私には推しがいる。私はオタクで、推しは比較的長年の推しである。
何故比較的かと言うと、私はそのジャンル、そしてその推しと出会えたのが遅いオタクだったためだ。大雑把にどんぶり勘定して四捨五入すると新参である。
夜中に眠れなくなってこの考えに取りつかれたのでこんなものを書いているので、眠気が来たら放り出すに違いないが、もう1時間以上そのことが頭をグルグルしていたので吐き出すしかないと思ってこんな文をしたためている。もうすでに眠いまである。
私の推しはとあるゲームシリーズに出てくるキャラである(以降、推しをAと称す)。
私はAのファンだ。だが一般的なファンとはAのとらえ方が違うのも知っていて、自覚している。クソオタク、いわゆるモンペと呼ばれる過激派のファンだった。いや、今も過激派のファンなので現在進行形の~ingである。
こんなものを書くにあたって、ジャンルとAファンに火種を投げ込みたいわけではないので明言は避けるが、最後まで読んでしまえばゲームシリーズを知っている一部のオタクにはわかってしまうかもしれない。
これは私の気づきと、私の精神的ショックを言語化したいがために書いている……要するに自分のための掃きだめチラ裏の話であるので、ゲームジャンルにもジャンルのファンにも迷惑はかけたくないのでそこは留意してほしい。
Aとの出会いは、そのゲームシリーズにて公式が出してくれているクロスオーバー作品だった。クロスオーバーの意味が分からん?そこは自分で調べてほしい。
カンの良い方はもしかしたらここで気づいたかもしれないが、とりあえず話を進める。
私は十年ほど前にそのクロスオーバー作品をプレイして、初めてAと出会った。
Aは傍目から見て割と能天気で、ちょっと不愛想で、ちょっとボケている子である。腕は立つけれど基本的に物事にやる気が無いタイプ(と言うといわゆるやれやれ系・昼行燈系に思えるが、ちょっと違う)だ。
いつもはあまり気に留めないタイプの子だったが、珍しく気に入った。
主な理由としては、そのクロスオーバー作品においては好感度のようなものが存在しているのだが、他のキャラは好感度が低いうちはみな不愛想であまり主人公に優しくない。まあ正直な話当たり前である。
だがAは初対面から他のキャラと比べて主人公に対して割と対応が甘かった。のですっかりうっかり「優しい……好き……」と気に入った。これだから童貞は困る。
時は流れ、クロスオーバー作品をプレイしクリアし、好きだな…と思ったキャラの出ている本家の作品に手を出すことにした。
そして本家をプレイしたらAにものすごい勢いでハマった。当時、青天の霹靂レベルでドボンしたし、二次創作もめちゃくちゃしたし、死ぬほど妄想した。もう一生分くらい当時妄想したが、まだ今も現在進行形(~ing)で妄想している。多分今後もする。
当時、私がAの出てくる本家をプレイしクリアした直後あたり、その時はたまたまジャンルが活発で、楽しく創作できた。
だが闇落ちした。(私が)
理由は簡単で、私とAに対する周囲のファン(これは創作をしているタイプのファンの話ではなく、世間一般的な本家ファンのことだ)のAの解釈が180度違ったためである。
要するに拗らせすぎたのだ。というかAを拗らせすぎて本家作品のアンチと化したし、私は未だに本家ゲームの2週目が出来ないでいる。
十年好きなのに……?と打ち込みながら首をかしげてノリツッコミしてしまう羽目になった。正直我ながら難解だと思う。
どこに出しても恥ずかしいレベルの害悪クソモンペに成り果てた私は、それでもAが好きだった。
Aを取り巻く環境が、素晴らしく美しく優しいものであることを願ってやまない。どれだけAに対する感情が拗れまくって本家アンチと化してソウルジェムが濁ったところで、この感情を否定することは誰にもできない。
だが、先ほど気づいてしまった。私は本当にAのことが好きなのだろうか?
