2020-10-18

都会の公衆便所が好きだった話

おそらく徐々に死滅していく途上なんだろうが、都会の公衆便所の感じが好きだった。

駅の近くにあるんだけど構内というわけでもない、少し離れたところにあるようなやつだ。吉祥寺ユザワヤの隣にあったみたいなトイレが、もっとイメージに近い(ユザワヤももうないが)。

大好き、興奮するしテンション上がる、っていうんじゃないけど、「好き」という以外に言い様がない感じだった。

全盛期の都会の公衆便所は激しく汚かったが、不潔さとはまた違う、負の空気みたいなものがこもっていた。個室に入るとタバコ臭いがして、たまに無意味エロ本とかが落ちていた。

鍵をかけて尻も落ちつけず、すぐヤらせるらしい女とかカマを掘って欲しい誰かの電話番号落書きされているのを突っ立って見ていると、当時高校生だった俺は、なんでかわからないけどものすごく楽になった。

学校にいるとき自意識をフルに充填してテンパってたのが、別に何者でもなくていいんだ、非生産的ゴミクソ野郎でもいいんだ、人に優しくとかしなくていいんだ、って感じでメンタルマジで超安定した。

あの感覚は、都会のきったねえ公衆便所以外で体験させてくれるところがない。不思議なことだ。

ド深夜の漫喫とかが少し近いが、とにかく公衆便所は少しずつ絶滅に近づいているので、最近高校生とか、どこで自分にとっての楽を取り戻してるの? と勝手心配してしまう。みんな一日中、あるべき自分の像を考えたり、誰かとつながったりしてるのか。

やべえな、心の病気になるぞ、と思うが、あの手の公衆便所地域に持ち込んでいる瘴気はハンパではなく、まあ重機で盛大にぶっ壊した方がトータルでは世のためなんだろうとは思う。吉祥寺公衆便所もいつしか解体され、いまはオシャレ的なテナントみたいな感じになっていたような気がする。

当時、うんこしに来た人には何回か絶望を与えている可能性があった。それはほんとすみませんでした。

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