2021-11-28

第7章 自我がヤバそうでまだヤバくないがちょっとヤバイちゃん

前回 https://anond.hatelabo.jp/20211127202908

40にして避妊せず

50にして我が子の孤立を知る

60にして将来を疑う

70にして夫を見届ける

80にして

私が働きだしてから数年後のある日、父が死んだ。

仕事からの帰り道、電車に乗っていると突然親からメールが入った。

倒れたらしい。

ひとまず職場上司に連絡を取り、数日ほど休めるかを確認した。

「お前が居なくても案外仕事は回るからぶっちゃけお前の仕事ってどれも頭数合わせだし必須じゃないんだわ」

オブラートに包みきれていない言葉の隙間からチクチクとした苦味が心に残ったことだけを覚えている。

現実を突きつけようとすれば自然とそうならざるを得なかっただけなのかも知れない。

どうにも使いにくかった有給を折角だからと多めに申請して、私は実家へと帰っていった。

親が倒れたと言われても、そもそも倒れる理由特に思い当たらなかった。

それは私の個人的な気まずさから年に1度顔を合わせるかどうかだったからなのもあるし、父が元々身体があまり丈夫でなく合うたびに新しい体調不良パターンを聞かされてて慣れてしまっていからだ。

年々、折れかけた柳のような弱々しい老人となっており、生と死の境界にはとっくに立っていたのだろう。

戻ったときには父は死んでいた。

突然死である

珍しいことではないらしい。

それから数日、母親はずっと泣いていた。

私は少しだけ泣いた。

まれてきたことや育ち方のよくなかったことへの後ろめたさから来る涙だった。

父の死を前にしても、私の両親に対する感覚はそこから変化することが出来ていなかった。

前々から両親のどちらかが死んだときのための準備は進められており、母のスマホに入っていたスマホメモどおりに進めるだけで準備は滞りなかった。

葬儀家族葬

規模も小さめにした。

顔と名前が一致しない親戚たちに片っ端から声をかける元気は私にはなかったし、母はやかまし場所が苦手だった。

祖父母葬儀をやった馴染みの葬儀屋に頼むと話はレールの上をトロトロと進むように簡単軌道に乗った。

父・母の兄弟だけを呼んだが、彼らの子供、私の従兄弟が誰も子持ちだったので意外と人数は多くなった。

彼らとは彼らの結婚式から先、顔を合わせてない者もいた。

初めて見る姪の不審そうな顔を見て、自分が幼少期に曽祖父葬儀に参加したときはこういう顔だったのだろうと思い出す。

それと同じ程に、今、自分とこの子達には距離があるのだと理解した。

最近はどこも親戚づきあいが薄くなってきたというのは非常に結構だが、元々血の繋がりを遠ざけがちだった自分などはいよいよ親類の中にあっても限りなく透明に近い存在へとなっていた。

年が3つ下の従兄弟結婚してから5年ほど、いい加減自分もいい年齢だが、誰も「結婚は?」と聞かなかった。

理解されていると安心すれば良いのか、気を使われていると感謝すれば良いのか。

父の死から10年、私はいつか転職を、出来ればクリエイティブプログラマー辺りで……と思いながらもダラダラと同じ仕事を続けていた。

役職はいまだについていない。

私より遅く入った高卒の人でも、センス人間力根本的に上だと感じた人は既に係長になっていた。

父が死んでからは好きにやっていた母だったが、いよいよ様々なもの曖昧になりつつある。

私は私自身の面倒を見るのでいっぱいいっぱいだし、母も同じような人間だったので「母が駄目になった時、どうにかする方法はないね」とたまに相談している。

流石に気がかりなので年1だった里帰りが最近半年未満の周期になっている。

私が働き出した頃、両親が気にかけて遊びに行くと言っていたとき気持ちがわかる。

この感情責任感の枠組みに入れるのが一番似合っているのだろう。

実家に寄るといつも母と同じような話題になる。

最近老人ホームもいい感じらしいけど、やっぱり知らない人と集団生活ってのはね」

そうなのだ

我々の血は、集団生活には馴染めないのだ。

その血を昔は呪いだとと思ったが、今はそのおかげで辛うじて母と繋がっているとも思う。

何故繋がっているべきなのか、これもやはり、責任なのだろう。

絆という漢字は、家畜を繋ぐための縄を意味する言葉として産まれたらしい。




この連載は取り敢えずこれで終わり。

オチは?って言われても困る。

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