数年前にあっ無理だ、と思った人がいた
閉鎖的な掲示板的なところで、悩み相談室、という部屋を占領しているような人だった
生きているということさえ分からないのにどうして死にたいと思うのか……などという哲学的なことを書く人だった
常識を嫌うというか、型に嵌まった物言いを好かないというのか、話を聞くぶんには、なんとなく彼が何を言わんとするのかは分かった
単純に人と感性が違うのだろう
共感できることもあったから、同意するような文章を書いたところ「それはちょっと違いますね」と言われた
そして彼は「無理に反応してくれなくていい。同じ気持ちの人がいたら教えてほしい」と言う
彼にとっての私の文章は、無理に反応した部類だったのだろう
たしかにズレた回答だったかもしれないけれど、正解を語れなかったから貴方は分からない人だね、と暗に告げられるのは良い気分ではなかった
毎日毎日、彼はその部屋にそんな独り言とも言える長文を投稿していた
あるとき、管理人が「あまり書き込みすぎると他の人が投稿しにくくなるから」とやんわり注意した
個人的には嬉しかったが、掲示板での彼はそこそこ古参のようで、その部屋に復帰を望む文章がぽつぽつと投稿された
また戻ってきてほしいです、とかなんとか、そういうかんじの
他の人は、その哲学的()長文をどう思っていたかわからないけれど、彼が望む返事を投げれたのは一人くらいだった気がする
つまり、基本的にみんなその部屋で彼に構うなどということはしていなかったのだ
それなのに戻ってきてほしい、とは古参故の支持力があったのだろうとしか思えなかった
ついていけないと思い、私はそれ以降掲示板にログインすることを辞めた
どちらかというと新参だったから、その長文を鬱陶しいと思っていたのかもしれないけれど、彼を擁護するような雰囲気に心底気色悪いと感じたから、そのコミュニティには近寄らないよう肝に銘じた
しかしネットというのは残酷で、偶然ながらSNSで彼の投稿を目撃してしまった
彼は閉鎖的な場所で鬱々とした文章を書いていた頃とは一転し、キラキラな投稿をしていた
noteをみつけたのでよんでみた
むしろ哲学的な話をすることに迷いがなくなったようで、吹っ切れたように見えた
人は変わらない
無理だと思った人が数年後にちょっとマシになることも多分ない
アカウントを見つけられたのが僥倖だったのでブロックをしておしまいだ
しかし、キラキラな人たち向けのdiscordを立ち上げたらしい情報は夢に出てきそうなくらい怖かったので、早く忘れたいものだ