2018-03-03

うちのお雛様九死に一生を得た話

1年ほど前のこと。

人形店で20年前に購入した雛人形

しま場所を移したところ、なんと湿気で顔とか髪にカビが生えちゃった……。

これは大変だとお店に連絡して聞いてみると、どうやら修理ができるらしい。

それから色々忙しくて、数ヵ月後にようやくお店に持っていくことに。

だけど、うちには車がないもんだから、買った時のバカかい木箱ごと大きな風呂敷につつみ、

えっちらおっちら電車でお店に持っていくしかなかった。

真夏である人形に何かあったらいけないから、あんまり早歩きは出来ない。

暑いし、めっちゃ恥ずかしかった。

店員さん曰く、専門の方に見せて、どういう修理方針になるか決まったらまた連絡しますとのこと。

ちなみに箱は預かってもらえないらしく、また同じように持って帰った。

すると、数日後の朝にお店の方から連絡が。

その時、私は寝起きで朦朧としながら朝ごはんを食べていたんで、母の電話口でのやりとりをぼんやりしか聞いてなかった。

お昼に、どうだったかと聞くと、お店の方曰く、「完全には取れないかも、それか顔を変えるかどちらかです」ということらしい。

母は、綺麗に取れるか分かんないみたいだし変える方にした、そっちの方が安いと私に言った。

最初は「ほーん」と答えた。

でも何かなあ、すっきりしなかった。ホントにこれでいいのか。

お雛様とお内裏様の顔立ちは、本当に綺麗だった。

忘れてたけど、そういえば小さい頃、3月になると和室に飾られるお雛様を見るのが楽しみだった。

かに、顔を変えれば綺麗にはなる。

だけど、顔を変えたら、それはどんなに似ていたとしても”あのお雛様”じゃなくなっちゃうんじゃないだろうか。

たとえ汚れが完全に取れなくてもいいから、あの雛人形が良い。

その日の夜、その旨を母に訴えた。

母も、私の言い分に納得したようだった。

翌日、またお店に連絡し、結局修理することになった。

で、2か月後くらいに修理が終わって、母が取りに行った。

そしたら、すごく嬉しいことがあった。

そのお雛様が、職人さんたちの間で「20年前のものとは思えないデザインの良さ!」と絶賛だったって。

顔立ちももちろん、着物も今ではもう作ることが出来ないらしい。

顔を変える方法から修理する方法に変更した際、職人さんはとっても喜んでいたんだとか。

それを聞いて、やっぱりうちのお雛様は凄い!と何だか誇らしい気持ちになった。



あとで知ったことだけど、そのお雛様は、私の亡くなった父が購入したものだった。

寡黙で、いつも買い物は母に任せっきりだった父が、珍しく「これが良い」と言って買ったらしい。

母は、「やっぱり貴女の言った通り、修理してよかったよ。顔変えたら、違うお雛様なっちゃものね。」

と喜んでいた。

顔に汚れがあったお雛様の方は、顔を少し削ったとのことだった。

職人さんも、すごく頑張ってくれてギリギリバランスで削った、と。

かにほんのちょっと鼻の線が滑らかになって、お顔がうす桃になったけど、

まあこれはちょっと整形したんだよね。

でも、戻ってきてくれて、ホントに嬉しかった。

やっぱりあの時、言ってよかった。

ようやく春になって、2年ぶりに雛人形を飾ることが出来た。

やっぱり、うちのお雛様とお内裏様が、一番綺麗だと思う。

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