ねぇ、ママ、ついにローレシアの王子たちが僕を倒しにくるよ。攻め滅ぼしたはずのムーンブルクの王女までやってくるって。人間を根絶やしにするのは大変だね。
ローレシアの王子の思い上がりには呆れるよ。ロンダルキアへの洞窟をクリアするための攻略本が欲しいんだって。勇者ならそれが当然だってさ。僕は落とし穴に何回も落ちながらロンダルキアの台地に到達したっていうのにね。
ママ、僕は生まれたときのことをはっきり覚えているよ。魔法使いだったママは、森でモンスターに襲われて僕を産んだんだよね。忌々しい子だっていいながら僕のことを谷に突き落としたんだ。
僕は立派な魔物になろうと思っていろいろな修行をした。でも最後に僕は人間の子だから立派な魔物になれないと知った。そのときからシドーさまを崇める司祭になろうと思ったんだ。
シドーさまのことを知っている魔物は少なかった。シドーさまは魔力こそ凄いけれど、人前に出るのが嫌だったんだ。でも、神として崇められたかった。僕とシドーさまの利害は一致した。
モンスターたちは勝手に勇者を襲っている。僕は魔物の王なんかじゃない。シドーさまに仕える神官なんだ。それでも世界中に名が知られるようになって、戦々恐々としているよ。僕のひとことは世界中の魔物が知ることになるからね。