はてなキーワード: ゲヘナとは
幼なじみのマリちゃんと正式に付き合ってもうすぐ1年。そしてその日にオレたちは結婚式を挙げることになっている。
敬虔なクリスチャンである彼女の強い希望で、オレたちは結婚するまで「プラトニックな関係」でいる約束をしている。
オレはクリスチャンではないが、諸般の事情により意図せず純潔を保ち続けているため、一刻も早く行為におよびたかったのだが、
愛するマリちゃんのために「そういうプレイ」だと自分に言い聞かせて興奮・・・じゃなくて辛抱してきた。
披露宴会場での打ち合わせの帰り、いつものようにカフェに寄ったら、思い詰めた表情でマリちゃんがこう切り出した。
「ヨー君、実は、この結婚の話、なかったことにしてもらいたいの」
「え?ちょっと、いきなり何言ってんの?」
「三ヶ月・・・なの」
よく分からないけど、本物っぽい。
「もちろん、ヨー君の子どもじゃないの。だから、私、ヨー君とは結婚できない」
マリちゃんはうつむいたまま、シクシクと泣き出し、オレは頭の中が真っ白になってしまった。
落ち着いて整理しよう。父親はオレじゃない。つまり二股掛けられていたってことか?いやいやマリちゃんに限ってそれはない。ないはず。ないかも。
ってことは誰かに無理矢理?職場にちょっとエッチな上司がいるって言ってたけどそいつなのか?まさかそいつと不倫していたとか??
いやいやいや、敬虔なクリスチャンのマリちゃんに限ってそれはない。でも、戒律で禁止されればされるほど興奮・・・って何を考えてるんだ、オレは。
「・・・・」
「オレと別れてその相手と一緒になるってこと?」
「・・・・」
「黙ってないで、教えてよ。いきなりこんなこと言われて、オレ、訳がわかんないよ!」
ついつい、声を荒げてしまった。
回想:
どーもー!天使ですっ!今日は顔だけでも覚えて帰って下さいね~ってここはあなたの家だっての!
この度はおめでとうございます!なんとあなたは全人類の中から選ばれ、神様の子どもを妊娠するという大役をゲットされました!
いよっ!憎いよっこの大法皇っ!!
で、早速なんですけど、子どもの名前は「イエス」って付けてくださいね。これ、決まりなんで。
イエス以外はノーね、なんちゃって!ヒア・カムズ・ザ・フラッド!!
そいじゃまたー!
「・・・ってことがあったの。私、てっきり夢だと思ってたんだけど、生理が来なくなって念のために検査薬で調べたら陽性だったから慌てて病院に行ったの。そしたら『三ヶ月ですね』って・・・」
「マリちゃん。そんな作り話でオレが納得するとでも思うの?オレのこと嫌いになったならそう言ってくれよ。別の男と一緒になりたいなら、正直にそう言ってくれよ!その方がこんな言い訳されるよりよっぽどましだよっ!!」
「ヨー君!聞いて!」
涙をボロボロとこぼしながらマリちゃんが絞り出すように言った。
「私だって信じられないよ。でも、本当なんだよ・・・。私、ヨー君以外の男の人と付き合ったこともないし、今でもヨー君のことが大好きだし、大切に思ってる。でも、こんな話、ヨー君が信じられないのもよく分かるの。疑がって当然よね・・・。だから、結婚はなしにしてください。何も言わず、このまま私のことは忘れてほしいの。ワガママ言ってごめんなさい・・・。私、一人でこの子を産んで育てる。神様の子どもだもん、きっとなんとかなるわ・・・それじゃ、さよなら」
「ちょっと待ってよ!」
オレとはプラトニックな付き合いをしながら、別の男と寝ていたのか?
そういや「一人で育てる」って言ってな。妊娠を告げた相手に捨てられたのかもしれないな。なんて野郎だ!いや、彼女もか。
二股掛けてたんだから、自業自得だよな・・・そんな子と結婚しなくて良かったじゃないか・・・。
無理矢理自分を納得させようとするも、彼女の「神様の子どもだもん・・」と言った時の作り笑いが脳裏に浮かんでくる。
どんな時だってオレのことを気遣い、自分の事は後回しにしてたっけ。
オレの仕事の愚痴を、頷きながらいつまでも静かに聞いてくれたっけ。
「今どきそんな彼女はいねーよ!いろんな意味で!」と友達に何度言われたことか・・・。
回想:
どーもー!誉世夫(よせふ)君、こんばんは!天使ですー!って見りゃ分かるっての!?
