2024-05-05

なぜほとんどの学会オンサイト開催に戻ってしまったのか

概要

ほとんどの学会オンライン開催からオンサイト開催に戻ってしまった。ポスター発表が盛り上がるような良いシステムがないので得るものが減るし学生未来がひいては学問未来ヤバイのが理由である

はじめに

学会も全部オンライン開催でよかったのにみんなオンサイトに戻った」のを不満に思っているのを確かGW前の増田で見た気がする。

今日はなんでそうなっちゃったかを書いておこうと思う。

そもそも学会ってなんだ

まあ学問仕事にしている人ならわかっているが、私は仕事にしている人ではないし、ここは増田なので書いておく必要があるかもしれない。付録にして後ろに置きたいが先に書いてしまおう。

学会というのは意味が2種類あって、

のどっちも学会と呼ばれる。文脈で分かれるから注意だ。

コミックマーケット準備会コミックマーケット対応しているようなものだ。コミケットを開きたいか準備会設立する必要があったんですね。

ただ、両方を指して学会って言ってるようなもんでなんでそんなめんどくさいことになってるのかは私の分野ではないので知らない。日本語関連の先生に聞いてください。

学会の初期の緊急対応

新型コロナウイルスcovid-19が流行り始めて対処も良くわからない時期があった。今なら換気してマスクしてワクチン打って手洗いうがいをすればかなり抑えられることがわかっているが、2020年ダイヤモンドプリンセス号が魔界の船のような雰囲気を出していた時点ではそうもいかなかった。

というわけで現地開催が無理になり、急遽学会中止にしたり、スポーツで言う無観客開催のように予稿集に載ったことで発表したことにするね!現地には来ないでね!といった対応をとったりした。全部未発表扱いにした学会はあったのかな。私は知らない。

covid-19前提の学会開催へ

病気への対処全然からない時点でも、学会を開催する側は来年の開催を考える必要が出てくる。学会の準備って9か月前ぐらいからやってるんで。なんなら会場の予約は1年前にしとかないといけないんで。

そこで注目されたのがオンラインである結構からオンライン会議できることは知られていたしZoomは急速に普及した。それにyoutube動画イベント講義動画を発表したりするのは以前よりよくやられていたか当然の帰結である

vimeo使ってもいいし、youtube使える場合だってあるし(学会計画時点でだれでもyoutubeliveできたのに計画中にチャンネル登録一定以上じゃないとできなくなって慌てて違うのを探したという事件を聞いた)、ニコニコだっていい(参加有料の学会ニコ生でやったのは知らない。一般向けの講演ならやってるのは見た)そもそも動画とっといてUPしてもらえば何とでもなる。

そんなわけで2021年から既存学会がたくさん、オンラインにいったん移行した。

これはある程度うまくいった。講演や口頭発表のように、広い会場で一人が発表して、司会がほんの少しの質疑応答を仕切るスタイルだと、質疑応答オンサイトよりやや盛り上がらないぐらいでほとんど問題にならなかったのである。なんなら質問テキストでのみ受け付けて司会が代読するスタイルにすると演説始めるような変な質問者をはじけて最高。それに住んでいる地方関係なく参加が簡単だし、おまけに講演者外国活躍している人を旅費なしで直接呼べちゃう。さっきまで動画でしっかり講演してた先生リアルタイム質疑応答になったらコロナで息も絶え絶え熱が下がんねえよって言いながら回答してたのは不謹慎ながら未来を感じたりした。

ところが大きな問題があった。懇親会とポスターセッションである

懇親会ができない!

あんなん飲み会じゃんと思う人がいるかもしれないが、基調講演するような偉い先生に対して講演の質問をできる機会というのは貴重である。懇親会に出てくれるからかい質問は後にしろって講演の時に質問ぶった切られたりするしね。それができないんなら全部質問させろってことになりかねない。

それにそういう質疑のサブセットがフラクタル状に起きてるのが懇親会なのである

でもまあ非常時だから仕方ないよね疫病だもんねっていうのでまあ納得できるぐらいのダメージではあった。

ポスターセッションがうまくいかない!

