はてなキーワード: オレンジ郡とは
youtubeに『ホロコースト論争』とタイトルされた動画が存在する。
内容は一話程度しか見ていないが、冷静なタッチで一見して事細かに一次史料的なものを上げて、疑わしいところがこれだけあるのがホロコーストの真相だ、のように作られている。
私は海外の否認論の狡猾さを知っていたので、日本でも同じことをする人がいるんだなと呆れた。
海外で有名なのはアメリカのカリフォルニア州オレンジ郡に本拠地を持つ、歴史見直し研究所だ。よくIHRと略記される。
IHRは明白なホロコースト否認派なのに、「歴史見直し主義者」と自称し、見かけ上は真面目な研究機関であることを装い、ジャーナル・オブ・ヒストリカル・レビューなる一見しただけでは真面目な歴史研究雑誌にしか見えない雑誌まで出している。
しかしIHRを創設したのは、極右からも問題視されるほどの超極右ウィリス・カートなる人物が作ったのである。但し内紛でこの人は去っている。
ともあれ、ネオナチとしてイメージされるようなスキンヘッドなど全くイメージさせない巧妙さなのである。
IHRは米国憲法修正第一条に守られて、ホロコースト否認論はアメリカでは存在を許されているわけだが、CODOHなる派生団体を作って多くの大学の新聞に広告まで載せた実績さえ持つ。議論を要望する組織なので、議論するくらいいいだろってわけだ。
しかし、デマに議論参加資格など許されていいはずがない。明白にホロコースト否認論はデマなのである。
ホロコースト否認論者たちは狡猾なまでによく出来た否認論ばかり垂れ流し喧伝を繰り返す。
ホロコースト否認論はその存在さえ認めてもらえたら、あとは支持者を増やせばいいだけなのだ。
多分、ホロコーストについて無知な人がその動画を見たら、「もしかしたらほんとにそうかも知れない」程度に思う人を含め容認する人が半数を超えるだろう。
それくらいよく出来ているのである。私は見ていて本気でゾッとした。
チャンネル登録者数は話題が話題だから比較的少ないとは言え、それでも数千人もいる。見ただけで登録しない人も含めたら、信じた人は万を超えるだろう。
とは言え、日本人にはホロコーストなどほぼ関係はない話だし、その背景にある反ユダヤ主義だって、日本ではそれを主張する意味もないから、放っておいても特に害はない。日本人極右の敵はあくまで韓国であり中国でありパヨクである。高須のような馬鹿は見学しておけば済む。
でも、ほんとにあっさり騙される人があまりに多いという事実には恐怖を感じざるを得ない。
歴史問題というのは、日本人に馴染みのある南京大虐殺ですらも、その史実的なことを知ろうとするとこれがなかなか厄介である。日本においてはすでに勢力は否定派の方が強いので、情報を得ようとしたら否定派の情報が入ってくるのは避けられないからである。その上、まともな情報を得ようとするならば、最低限度秦郁彦氏の『南京事件』(中公新書)程度は読まねばならない。歴史問題の事実を把握しようとするのは、実際そこそこハードルが高いのである。
ホロコーストなどはもっと遥かに高い。日本人のほとんど大多数は、ホロコーストの全体像なんて全く知らないであろうし、「ヒムラー、ハイドリヒ」と言われても「はぁ?誰それ?」な人が大半だろう。
アウシュヴィッツと言われたらドイツにあると思っている人だって多いに違いない。
ガス室と言われたら「シャワーからガスが出てくるんだよね?」と思っている人だってたくさんいる筈だ。しかしそれは少なくともアウシュヴィッツのガス室ではない。
こんな無知な状態なのだから、日本人を騙すのが如何に容易いか、そこは容易に理解できるのではある。
しかも、自分で調べようとしても、日本語文献自体がほとんどない。
その動画はほんとかどうかはともかく、脚注みたく多くの文献を調べているという体裁をとっており、沢山の文献情報を載せているのだけどその全ては海外文献であり、調べようったって日本人ならほぼ無理だ(しかもテキストスクロールだからすぐ脚注は流れ去るので、あんなのそれっぽく見えるように飾りでしかないのである。動画主は明らかにそれをわかってやっている)。
さらに言えば、紹介されていることはほぼ何も間違っていないのである、表面的には。
例えばアウシュビッツ強制収容所で、囚人が結婚したという話が出てくる。
これ自体は実は有名な話(書籍にまでなっている)なので、事実なのである。
結婚した囚人はユダヤ人ではない。アウシュビッツにはユダヤ人だけではなく、それ以外の政治犯やら戦争捕虜なども大勢いたのだ。
しかもこの話は、大虐殺の本丸であるアウシュビッツⅡ(ビルケナウ)ではなく、そこから三キロ離れたところにあるアウシュビッツⅠの話である。
否認論はこれらの情報を見事に言わない。極端な話、奴らは嘘をつかずに嘘を付くのである。
例えれば「水道局の方から来ました」と水道局でない人がよくやる詐欺のようなものである。彼は何も間違ったことは言っていない。
そして否認論に染まってしまうと、こんな否定しようのない証拠資料ですらも認めなくなる。
https://note.com/ms2400/n/n61f6452e88f8
内容は海外サイトの翻訳が大半だが、ここまで検証しても否認論者は難癖をつけて絶対に認めようとしない。
ここまで完璧なほどに物理的に資料を捏造するのであれば、どうして内容に間違った部分のあるような証拠になっているのか辻褄が合わない。
ある捏造者はかつて「ヒトラーの日記」まで捏造しているのである。
ちょっと頭を使えば、如何に否認論が下らないか、わかりそうなものなのだが……。