夢の中でのび太はドラえもんに帰らなければいけないという。ドラえもんが帰るのではなく、のび太がどこかに帰るのだ。
ただ、そのとき、外はひどい土砂降りだった。彼らが暮らしている街の河川が氾濫し、様子を見に行ったドラえもんがその濁流に呑みこまれる。
あっ、と思う間もなかった。
のび太はまったくのためらいを見せなかった。恋人を助けるために自らも川に飛びこんだのだ。無謀で、けれど最高に男前だった(原作でのび太は泳げたのだっけ)。映画のワンシーンのようだった。
なんやかんやでふたりは助かり、のび太のママは彼らにとりあえずお風呂に入りなさいと声をかける。帰るのはそれからでいいでしょうと。たしかにふたりはカフェオレのような泥水に身を投げたせいですっかり汚れていたし、その身体は芯から冷え切っていたのだと思う。
家庭用の狭い浴室だ。のび太が先に入り、ドラえもんが続く。彼らは並んで頭や身体を洗う。そのとき、のび太が股間をタオルで隠しており「一度寝た仲だと見られるのは恥ずかしいよ」というようなことを言ったので、わたしはここで初めて彼らが付き合っていたこと(というか肉体関係があったこと)を知った。
ドラえもんに性器があるのかは知らないけれど、まあ、あの世界の21世紀であればなんだってあるのだろう。どこでもドアがあるのにドラえもんの性器がないのはおかしい。
ドラえもんは笑いながら、それでもどこかに悲しみをはらんだ声で「僕がここから動かなかったら、のび太くん、帰れないよ」と言った。
「君をどかせばいいんだろ」
ほんとうならのび太とドラえもんしか知り得なかった、彼らの恋と、その終わりを、まったくの部外者であるわたしが見てしまった。それはなんらかのルール違反だと思った。
きっと、ドラえもんは浴室を出るだろう。そうしてのび太くんを見送るはずだ。
…………
わたしはゆっくりと現実世界に戻ってきた。眠剤のせいであまりに寝起きが悪い。今のことをメモしておかなければと思ってタップしていたものは自分の左手だった。ソシャゲの体力は思いきりもれていたし、なんだかもう、朝からどっと疲れてしまった。
あとから、そういえばハチクロを一気読みしたときもこんな気持ちになったっけ、と思い出した。それだけ。
(追記)
思ったより伸びていてびっくりした。他人の夢の話なんておもしろくもないだろうにありがとう。
ドラえもんは21世紀に誕生しているものだと思っていました、ごめんなさい。この機会に知識をアップデートしますね。
夢占い結果をブクマコメしてくださった方、わたしは4月末で会社を辞め、今は無職の身なので、これからどうにかなるというよりは現在進行形で自堕落の極み乙女です。助けてよドラえも〜ん!