2019-03-27

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「いつも考えていることがあって、例えば人間主食にする生き物が地球に突然やってきて、僕たちの首に番号のついた輪っかをはめる。僕たちは番号で呼ばれるようになって、狭いところに閉じ込められて、チューブから無理やり食道に高カロリーの輸液を流し込まれる。ストレスが無くなるように、VRヘッドギアを嵌められて、世界のどこにでも行けるような感覚を与えられながらも、不潔な小屋の中で拘束されている。どうにか抵抗しようとした奴らはみんな先に殺されて、反抗しないほうがマシだって空気が流れている。だってあいつらは踊り食いにされた。生きたまま食べられるのが、生き物にとって一番怖いことなんだ。人間はあまり繁殖力が強くないから、彼らは無理やり子供を産ませようとする。僕は彼らの遺伝子検査で、よい食料となることが結論されたから、少しだけいい部屋に通されて、そこで君と会う。君は既に6人の子供を産まされていた。個体数が増えるように、彼らは三つ子を産ませる技術を持っていた。四つ子になると発育が悪くなり、母体にも負担がかかるから期待値としては一回の出産で三人が彼らのべットらしい。君は二回の出産経験して、すっかり疲れていた。命を生み出すことで、自分の何かをすり減らしているのかもしれない、と僕は思った。そういう感傷とは関係なく、僕は役割を果たした。そこまで考えて、僕はいつもふと我に返る。緩い幸せの中で生きている時、ゆっくりと腐っていく思い出が放つ死に際の甘い匂いで、酔っ払っているんだと気付く。」

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