職場で、僕の同僚がふとそんなことを呟いた。
「人から認められたい」
「人から優しくされたい」
僕は様々な意味で驚き、そして同時に、かなり返答に困った。
まず、時間だ。僕がその発言を同僚から聞いたのは、ランチのタイミングだった。
どう考えても、ランチのような『食事をしながら出来る簡単な会話』の時間に適していない話題であることは、明白だった。
飲み会や、その帰り路ならまだ理解できた。なぜ、貴重なお昼の時間にこんなヘビーな話題を選ぶのだ。
次に、なぜ僕に話したのだろう、ということだった。
こういった話題は、かなり親密な友人か、精神科で話すべきではないか。
友人がいないわけでもないのに、なぜ僕なのか。
半年ほどの付き合いの僕に(そして僕はその同僚がとても苦手だ)なぜ打ち明けたのか、理解が追い付かなかった。
ハッキリ言って、僕はその同僚と親しくもなく、今後仲良くしたいと思っていないので、気持ちが悪かった。
元々苦手だったが、さらに苦手になった。
まず、同僚はきちんと会社に所属していて、そこで仕事をしている。
仕事を任せられているということは、「評価されている」ということだ。
「人から認められたい」という悩みはクリアしているはずなのだ。
丸ごと人の存在を受け止めてくれる人や場所。そんなの教会くらいじゃないか?
「人から優しくされたい」
いや、人にまず優しくしろよ。
何もせず他者に「優しさ」を求めるなよ。
少なくとも、この同僚の話にきちんと付き合ってくれている人たちが社内にはいる。その人たちはかなり優しい人たちだと思う。
なぜその人たちを思い浮かべ、優しくされていると思わないのだろう。
ねぇよ。そんなもんねぇよ。ちなみに僕もそんなご立派な言い分無い。
みんな思っていたとしても、口にしないだけだよ。そもそも目的を持って生まれた人間なんていないだろうが。
意味があるということは、達成されたら終わりなんだ。
意味が無かったら生きていてはいけない、なんて誰も言ってないだろ。
お前が周りに対して「こいつ生きてる価値無いな」と思っているから自分に対しても思うんじゃないか?
と、僕は同僚の発言に対して、色々思いを巡らせた。
親しい仲だったら、「時間がある時に話を聞くよ」と言ってやりたかったが、そうじゃないので諦めた。
僕はまず僕に対して「すまんな」と思い、同僚に対して、
「まずは目の前のことを解決しよう、ご飯が冷める前に美味しく頂くんだ」と言った。
これが僕に出来る、精いっぱいの返事だった。