20代後半で仕事を辞めた。
石の上にも三年。
そのような言葉があるけど、自分の場合ちょうど三年で辞職した。
自己都合だった。
理由は単純。
「やりがいを感じないから」
製造業の仕事は毎日が同じことの繰り返し。
安定した仕事とも言えたし、退屈な仕事とも呼べた。
退職してすぐに仕事を探さずニートな日々が続いた。
多忙で築いた貯金は一人でひっそり慎ましく暮らすには十分で、気付けば40手前になっていた。
慌てて再就職しようとしても現実は厳しい。
「未経験者可」
なんて書いてあろうと現実は正反対だった。
貯金の残りは溶けていき、いつからか通帳を見るのが怖くなった。
それから一週間ほど帰省した。
父母はやさしく迎えてくれた。
何もせずに過ごせる実家の一日。瞬きすれば夕方になっているような時間の感覚。
平日のリビングには誰も居ない。
夕方になって、一人テレビを点けた。
この時間帯……記憶ではいつもキテレツの再放送があった。
延々と再放送を繰り返すキテレツ大百科。
しかしキテレツはもう放送していなかった。
再放送をしていなかった。
”静岡といえば、キテレツの再放送!”
そんなネットミームが、いつの間にか終焉を迎えていた。
キテレツの再放送は終わらない。
でも、終わっていた。変わってしまっていた。
テレビの前、変わらず居たのは自分だけだった。
ぽつんと一人取り残されたような気持ちになった。
ゆるやかな虚無感を味わった。
でも、救われた気もした。
永遠なことはない。
それに気付けたから。
静岡の夕方がキテレツを卒業したとき、私の中で時間がうごき始めた。
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