かけ算割り算には,足し算引き算にはない特別な力があるんです。それは数字の意味を変える,という力。言い換えれば単位を変える力があるんです。
「長さ」を足しても引いても,同じ「長さ」しかでてきません。けれど「長さ」と「長さ」をかけると「面積」がでてくるんです。「長さ」を「時間」でわると「速さ」がでてきたりします。
つまり「a×b+S=c×d」とかは「a×b」という面積に「S」という面積を足すと「c×d」という面積と同じになる,というような使われ方をします。これ,それぞれが強く結びついて新しい意味を持っているんだ,ということを強調した方がわかりやすいですよね。なので「ab+S=cd」のように書くんです。こうすると「面積の計算だ」ということがよりはっきりします。
このことは数学だけを学んでいる状態ではそれほど意識されることはありません。ですが,実際に数学を応用して物理や工学の問題を解きはじめると,計算している式がどういう意味を持っているか(どういう単位を持っているか)は,常に意識がむくようになります。なので,その単位になる前段階のかけ算は省略してしまったほうが,かえってわかりやすくなるんです。