前置きが長すぎたが本題だ。多分本筋の方が短い。あともうすでに眠いけど描き終えてから寝たい。
ここで基本的な説明になるのだが、クロスオーバー作品というのは大雑把に分けて二種類に分類される。
ひとつは、キャラたちが集結する舞台は、キャラ本人達にとっては異世界であり、本家の仲間たち(ないし敵対している敵役)との関係をそのままスライドして持ってくるパターン。
もうひとつは、全くどこにも関係のない新しい世界で、集結したキャラたちが現地人として生まれ現地人として新しい世界の地元で育つパターン。
私がAと出会ったクロスオーバー作品は、後者だった。それだけなら別に問題はなかった。
ただここで問題なのは、私がAに出会ったクロスオーバー作品では、【Aの出てくる作品の関係者が、A以外一人も参戦していなかった】という点である。
要するにめちゃくちゃ短絡的な説明をすると、【本家に出てくるA】と【クロスオーバー作品に出てくるA】は別人である、という話なのだ。
何が問題なのかわからないオタクもいると思う。順を追って説明する。
【本家のA】は、幼馴染がいて、田舎の人間で、割と重い過去があって、ひょんなことから冒険に旅立つことになる。
【クロスオーバー作品のA】は、主人公がいる街に一人でいて、幼馴染もおらず、とくに過去の話もされない、だがやたらに腕の立つ一般人、みたいな立ち位置だ。
【本家のA】にとって、幼馴染がいること、田舎の人間で重い過去があること、というのは非常に重要なファクターである。
なんならAのアイデンティティがそこにぎっしり詰まっていると言っても過言ではない。というかむしろそこを抜いたら何が残るんだ?という勢いで大事な部分だった。
だが、【クロスオーバー作品のA】にはそれがない。一切、ない。
幼馴染はいないし、田舎にはいないし、重い過去がない。何もない。Aを構成するうえで恐らく一番とびっきり重要なはずの部分が、ごっそりと抜けている。
だって、私がAと出会ったクロスオーバー作品には、Aの関係者が一人も参戦しなかったから。
だから、勢い言ってしまえば、【本家のA】と【そのクロスオーバー作品のA】は見た目がそっくりの別人である、と言えてしまうのである。
Aが好きだった。クロスオーバー作品で出てくるAがきっかけで本家のAも好きになった。
けれど私が愛していたのは、もしかして本当のAではなかったのだろうか? そう気づいた時はなんかもう、眠れなくなってしまった。
キャラクターに関する土台は大事だ。それはキャラクターだけではなく、実在の人間にも言えることだ。
オタクはよく、本家がキツすぎたり鬱展開が酷すぎたり推しが死んだりすると、妄想で「もし〇〇がこうだったら…」というIFの話をする。画面の前のオタク諸兄にも少なからず身に覚えがあると思う。
別に鬱展開が酷すぎたり推しが死んだりしなくても、もしこの時ああだったら、もしあの時こうだったら、と考えることはよくあるだろう。
IFの話で、本当に極端な話をすると、もし男のキャラが女のキャラだったとしたら……という場合(いわゆるTSやら先天性女体化など)、そのキャラが生きてきた環境は180度変わってしまうだろう。
下手したら一人称も違うだろうし、多分境遇も全く違う人間になってしまう気がする。
【本家のA】と【クロスオーバー作品のA】は下手すると男キャラが先天性の女キャラになってしまうぐらいに、境遇が違うのである。
なんというか、私は「本編が鬱展開のジャンルで、公式が出してくれている公式スピンオフ学パロを先に読んで、そっちからハマった」みたいな状態に近いのだと思う。
だって私が最初に好きになったAは、幼馴染もいないし田舎の人間じゃないし重い過去も無いのだ。仲間キャラも一人も交友関係にいない、もはや別人だ。下手すると学パロよりキャラが違う可能性すらある。
実はゲーム中で明言されていないだけで、実際は【クロスオーバー作品のA】にも幼馴染はいるし田舎の人間だし重い過去があるのかもしれないが、【クロスオーバー作品のA】からはそんな空気が一切読み取れなかった覚えがある。
私は、正直なところ本家ゲームのアンチになってから改めて「クロスオーバー作品のAはとても可愛いなあ」と思っていたのだが、そのAは本家のしがらみ全てから解き放たれていたのだった。
幼馴染はいない。田舎の人間じゃない。重い過去もない。ただ能天気でその日暮らしで、時々主人公に付き合って戦ってくれる、そんな【クロスオーバー作品のA】は私の理想だった。
でも、【クロスオーバーの作品のA】は私が好きになった【本家のA】とは別人だ。生きてきた境遇がまるで違うのだから、よく考えると容姿がそっくりなだけの別の人間だった。
でもそれは本家の作中で人知れずに苦しんでいた(しかも周囲が誰も気づいてないし、下手するとプレイヤーも全く気づかないし、むしろ自分すら気づいてない難儀さのある)Aとは違う存在だ。
私は何もないAのことを望んでいたのかと思うと、どうにも眠れなくなった。いや、まあだから多分本家アンチに成り果ててたんだけど、今さらの気づきだった。
Aの幸せとはいったい何なのだろう……私が好きなのは誰だったんだろう……と色々考えてしまってわけわからなくなったし、今も何書いてるのかよくわからなくなってきた。
そうは言ってもやっぱりAのことは大好きだし、多分今後も一生推すし、それはそれとして多分本家アンチから脱却できないんだろうなと思う今日この頃である。
余談だが、そのゲームシリーズのクロスオーバー作品はいくつかあって、Aが出てくるクロスオーバー作品で、Aの幼馴染が出てこないのは私が最初にAと出会ったその一作品だけである。
やっぱ幼馴染いないとダメだし、あの過去じゃないとダメなんだよな……と改めて諦念の姿勢で受け入れる気持ちになってきた。
二週目、やろうかな。十年ぶりに。
推してダメなら曳いてみな(本文は読んでいない)