最&高の作品の感想を書く。ジャンプ+は莎々野先生に「マリトッツォだっつてんだろ」でアナログ部門賞をあげた責任を取ってさっさと短編集を出して欲しい。
本作があまりにも性癖にクリティカルヒットしたので思わず筆を取ってしまった。
何が最高かって、キャラも可愛くて純愛で、そして適度に闇があっても作品の根本には人が人を想う思いやりにあふれているところ。空気感がエモくて二人の関係が恋愛ゴッコから運命の恋人に変わっていく流れも最高だし、何より溢れ出す感情を言葉にできず涙としてしか吐露できないシチュがフェチの筆者にとって終盤の展開が死ぬほど刺さる。
ただ、作品をステレオタイプに「ヤンデレやメンヘラもの」とラベリングしてちゃんと物語を読み解いていない人が散見される。それはとてももったいないので、後ろで自分なりに補足を書きたいと思う。
とにかく鹿野くんも狩谷さんも可愛すぎる。狩谷さんにうでギュッってされる度に「アッ」とビクンビクンするのは、女、いや人慣れしなさすぎてまさに野生のシカみたいだし、自分から振ったくせに泣きながら揚げ物かじる姿は滑稽可愛いし、初デートで初めてばかりの経験に目をキラキラさせて精一杯楽しもうとしている姿も素直でかわいい。
「語尾にハートがつくような甘々口調でしかも恋人に献身的で可愛くておっぱい大きな女の子」だけど「実は傷を抱えていてバイブル(少女漫画)に書いてない自分の本音を晒すときはうつむいてつっかえてながらでしか喋ることができない」ギャップヒロイン(狩谷さん)みんな大好きでしょ? 少なくとも筆者は大好き! あと作中に出てくる二通の狩谷さんの手紙、便箋もデコっているシールも女児みたいでめっちゃ可愛い。髪の毛が細いから毛が浮いて輪郭がホワホワしているところも好き(懺悔すると、筆者は別れ話を告げられた時の狩谷さんのどんどんと感情が抜けてゆく目と回らない呂律という可哀想がてんこ盛りのシーンにちょっぴり興奮してしまった。)
でもやっぱり一番好きなのは、二人の最後のページ顔だよ。狩谷さんの笑顔はキスで照れて赤面している可愛い鹿野くんに向けられて、鹿野くんは狩谷さんの真っ直ぐな笑顔でますます照れてしまう。無限機関はここに実在した。
本作の感想でホラーだとか鹿野が可哀想だとか漫画の(しかも絵だけの)表層しか理解していない意見が散見されたが、狩谷さんをメンヘラと呼ぶのは(一応)正しいけどヤンデレは間違いであって、本作のストーリーラインを理解していない発言である。狩谷+鹿野を指してヤンデレ・メンヘラに捕われた彼くんと考えるのを止めるのは、作者のミスリードに見事に引っかかっていると言えるだろう。主人公の狩谷は一見愛が重くて行き過ぎた愛情表現をする少女に見えるが、実際はかつて元カレの心ない言葉で酷く傷付けられ心に呪いを受けて苦しんでいる怪我人であり、本作はその彼女が鹿野の若く真っ直ぐな愛で呪いから解き放たれる物語である。
作中の時系列に従うと、狩谷の心境の変化は次のように説明できる。
元カレに傷付けられた心も癒えて、お互いの想い合う気持ちも伝えて、あとはもう二人が人生の終わりを迎えるまで何度も生きてきた中で最高のキスを更新していくだけだよ!!!!!! ラブあんどハッピー!!!!!!!!! お幸せに!!!!!!!!!!!!!
軽く流し読みしただけだと鹿野くんは病んでる狩谷さんを都合よく支える彼くんに見えるかもしれない。しかし、ちゃんと彼の発言を分析するとそうではないことが分かる。前述したレストランの一幕、ラブラブカップル専用ジュースを頼む奴らなんて頭がおかしいという近くの席から聞こえる陰口に、彼はそんなこと言う奴らの方がモテないしブサイクだとこちらも大概な偏見丸出しの発言をする。自分自身が陰口を打つ彼らと同じ側の人間であることを証明しているのである(「アッ(気付き)」とか漏れ出る情報から分かるように腐れオタクだしね…)。そして傷ついたからと独善的に狩谷さんに別れを切り出すところもそう。自分が彼女と付き合う自信が無くなったくせに「彼女が元カレを忘れられないから」と欺瞞を重ねて一方的に彼女に別れを告げるのは、頭でっかちで自分のことしか考えていない独りよがりな非モテの発想他ならない。
これらの事例から分かるように、鹿野くんも年相応に青くて不器用な少年なのである。これまで彼女が居たことがなく、作者曰く「中学生の頃は教室の隅でニヤつきながら、如何にリア充が害のある生き物であるかを友達と話し、そんな会話がなんだかんだ肌に馴染んでいた」少年だ。だからレストランの時に彼女に言った「恋愛していると皆バカになる」という発言は実体験を伴わない聞きかじっただけの知識を披露しただけだろうし、相手が狩谷さんではなければ上から目線ウザみたいに思われていたかもしれない。しかしその時彼の前に座っていたのが狩谷さんで、しかもその言葉は元カレに淡い恋愛観をへし折られ傷ついている狩谷さんにとって最も必要なものだった。彼がこの発言をしたのは自己肯定感が低いオタクだからというのもあるのだろうが、ただの偶然だとしても、その偶然の積み重ねが運命なのである。
そして彼の最も偉大な功績は、狩谷さんに対して真摯に向かい合い続けて、自分の素直な気持ち(楽しい、嬉しい、一緒にいたい)を伝え続けたことだ。元カレの心ない言葉に傷ついて自分の恋愛観が信じられなくなっていた狩谷さんにとって、真正面から彼女の気持ちを受け止めて感情を伝えてくれる彼の存在は特効薬だった。二度目の「恋している人はみんな馬鹿だ」は彼女とデートして浮かれてしまった自分の体験に根ざした、心からの気持ちだし、真剣に、本当に正面から彼女の気持ちを受け止めて打ち返したのは本当にすごいことだ。
まだ青いけどいい奴なんだよな鹿野くんは。狩谷さんを一方的に振った後も泣きながら一人で反省していたのだろうし、「俺は狩谷さんのことが好きだからです」以降は覚醒して包容力の化身と化しているし。正直告白以降の鹿野くんは光の彼くんと言ってもいいと思う。もう鹿野くんがいる限り狩谷さんは大丈夫だろうけど、へんにスカしたりせずに素直なままでいるんだぞ。
これ鹿野くんと付き合ってメンタル癒されたらまた大神くんみたいなイケメンと付き合う前振りにしか思えないんだけどな 彼氏にフラれて一時的に頭がおかしくなってたから鹿野くんで...
それな
大神くんみたいなルックスで大神くんよりは女の扱いに慣れてる男が居たら傷が癒えた頃にコロッとそっちに行きそうだよね 作者公認で鹿野くんはブサイクなオタクって設定だし
なぜ前彼宛の手紙を鹿野に渡したのか、意味がわからないまま終わった。 一読目では愛を試す的な意図的なものかと思ったけど、ちゃんと鹿野宛の手紙は書いてるから単なる間違いか。 ...