就活生だったとき、急に思い立って高崎まで行ったことがあった。
どうしても胸の辺りがもやもやしていて、何かを頭で考える気にもなれなかった。高崎線の車内でひたすらぼーっと過ごしていたのだけは覚えている。駅についてからも特に観光名所に行くわけでもなく、売店で釜めしを買ってかきこんだ。
けれども、私にとっては、自分のことを知らない人ばかりの車内で体をシートに預けていたあの時間こそ、現実からの逃避行であった。
もし私が飛び込んだのが車内ではなく、線路だったら。そんなこともたまに考えたりする。
記憶とは厄介なもので、吸い込まれそうになる体をぐっと堪えたときの変な力の入れ方は、いまだに感触として覚えている。
勇気が持てなかっただけ。まあ、それでいい。
死ぬ前にうまい飯食って風呂入って寝よう。 死ぬのは明日でいい。