最大の問題はこれである

ポスターセッションというのは、会場に模造紙サイズのでかい紙を貼れる板を何十枚か用意して、そこに研究の成果を貼って、来た人に研究説明をして、来た人の質問をもとに議論するっていうセッションである

すげえよな2024年なのに板に紙貼ってるんだぜ紙。布もあるけど。私は全ポスターモニタープロジェクターになった学会は見たことない。多分お金土地と電力が足りないんだと思う。

オンライン学会ポスターセッションはいわゆるZOOM/WebEX/Teamsみたいな会議ツールがよく使われた。Zoomブレイクアウトルームでよく参加したなあ。わーい紙じゃない未来が来たぞ。

これの問題としては

  • 全体をざっと流して興味のある研究がないか探すことができない
  • 今質疑が切れたから聞きに行こうとかあそこあまり混んでないから聞きに行こうとかできない
  • 質問同士が同時に出てお見合い状態になるしそれを防ぐために遠慮がちになる
  • 発表者が虚空に呼び掛けている徒労感が強い

などがある。

あとはoViceみたいなオンラインオフィス系統もあった。オンライン会議に比べると比較的質疑し易くはあるんだけど、一方これだけで学会しようとするとこの形式は講演がやりづらいとか資料が見づらいという問題がある。

どのシステムでも質疑応答が盛り上がらないし、質問する方は回れるポスターが減る、質問される方は場数が踏めないし、質疑応答からまれる新しい発想なんてのも生まれてこない。

結局、多人数が発表していてさらに多人数が質問するけど質問者は発表者一人一人の声がクリアに聞こえなくちゃいけなくて、なおかつ空いた発表がどこなのかわかりやすツールはまだ出てきてない。

そりゃVRChatの部屋みたいなところでポスターセッションできればいいと思うよ。でも同時に2百人とか3百人とかは入れないじゃん。3百人いて発表者30人ぐらいをさばけるシステムがないんだ。どうしても時間あたりに議論に参加できるポスターの本数が減っちゃうんだよな。

学生さんが充分な質疑応答経験を積めないということは、学者としての経験値が不足するということだ。ということは学生さんの成長がヤバイ学生さんが成長しないということはその学問の分野の未来ヤバイ。なんのために学会やってるんだっけってなる。

そんなわけで、covid-19の対策が進んだことにより学会オンサイトに戻っていった。

じゃあハイブリッドにしてよ!

オンラインだけだと不都合があるのは分かった。じゃあハイブリッドにしてオンサイトオンリーはやめてほしい。

うんわかる。参加者からそう言いたいのは分かる。特に参加費より旅費交通費が大きい民は特にそう思うと思う。わかるんだけど、発表者にオンサイトポスター見ながらオンライン会議質疑応答もやれっていうのは負担普通に倍なんで無理です。学生さんだぞ。ネットレスバしながらゼミ受けろってのと変わらん。何の拷問ですか。

あとな、オンライン学会システム利用費、なんかリアル会場に引けを取らないぐらい高い。運営したらわかる。ピッタリ一緒じゃないけど、10分の1で済むとかそういう感じにはならない。桁がおんなじ感じ。

まりフルにハイブリッドでやるとお値段がだいたい倍かかるんだ。参加者が倍になってくれないと割が合わないよな。で、倍にならなかったんです。

残ってるオンラインハイブリッド学会大事にしよう。もしくは立ち上げよう

結局、いままだハイブリッドやってるとかは相応に頑張ってるので応援してあげてほしい。あとポスター少なくて口頭発表と講演中心の学会であればオンラインも十分やっていけると思う。そういう学会自分でやるしかないんじゃないかなあ。

結論

学会オンラインだけに戻るのはポスターが盛り上がる発表システムがないと無理。そうじゃないと学生学問未来ヤバイオンライン学会向けの発表システムについては今後の課題である

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん