2020-04-07

[] #84-7「幸せ世界

≪ 前

信者たちは難なく撒くことができた。

彼らのダボダボ白装束は、人を追いかけるのには適していないからな。

こういう時ですら、なりふり構う必要があるんだから信者は大変だ。

それでも、いつまでも走り続けるのは無理だ。

俺たちは適当建物の中で身を隠すことにした。

「……半径1000、レーダー反応なし」

「しばらくは安全そうだな」

ガイドの持っている索敵機を使い、見つからないよう動けてはいるが、それも時間問題だった。

いくら信者達が遅いといっても、多勢に無勢であるのは変わらない。

単純な人海戦術をとられるだけでも厄介なんだ。

一方からいかけられる分には問題ないが、囲まれれば終わり。

それに全員がよほど愚鈍でもない限り、それなりの対策はしてくるはず。

乗り物で追跡してきたり、進路を塞いだりもするだろう。

いずれ身動きをとるのすら難しくなる。

こうなったら一旦、帰るのが懸命だ。

「船って、ここからどれくらいの距離だ?」

「……遠いね

しかし肝心の船は、逃げた先とは逆方向に停めてあった。

ましてや一帯は信者達の巣窟

道中、隠れながら移動できる箇所も少なく、ほぼ確実に見つかってしまう。

「ボク一人だけなら、スーツステルス機能で辿り着けるけど……」

「お前が迎えに来るまで逃げ切れってか。そのレーダー使わせてくれるなら考えるが」

「これはスーツに備わっている機能の一部だから……」

「じゃあ前みたいに、その転移装置とやらで跳ぶのは?」

「さっきも言ったように、生身で歪んだ次元に跳ぶのは危険すぎる。体がバラバラに引き裂かれるか、運が良くても次元の海を漂流することになる」

「やっぱり、帰りも船が必要ってわけか」

遥か未来技術も、この期に及んで融通が利かない。

旧来的な集団にもコソコソしなきゃいけないとは、なんとも情けない話だ。

「一応、これで跳べる方法は残っているよ」

“一応”って前置きが気になるが、他に案もないので聞くしかなかった。

「とりあえず言ってみろ」

「“次元の歪み”を再結合してやればいい。そうすれば歪みは修正され、手元の転移装置で跳べるようになる」

それはつまり、この期に及んで「当初の目的を果たそう」って言っているのと同じだった。

「結局、そうなるわけか」

なんだか、ここまでの出来事ガイドの思惑通りな気がしてならない。

わざと自分の手札を出し惜しみして、俺が協力せざるを得ないよう追い込んでいるんじゃないか

けれども、いくら邪推したところで仕方ない。

実際どうあれ、俺が出せる持ち札は限られていた。

「分かった、その“次元の歪み”とやらに向かおう」

次 ≫
記事への反応 -
  • ≪ 前 もしかしたら、この世界では普通のことなのだろうか。 価値観が矯正されているから、彼らにとっては問題ではないのかもしれない。 集金が阿漕だとしても、それが“救い”へ...

    • ≪ 前 生活教は“生活をより良くする”という教義のもと、日々ライフハック的なことを広めている。 この辺りを中心に活動しており、地域新聞に載る程度には有名な新興宗教だ。 し...

      • ≪ 前 その地に足を踏み入れた瞬間、すぐに異様な空気感が襲った。 場所は先ほどいた庭と同じ。 目に映る景色も代わり映えしない。 だが「何かが違う」という感覚。 リメイク、リ...

        • ≪ 前 「さっきの続きだが、“本来なら存在しなかった世界”って何だ?」 「分岐によって自然発生的に生まれた世界ではなく、次元の過干渉により発生した世界。システムの不具合、...

          • ≪ 前 ガイドと初めて出会ったのもエイプリルフールだった。 恐らく、こいつの時代にはそういう文化がなく、たまたま巡り合わせが悪かっただけなんだろう。 「これがこうなって、...

            • 幸せって何だろう。 ……なんてことをシラフで管まく奴がいたら、それは人の温もりに飢えているドランカーか、時間を持て余したバックパッカーのどちらかだ。 それ以外だと、弟み...

              • あのさ もう何年もここで書いているのは分かるし自己満足なのも分かるんだけれど 圧倒的につまらないんだ 自分用に書いているというのもあると思うけれどまったく面白くもないもの...

            • ねえ みんな面白くないとか、延々とスパムみたいなつまらないことやめて欲しいって言ってるよ そんなに強情にならないでいい加減やめたほうがいいよ ここらが引き際としていいタイ...

          • いい加減諦めなよ 本当につまらないんだよ 何回も言われてるんだからさ 意固地にならずにここは清々しくやめようよ みんなそう思ってるよ だからやめようよ

  • ≪ 前 レーダーを頼りに信者達の目を掻い潜り、俺たちは慎重に歩を進めていく。 不幸中の幸いというべきか、道中は信者たちの手が及んでいない場所が多く、労せず次元の歪みに辿り...

    • 何度も言うけどさ 本当につまらないんだよ だからさ もういい加減やめたほうがいいって どうしてそんなに頑固になるの こうやって言ってることを素直に受け止めて

    • ≪ 前 「なんで俺が?」 「キミじゃなきゃ次元に直接干渉できないからだよ。厳密には“普遍的存在”じゃなきゃ、だけど」 さも当然のように、また固有名詞を出してきた。 いや確...

      • ごめん やっぱり面白くないよ 本当に何度もいうんだけれどさ 才能もないし諦めたほうがいい もう投稿しないほうがいいよ

      • ≪ 前 ・ ・・ ・・・ ・・・・ 「ほら! 起きて! しっかり!」 朧げだが、既視感のある声が聴こえる。 俺はゆっくりと瞼を開いた。 「あ、やっと起きた。あの後キミはぐったり...

        • ≪ 前 「フラッガー?」 「宇宙規模で有名な指名手配犯さ。SSS+級のね」 「そいつは激レアだな」 そのフラッガーとやらは様々な世界を行き来して、幾度も次元を分裂させているらし...

          • ≪ 前 「なあ、今すぐじゃないとダメなのか? また次回にでも……」 「頼むよ。こんなチャンス、二度とこないかもしれない」 ガイドたちは、今までフラッガーの犯行に悪戦苦闘し...

            • ≪ 前 俺たちはフラッガーを拘束して、次元警察に引き渡すまで船で待機することになった。 「ふふふ……己(おれ)も年貢の納め時が来たというわけか」 信者達が俺たちを捕まえよ...

              • ちゃんとトラバ読んでる? つまらないからもうあきらめようよって 何回も書き込んでいるよう 誰も求めていないことだし 本当にもうやめようよ

              • ≪ 前 「これは使命だと思った。全ての人間、いや森羅万象を幸福にせよという己(おれ)の使命だと」 彼はそのフラグで、悪魔的なヒラメキを得たのである。 それが世界を分裂させ...

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