2024-05-17

虚しい

私は学者肩書きを持っていた。

研究テーマを誇張して言えば「不老不死である

脳や肝臓など(現時点の理解では)大体不可能や一部の臓器を除いて体内の器官を人工化し悪性新生物リスクを下げ、人類寿命を飛躍的に伸ばすことを目標としていた。

最終的に肝臓含めた全ての臓器や器官を人工的なものに置き換えることができれば寿命は飛躍的に伸びる。

脳すら人工物に置き換え、記憶思考バックアップ成功すれば我々は死の恐怖を克服することができる。

人生時間が長くなれば、それだけ人生体験する幸福の総量は上がる。

人類幸福の総量が増大するのだ。

テーマ自体も心が躍るものであった。

加えて、基礎医学臨床医学分子生物学計算機工学ナノサイエンス

あらゆる分野の研究者による共同研究が前提となっている新しいテーマであり、学問研究の場の閉鎖性や権威とは縁遠いものであった。

とにかく毎日が楽しかった。

しかし、数年前に自分自身が癌を宣告されてしまった。

当初は治療と並行しながら研究を続けていたが、治療負担が大きくなったこから研究を辞めた。

研究に専念できない自分ポストに座り続けることに自分自身で納得できなかった。

緩和ケアと並行しながら治療を続けているが状態は良くない。

虚しい。

不老不死を夢見ていたころが懐かしい。

もっと長生きしたい。

100年、200年。

いや、500年でも1000年でも生きたい。

太陽系、或いは宇宙が終わるまで生きていたい。長生きできれば、それだけたくさんの幸福を味わうことができるのに。

死にたい」「長生きしたくない」

そんなことを言う人達時間が欲しい。

  • 死にたい人の命を貰って生きたい人に回せればよいのにな

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