「神は語った!」これはたしかにすばらしい文句だ。しかし、神はだれに語ったのか。
「人間に語ったのだ。」ではなぜ、わたしにはなにも聞こえなかったのか。
「神はそのことばをあなたにつたえることをほかの人々にゆだねたのだ。」なるほど、神が語ったことをわたしに知らせにくるのは人間なのか。
わたしはむしろ直接に神のことばを聞きたかった。
そのために神にはよけい手間がかかりはしなかったろうし、わたしは誘惑からまもられたにちがいないのに。
「神はその使いの者の使命を明らかにすることによってあなたを誘惑からまもっているのだ。」どうやって明らかにするのか。
「奇跡によってだ。」ではその奇跡はどこに見られるのか。
「書物のなかに。」ではその書物はだれがかいたのか。
「人間だ。」では、だれがその奇跡を見たのか。
「それを証言している人間だ。」なんということだ!
どこまでいっても人間の証言。
けっきょく、人間がほかの人間のつたえたことをわたしにつたえるのだ。
神とわたしとのあいだになんてたくさんの人間がいることだろう。