すでに真莉愛ちゃんから聞いてると思うけど、彼女には神様の子どもを産んでもらうことになったのよ。
2000年に一度あるかないかのビッグ・イベント!それに選ばれたんだから宝くじ当たるよりもすごいことよ。
あ、今「宝くじの方が・・・」とか思ったでしょ? この、欲深男っ! 燃えるゲヘナに投げ込んじゃうぞ!
そうそう、神様はエッチなことしないから彼女は今でも処女だから心配しないでね。ったく処女厨めんどくせーな、もう!
「って言われてサ。笑っちゃうよね?でも、たしかに天使の言うとおりだなって思ってサ。だから、オレ、マリちゃんと一緒に『神様の子ども』、育てたいなって思ったんだけど、いいかな?」
「ヨー君・・・」
こうしてオレたちは予定通り結婚した。
ったく処女厨めんどくせーな、もう!
それからと言うもの、借金を繰り返しては酒とドラッグに溺れる日々であった。
「ちくしょう……! なんで俺がこんな目にあわなきゃいけないんだ!」
『あなたを幸せにするお手伝いさせてください。必ずや人生を取り戻して見せます』
その手紙にはその文章と一緒に、目的地までの地図が添えられており、それに従って歩いていくと巨大な屋敷の前に到着した。
洋館風の屋敷はまるで物語に出てくるような立派なもので、入り口前にはスーツ姿の男達が出迎えてくれた。
そして彼等に連れられて入った部屋には一人の白衣の老人がいた。
「よくきてくれたのう。わしらはちょうどお主のようなウサギを欲していたのじゃ」
そう言って差し出された名刺を見るとそこにはこう書かれていた。
「わしらの技術を結集しお主を改造ウサギ【テケリ・リ】にしてあげましょう……」
ウサギは老人のその申し出に対して、一も二もなく飛びついた。
「どうせ俺はもう何もかも失ったウサギだ……。この先に何があっても構わない」
手術代に乗せられたウサギの体には数え切れないほどのチューブが刺さり、薬品のようなものを入れられていく。
「うぎゃああぁあ!?︎なんだこれは……?体が熱いぃいいい!!」
拘束されたウサギは絶叫をあげ悶える。
「何まだ改造手術は始まったばかりじゃよ。お主はこれに耐えなければならん。耐えればきっと良い事あるぞい?」
老人の言葉など耳に入らない。それほどまでに痛みは強く意識を失いそうになるほど辛いものだった。
「ひぐぅっ……!!あがっ……!」
チューブから入れられた薬品は体を熱くし全身の筋肉を強化するものだと説明されたが、それにしても限度があるだろうと思うほどの苦痛に襲われる。
「うぐうぅッー!!助けて……誰かぁ!」
だがそれでもウサギは決して弱音を吐かなかった。なぜなら自分はこれから全てをやり直すことができるからだ。
「えぇいっうるさいのう、黙っておれ」
ドゴォン!
