2021-09-11

映像業界の闇と構造的な問題

撮影現場をみていると、そろそろ時間問題なのではないかと思う。

広告制作現場には多くのスタッフ我慢によってなんとか成立している。

クライアント広告代理店が次の映像をどうするかを考え、

制作会社にまるっと案件を振り、監督撮影監督などをアサインして

内容を作っていく。ほとんどが決まった段階で

撮影部、制作部、美術部、照明などがアサインされ、

現場スタッフの多くは急なスケジュール調整と安価労働力で調整をする。


当日の現場に数時間早く入る制作部のスタッフたち。

クライアント代理店のために大仰なスペースを確保し、

お菓子お茶、冷暖房などを彼らのために準備する。

寒い現場において本当に暖房必要なのは現場スタッフなのに関わらず。


出てくるお弁当は冷めていてコンビニ弁当と変わらない品質

規模がでかい現場場合はここらへんが充実しているがほとんどの現場はそうじゃない。

現場にある飲み物お菓子は糖分過多で体に良くないものばかり。

感覚を研ぎ澄まし、クリエイティブなことをする前提のスタッフに良い環境とはとても言えない。


現場で話をするスタッフは一様に顔が暗く疲れており、

体に無駄な贅肉がついた人が目立つ。

本来とても可愛らしいルックスを持つであろう女性

健康食生活睡眠不足で肌荒れに悩んでいる。

このコロナマスク必須になったのはせめてもの救いなのかもしれない。


新人である制作スタッフの彼は、後何年すればプロデューサーになれるのだろう。

彼らはディレクタープロデューサーチーフカメラマン、または優秀な照明マンを夢見ているが、

今やっている下積みは本当に今やらなければならない仕事なのだろうか。

彼らが現場でも重宝されているのは雑用スペシャルにできるからではなく、

各自カメラ、エディット、照明などをスペシャルにできるからである


多くの安価人材活用して作った一つの作品

金をかけまくれば良い機材も良いポスト処理もできて

当然高品質になるにきまっている。

有名企業でありしっかりと広告しかけることで、

出来上がる作品さらにかっこよく見える。バズる

再生される。話題になる。購買活動ブランディングにつながる。


しかし、作るフローは全くかっこよくない。

疲弊したアシスタント、飛び交う怒号、ピリピリした雰囲気

演者には平身低頭なのに末端のスタッフを顎で支持するプロデューサー

※ちなみにプロデューサーには2種類いて、ここでは代理店サイドのプロデューサーを指す。

現場制作プロデューサーは総じて調整力が高く、スタッフを気遣う人間味のある人が多い印象だ。


映像業界花形である映画」などは未だにエンジニアカメラマンアシスタント

つらい思いをすることが多いが、最近のNetfllixの撮影現場ではパワハラモラハラを防止するための

リスペクトトレーニングが必ず撮影前に実施されているようだ。


華の20代に、体が太り、肌があれ、寝ずに働き、安月給。

休みもなく、クリエイティブを発想する機会はどんどん奪われる。

世間で良いと言われる映像の裏にはこのような過酷さがある。


自身営業生業としていないが、

特殊部隊的な立ち位置で何度も大小の現場に入ってきた。

からこそ、ある程度客観的にこの業界が見える。


当然ながら、すべての映像制作現場がこうではない。

上述したようにNetflixAmazon Primeのようなビジネスモデルが違う映像世界では、

リスペクトが前提となり、良い関係性で良い作品を創るための仕組み化が進められている。



ちょっと視点を変えて、制作した映像価値ってなんなのだろう。

数億から千万円かけて作った映像は、たった1回の瞬間風速をもとめて戦略をもとに配信される。

最近飲料水CMSNSでバズった。趣向を凝らしていて共感できるエモい作品だった。

映像撮影手法演出もすごい。キャストイケてる。その裏側も公開されてバズっていた。

しかし、清涼飲料水なんてほとんど体に毒だ。砂糖水とほぼ変わらない。

イメージで作り上げた爽快感清潔感健康的な感じがまさしく動画補填され(狙い通り!)、

話題を呼び、物は売れ、映像評価も上がり、また似たようなベクトル作品が生まれ続ける。

安価材料利益率を最大化し広告で売りまくる大手企業にくらべて、

品質で良いものを創り広めようとしている企業にはお金が当然ながら相対的お金が足らない。

広告には大金必要となる。誰だって良い監督、良いカメラマン、良い照明、良いエディターと

気持ち良いスタッフたちと映像を創りたいに決まっているが予算的にできない。


最近SNS活用が幸いして素人であるお店のスタッフが上げた動画がバズりまくり行列を作る事例があった。

人が来て、喜んで、もちろん売上という実績が出ている。

そもそも大金をはたいて嘘くさい広告を作るインセンティブですらなくなってきているのかもしれない。

千万かけても、”偉い人たち”の実績にしかならない広告映像ではコスパが悪すぎるのだ。


広告を作るクリエイターポリシーを持って全力で考え映像を作っているのだろう。

自身、関わったナショナルクライアント大手企業CMなど実績として使うことがままある。

わかりやすいしマスの説得材料になるから

しかし、現場を思い返しても”創っている”という感覚最後までなかった。


これらの問題について僕は考えている。新しいビジネスモデルを考えている。

こうした課題に気づいている監督カメラマンは必ずいると思う。

僕の名前役割を出すと、最近まで関わってきた現場スタッフの方たちに申し訳ないし、

誰と議論対話をしたいわけではないので匿名で公開した。

誰かの何かを刺激して、この闇に立ち向かう人が増えればいいな。

  • こういう業界もすげえたいへんなんですねー。 人間らしく人生の20代を謳歌できる職業って一体なんなんだろう?

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