はてなキーワード: インセンスとは
僕と従兄弟の沙耶は,適当にどこかでご飯を済ませて,ラブホテルに向かった.僕はラブホテルに行く時には,どのホテルに行くか女の子に意見を求めるようにしている.
「どこにしようか…,ここでいい?」
彼女は自分がもう子どもじゃないんだと主張するような顔で言った.
僕らはお茶しながら,お互いのことについて少し話した.沙耶も背伸びをして苦そうなコーヒーを飲んでいた.僕はコーヒーを飲みほして(なんとそのラブホテルにはドリンクバーがついていた),それから沙耶に僕のおすすめのインセンスを買ってやった(ホテルで売っていた).
違う日にまた沙耶と食事に出かけることになった.今度は祖父母も一緒だった.例によって,食後にラブホテルに行くことになったのだが(この世界では食後はラブホテルでお茶するのが定番らしい),何故か僕らはタケコプターで移動していた.一人一台を使っているのではなく,祖父母のどちらかがタケコプターを操縦していて,僕らはそれに掴まっているという状態である.もしタケコプターの道路交通法があるのだとしたら,完全に定員オーバーだろう.
ラブホテルを探して空中をウロウロしていると,前回行ったホテルから50代くらいの気の強そうなおばちゃんが出てきた.おばちゃんは割烹着を着ていて,何かに対して怒っているような顔つきだった.おばちゃんは空に叫んだ.
「あんたら,冷やかしはやめや!」
僕は慌てて言い訳をした.
「いえ,少し迷っていただけで」
どうやら怒られるみたいだ.
それでも,しばらく地上に降りずに空中を移動していると,おばちゃんはゴルフクラブを取り出した.そして,僕らの方に向かって,華麗にショットを放ってきた.当たるはずもないと思っていたが,おばちゃんはなかなかの腕前で,一打目は僕の眼前を切り裂いた.
「こら―!降りてこい!」
そう言って,おばちゃんは次々とショットを繰り出してくる.いよいよ危ないと思ったので,僕は料金を訪ねてみた.
「わかった,わかった,料金はいくら?」
「二時間で三千円や!!」
そう言いながらもおばちゃんは,マフィア映画で敵のボスが繰り出すような攻撃を続けた.僕らは渋々おばちゃんに三千円を払って,祖父母と僕と沙耶で店内に入った.沙耶は前にあげたインセンスが気に入ったようだったので,僕はもう一つ違うインセンスを買ってやると言ったが,彼女は断った.どうやらあまり買ってもらうと母親に怒られるらしい.
ドリンクバーにコーヒーを淹れに行くと,集団の男女と出会った.どうやらこの世界でのラブホテルは,カラオケとカフェを合わせたようなものらしい.それでも二十一歳の僕と,十四歳の沙耶が一緒にいるのは異様に映るらしく,それなりに注目されていた.僕はコーヒーが出てくるボタンを押した.カップにはコーヒーの原液らしきものと,水が交互に注がれていて,おかしな仕組みだなと感じた.コーラやジンジャーエールは,炭酸が抜けないように炭酸水と原液を別にして入れておき,注ぐときに混ぜることが多いが,コーヒーには原液というものが存在しないので,そのまま出てくるはずだった.
そんなことを考えていると,急に目が覚めた.場所は研究室のベッド,腕時計の針は二時の方向,辺りは明るいので昼の十四時のようだ.やってしまった,すぐミーティングだ.慌てて立ち上がると外は暗かった.どうやら蛍光灯の光を日光だと勘違いしていたようで,実際は深夜の二時だった.携帯を確認すると,一時間くらい前に彼女から「起きてる~?」とメッセージが入っていた.寝ていたので,これには返信する必要はないだろう.