「ごふぉおおおおっ!?︎」
内蔵を押し潰すかのような衝撃を受け、ウサギは大きく目を見開く。
「静かにせんか、まだまだ薬を入れるぞい?」
そう言われてウサギは再び悲鳴を上げることをやめ、歯を食いしばった。
(大丈夫だ、これくらいなら耐えられる)
ウサギはこの苦しみさえ乗り越えることができたら全てが手に入ると思っていた。
ウサギはただひたすらに待ち続けた。自分の未来を掴むその時が来るまで……。
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一方ウサギとの競争に勝った亀はというと、何もかもがうまくいき幸せな生活を送っていた。
さらには会社を立ち上げ事業は成功。今はIPO直前の大事な時期である。
そんな彼が今何をしているかというと、社長室でのんびりとコーヒーを飲みながら秘書と雑談していた。
「ウサギとの競争に勝ってからというもの、人生は何をするにしても順調そのものですね。これも全てあの時のウサギのおかげでしょうか?」
彼は数年前のことを思い出した。
それは彼にとってはとても懐かしい記憶であった。
「そうだね。ウサギとの競争がなかったら、あの時の競争に勝っていなかったらボクはこの会社をここまで大きく成長させることはできなかったかもしれない」
しかし未だにウサギへの感謝の気持ちを忘れたことは一度もなかった。
「彼は今何をしているんだろうか」
亀との競争に敗れたウサギ。その社会的な評判はかなりひどいものであった。
亀にはひっそりとウサギが行方をくらました理由もよくわかっていた。だから、ウサギの行方を追いかけるようなことはしなかった。
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あの日、改造手術を受けてからというものウサギは地獄の日々を送っていた。
薬で無理やり強化された体は常に火照り、筋肉ははち切れそうな程パンプアップされている。
改造はあの手術だけで終わりではなかったのだ。
「ぐふっ……」
筋肉の量が明らかに増え、身長は伸びた。そしてその背中には巨大な白い羽が生えてきた。
その姿はさながら天使のようであったが、もちろん彼本人はそれを喜べる心境ではない。
むしろその逆、ウサギは自分の体が作り変わっていくことに恐怖を感じていた。
「うぎゅ……ぅ……」
毎日のように浴びせられる激痛、そして徐々に変わりゆく肉体。
「アハァ……キモチイィ……」
もはやかつてのウサギの面影はなく、そこにいるのは快楽を求めるだけの醜悪な生き物だった。
秘密結社での管理生活をされていたある日の事、ついにその日はやってきた。
「テケリ・リ……」
同時に彼の精神の奥底。その怒りが噴出した。
ウサギの人生を台無しにした亀に対する恨みつらみに、ウサギの精神は焼かれていく。
ウサギの体がガタガタと震え出す。
それと同時にウサギの目が大きく見開き、体が膨れ上がっていく。
「うがぁああぁああぁあ!!!!」
ウサギの全身の毛が抜け落ち、肌は褐色に染まり、歯は牙のように鋭くなっていく。
そして、ウサギはその場から飛び立つと天井を突き破り遥か上空へと飛んでいった。
「テケ……リ……リ……!」
ウサギはそう呟きながら飛び続け、亀の会社があるビルの上までやってくる。
ガシャァアン!! ガラスは粉々に砕け散った。
バリン!ベチャッ!グシュ! 次々と窓を破壊し、建物の中に侵入していく。
「助けてくれぇ!」
「ひぃいいっ!」
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「なんだか騒がしいな」
社長室にいた亀はそう言って立ち上がった。
確かにビルの別フロアで何か騒ぎが起きており、なんだか慌ただしくなっている。
何が起きたのかはわからないが、ただごとではない雰囲気を亀は感じ取っていた。
社長室を後にし、亀は階段を使って騒ぎのあるフロアへと移動した。
そしてたどり着いた先で、彼は信じられないものを見た。
「これは一体どういうことだ!?︎」
亀は思わず叫んだ。
血まみれになって倒れている人、ガラスの破片によって傷を負った人の姿がそこにあった。
「おい、大丈夫か?」
亀が一人の男に近づき話しかけるが、男は返事ができないほど衰弱していた。
「くそっ、とにかく手当てをしなくては……」
しかしそんなことをしている余裕は亀にはなかった。
「テケリ・リ……テケリ・リ……」
ウサギだ。
むごたらしく怪物へと成り果てたウサギが亀の前に現れたのである。
「なんだこの化け物は!」
パン、パァンと乾いた音が鳴り響く。
「銃が効かないだと?まさかこいつ不死身なのか?」
ならばと亀はナイフを取り出すと、それで化け物を斬りつけた。その体に刃が通る。だがそれは致命傷には至らない。
ウサギは反撃に出る。
「カメ……コロス……」
