2020-06-19

数値計算・解析系ポスドク就活

北欧ポスドク(fellowship)ポジションを得た経緯と準備をまとめました。こちらの記事https://www.notion.so/Facebook-London-13743da603ce4632bd9f96672faa0d74)を参考に書かせていただきました。特定回避のため少しぼやかした表現で書いたところがあります、ご了承ください。

私について

私は今年のはじめにオランダ語圏大学でPhDを取得し、その後も欧州に留まろうと就活をしていました。PhDの就活は、博論執筆ディフェンス就活期間がかぶるものだと思いますが、そのあたりの事情も書いていこうと思います。私の専攻は数値計算・解析の一分野です。「数値解析」と言っても実際には何も数値計算をしない研究があり、また「数値計算」と言っても何も数学的な裏付けのない研究があります(どちらもそれ自体ネガティブなことだとは思いません)。ただ私は自分の強みとして、この2つ両方をやっていることを打ち出して就活しました。

タイムライン

9月 公募求人を探し始める

10月 ディフェンス日程が決まる、博論を書き始める

11月 博論執筆CVカバーレターを整える

12月 博論提出、クリスマス休暇、公募を頑張り始める

1月 ディフェンス×2

2-5月 公募面接オンライン)、オンラインセミナー講演など

5月 オファー

結果

大学研究所など合計で11箇所に応募しました。国ごとで

オランダ2 

デンマーク2

スウェーデン2

ノルウェー2

フィンランド2

ドイツ1

です。面接に呼ばれたのが2箇所、そのどちらも面接の数日後にオファーをもらいました。

やったこ

博論ディフェンス

当たり前ですが、ポスドクをやるために最も大事要件はPhDを取得していることです。私は昨年10月に今年1月ディフェンスが急遽決まったため、大慌てで博論を書くことになりました。私の大学では外部の教授2人+内部の教授3-4人からなるexamination committeeがあり、 博論提出→(4週間:committeeの教授博論を読む)→private defense (プレゼン15分+committeeによる質問2時間)→(3週間:博論修正博論印刷)→public defense(プレゼン50分+質問1時間半) というスケジュールでした。私のディフェンスが急遽決まったのはこのcommitteeの教授たちのスケジュールによるものでした。

公募求人を探す

9月からアカデミア求人サイトを見ていたのですが、実際に応募しだしたのは11月からでした。周りのポスドクの人や教授に使えるリンクなどtipsを聞いておくと良いと思います。私の場合は例えば、mathjob.org, SIAM mailing list, euro-math-soc, NA digestなどをこまめにチェックしていました。

私の分野はあまり大きな分野ではないため、私のプロファイル・専門に合う求人は、多くて月に2-3件くらいしかみつかりませんでしたが、そこに力を入れて応募していました。公募求人のページは締切後に消えてしまうので、(面接の前に見返すなどのために)ローカルに保存しておきました。

CV履歴書)とカバーレター

私はCVカバーレターの雛形を用意し、それぞれの公募に合わせて少し変えていきました。どちらも教授や周りの人に読んでもらってコメントをもらいました。ここでスペルミス文法ミスがあると、後から見返してしんどい気持ちになります

レコメンデーション レター

これは指導教員と副指導教員にお願いしていました。プロセスとしては、自分が応募する→相手方自分に興味を持つ→相手方自分レファレンス先にレコメンデーションレターを書くよう要請する、というもの(が多数派だと思う)で、あらかじめ指導教員たちに「〜〜から連絡あるかもしれないから、見落とさないように」お願いしなければなりません。

オンライン面接

面接は二回しか経験していませんがどちらもオファーをもらいました。聞かれたことは、そのポジションにおける自分の強み・弱み、自分研究成果、教育経験などでした。どちらも英語での面接でしたが、英語公用語の国ではないため、ある程度の「社会に溶け込もうというモチベーション」を見せるために終わりの挨拶をその国の言葉でするなど、印象を良くするように努めました。

コロナ

PhD取得後、すぐにコロナの広がりがやってきました。就活真っ只中の私としてはとても薄暗い気持ちになったのを覚えています。連絡を取っていた他大学教授から突然メールが返ってこなくなったり、応募していたポジション選考プロセスが突然止まるなどの事態が起こりました。

コネ

ポスドク自分研究活動を通したコネで決まることがわりと多いかと思います。もしそれで決まるのであれば、そうするに越したことはありませんが、私の場合土地の制約やタイミングからそれだけではうまく決まりませんでした。そのため、全くつながりのない教授大学にある程度の説得力を持って応募することが必要でした。私が応募したものの中にはあとから「ああデキ公募だったんだな」とわかるものもありましたが、これは世界中どこでも起こりうるものだと思って割り切りました。

選考プロセスの透明性

選考プロセスほとんどの場合、応募者側からすると不透明ですが、スウェーデンノルウェーでは透明性を重視しているのか、現在の段階や全応募者の評価シートまで応募者に公開しているものもありました。クオリファイされた24人の応募者全員の名前、年齢や出身大学、業績、プロジェクトとのマッチング評価などが書かれたドキュメントは読み応えがありました。

終わりに

twitterなどを見ていても思いますが、博士課程は思うように結果が出なかったり、悩みを共有できる人がいなくて孤独だったりと閉塞感が出がちだと思います。私も博士号取得後の数ヶ月、無職期間を経験し気が塞いだこともありました。この閉塞感がくせ者で、そのせいでパフォーマンスが落ちたり更に人と話さなくなるなどの悪循環なども生まれると思います。ただ、自分が思うよりも状況は悪くない、ということをどうやってか自分客観的に説得できると、この閉塞感も緩和されるんじゃないかと思います

  • 英語以外の外国語圏でSTEMの博士号 すごいなぁ… こんな人材もちゃんといるんやね

  • これはいい増田

  • 精神を病まないと博士は取れないみたいな説はあるよねって思った 「仕事は学生とは違うんだ!学生は責任がないから楽でいいなー」みたいなことを言う人がいるけれど、博士後期課程...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん