2017-10-15

ヨーグルト舐める


この前蓋の裏にヨーグルトがついたまま、ゴミ箱に捨てようとしたら嫁に怒られた。もったいないから、といってひと舐めふた舐めする。猫みたいだった。

それからというもの、俺がヨーグルトを食べる時には必ず嫁がいて、蓋を剥がすのを待っている。蓋の裏を舐めるのは、最早嫁の仕事ひとつだった。嫁はその時だけ猫だった。

嫁は別にヨーグルトが好きな訳じゃない、と言った。だから冷蔵庫ヨーグルトはすべて俺が食べていた。三日後、ヨーグルトバリエーションが増えていた。

ある日、俺が起きてくると嫁はもういなかった。どこかへ出かけたようだった。俺は冷蔵庫を開けた。ブルーベリーヨーグルトがあった。黙って蓋を開けて、テーブルの上に置いた。食べ終わった後、嫁がいないことに気がついた。それまで嫁が蓋の裏を舐めて捨てるのを見続けてきた俺には、そのまま捨てることに罪悪感があった。しか舐めることさえ、俺には抵抗感があった。俺は猫にはなりたくない。


思案の後、俺はヨーグルトを舐めた。背徳感が過った。頭の中で嫁とそっくりの猫がヨーグルトを舐めていた。俺は一人だった。

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