その鋭い爪で亀の体を切り裂いた。
「ぐわぁああぁっっっ!!!」
ズザア。亀の甲羅に一筋の切り込みが入る。
「ぐっ……うぐっ……」
「うがああっ、うがうがうがうがうがうがうがうがうがうがうがうがうがぁああ!!!」
このままでは生き埋めになってしまうだろう。
「こんなところで死んでたまるかよぉおおお!!」
亀は大声で叫ぶと、懐から手榴弾のようなものを取り出しピンを抜いて投げる。
ドォオオン!!! 爆発が起こり、ウサギもろとも建物は崩壊を始めた。
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瓦礫の中から這い出た亀は、全身の痛みに耐えながら歩き出した。
「死ぬところだったぜ……」
なんとか助かったものの、あの化け物を倒す方法は今のところない。
向こうは翼の生えた巨体、剥き出しの爪、そして強靭な筋肉を併せ持つ、完璧な生物。ひるがえってこっちはただの爬虫類。亀なのである。
自社ビルも倒壊位してしまった。もう亀の会社はおしまいだろうIPOにも失敗して多額の損失を出すことになる。
「クソッ!どうしたらいいんだ!!」
「そうだ、あれならあるいは……いや、だがまだ確証はない。まずは奴の動きを止めなくては」
亀は再び走り出す。
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ビルは崩れ去っており、ウサギは地上を自由に動き回れるようになったのだ。
「テケリ・リ……テケリ・リ……」
ウサギはあたりを見渡しながら歩く。
するとそこに、一匹の亀が現れた。
「やめろ、それ以上近づくんじゃねえ!」
「お前は何者だ?どうして俺を襲う?」
「テケリ・リ……テケリ・リ……、コロス、カメ、コロス」
「何を言っているかわからないが、まあいい。俺は今からある実験をする。それが成功すれば、お前を無力化できるかもしれない」
ウサギは更に一歩、亀に近づく。
「これ以上近寄るんじゃねぇ!」
「ジャマ、スルナ」
「くそっ、本当に手加減を知らないようだな」
亀は意を決して叫んだ。
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ウサギはその様子をじっと見つめている。
亀は赤い液体の入った注射器を取り出した。
「これを使うぞ。これはかつて宇宙怪獣を倒したという伝説の兵器、『キングコブラ』の血清が入った注射器だ。これを今から貴様に打つ」
「テケリ・リ……?」
「これで貴様は終わりだ。さあ、動くんじゃないぞ!」
「テケリ・リ……」
その体が徐々に痙攣をし始め、体が小さくなっていく。「よし、効いているようだ!」
ウサギは苦しみながら悶える。
「テケ……リ……リ……」
やがてウサギの体は縮み、その大きさは普通のウサギと同じくらいになった。
ウサギはその場で倒れ込み、動かなくなった。
「お、お前は!?」
亀の目の前には見知ったウサギの姿がそこにはあった。
「ウサギ……なのか?」
亀は恐る恐るウサギに近づいた。
ウサギは薄めを開けて、力無く笑っていた。
「へへ、ザマァねえぜ。オレは生まれ変わった。この血の滲むような訓練によってな……。そう思ってたってのによぉ!」
「お前、本当にウサギなんだな!」
亀はウサギに近づきその体を支え起こした。
「ウサギさんよ、一体何があったんだい?なんでこんな姿に……」
「クソカメ……俺はお前が憎かった。だからこの力で復讐してやろうと思ったんだよ。だがそれすら失敗してしまった!俺はお前を殺せなかったんだ!」
「ウサギ……」
「俺はこの程度のウサギだったんだ。最強のウサギになるなんて無理だったんだよ!!」
「ウサギ、そんなことはない。お前は確かに最強じゃなかった。でも最高のウサギだったよ。お前は、俺の誇りだ」
「亀……」
「帰ろう。一緒に」
「ああ。会社ぶっ壊しちまってすまないな」
「バカ、会社なんてまた作ればいいじゃないか。俺たちはまだ始まったばかりなんだぜ?」
こうして二人は幸せになりましたとさ。
ワースブレイドシリーズ(1988)は異世界に魔法ロボの系譜を定着させた。
で、ライトノベルの世界だとワーズブレイド系列の聖刻シリーズが1996から2016年まで20年間連載されていて大なり小なり影響は与えているのかなと。
三雲岳斗先生とかそれっぽいけど、コールド・ゲヘナ(1999)はロストワールドで現代ロボでしたかね? 若干逸れます。
また時代と技術のギャップのある作品としてサクラ大戦(1996)やフルメタル・パニック!(1998)、ガンパレード・マーチ(2000)もありますので、やはり90年代には確立していた感はあります。
なぜなら二足歩行ロボットは現代兵器に弱すぎるのですから、可能な限り敵の少ない環境で活躍させたがるのが親心というものでしょう。
彼の内なるゲヘナに口づけを