だが、おしなべて「コロナじゃないんだけどちょっとキツめの風邪で…」と言うのが気味悪い仕草になるんだろう。
警戒を続ける人はこれから暑くなるにつれ激減してマスクをしていると気狂いみたいな目で見られるようになる。
その癖『謎の風邪』の症状がおさまっても変な咳が続いたりメンタル不安定になったりポンコツ化した連中の尻拭いをさせられる事になりそうだ。
その間、葬式の数がやたら増えるし、あんな元気だった部課長が急死したのは過労死だろうなんて噂話も絶えないだろうけどな。
そして夏休みはいよいよ本格的に日常が戻ってきた!昨年までピンピンしていた両親の初盆もあるし帰省に旅行に大忙しだ。
これまでの反動や国を挙げたプロパガンダも奏功してインバウンドも含めた夏季休暇の経済効果は過去最高を更新!
はぁ?何今もマスクなんかしているんだといよいよ気狂い扱いだ。
だが異変が起こるのは夏の終わり頃。
え?おじいちゃんじゃなくて?
あれ?なんかまた風邪ひいたみたいだ。
季節の変わり目だしな。
0570ではじまる高いダイヤルだ。
どうも体が辛すぎる。
仕方なくかけてもしばらくお待ちくださいで10分間。繋がらない。1000円無駄にした。
せめて薬局で解熱剤を…。
なんとか帰宅してとにかく寝る事にする。
妻も子供達も寝ているようだ。
テレビのワイドショーでは最近は孤独死だけでなく家族死が増えてきていると特集している。
家族間でもコミュニケーションが不足しているので、もっと家族での会話の時間を増やしましょうと頭の悪い事をFラン大学の長ったらしい学科の教授がしたり顔で話している。
ネットでは深刻な症状をもたらす変異種の流行を警告する声もあったが、この頃にはすっかり電波カルト扱いで無視される存在になっている。
秋も深まり、まだ夜も明けない内に家を出る。
一般家庭には電気が夜間しか供給されないから出勤せざるを得ないのだ。
ただ、そんなダイヤでも満員になる事は無い。
職場に着くが、通常5人必要なのにワンオペになってもう何日?何週間?
だが、今日で終わりだ。
やっとか。
ここまでならないと動けないんだな。
そりゃあこの国は没落するはずだ。
内容はおおよそわかっているが、78年前より酷そうだ。
まもなく本格的な冬がやってくる。
この冬は寒くなると言ってたな。