高校卒業後、僕は大学へと進みたかったがそんなことはできなかった。
ボケた祖父と半身が痺れた父を二重介護しながら二人を食わせていかなければならなかったからだ。
高校卒業後に働くといったって、この家には金なんかないので車も買えない。
こんな広いのに人口が数千人しかおらずほとんどが老人の田舎で車もなしに働くには、徒歩圏内の職場しかないじゃないか。電車の最寄り駅は徒歩6時間だ。
それで徒歩圏内にある土木会社に入った。ほかに仕事が選べる状況じゃなかったからだ。
土木の仕事はきつかった。土日も関係なく働かされ、乗り合いで向かう現場への通勤時間は往復で6時間かかることもあった。
そして帰ってきたら早く飯を作れと父に怒鳴られ、洗濯をし飯を作り風呂を沸かしたが、感謝の言葉などない。飯がマズかったら投げつけられるくらいだ。
そしてやっと寝れるかと思えば祖父が「仕事に行くんだ!じゃまをするな!」と叫びながら外へ出ようとするのを止めて寝かせる。夜中にまた祖父が起き上がってバタバタうるさい。父が「うるせえじじい!寝れねえだろ!」と叫ぶが、俺はその叫び声で起こされてるんだが。やめてくれといった感じだ。言うと包丁を持ち出すので言わないが。
父と祖父の言い争いが始まると父が祖父を殺そうとするのでそれを止める。殺人犯の息子なんて不名誉すぎるからな。
そして何度も起こされ疲れの取れぬまま朝早くに仕事に出るんだ。親父共のパチンコ代と生活費を稼ぎにな。
これで俺は家族を捨てた最低野郎だ。恋人なんかできたことないが、これでもう恋人はできない。
自由は得たが残ったのはこの罪悪感とこのくだらない人間とこのなんのスキルもない頭だけだった。友達も田舎にしかいないし仕事もない。
まともな家に生まれたまともな友達は親に新車を買ってもらって仕事も楽しいってさ。休みの日はドライブしたりパチンコしたりラウンドワンでナンパをしたりするんだと。